日本のLinux導入は欧米より半年遅れている〜ウインドリバー

2006/8/11

 ウインドリバーは8月10日、報道関係者向けの説明会を開催し、同社の最近の活動状況などを、代表取締役社長 藤吉実知和氏が説明した。

ウインドリバー 代表取締役社長 藤吉実知和氏
 冒頭、藤吉氏は「組み込み系とエンタープライズ系ビジネスの垣根が低くなってきている」と市場を分析、同社の主力である組み込み系から一歩踏み出し、エンタープライズ系分野へも広げていく意向を示した。その第一弾となるのが、「Manage(保守管理)」製品の投入だ。同社では、すでに「Develop(開発環境)」や「Run(プラットフォーム製品)」といった製品群を販売しているが、今後管理ツール分野に参入することで開発から実装、出荷後まで幅広くサポートしていくという。

 ウインドリバーの2005年における地域別売上構成は、北米が55%、EMEA(欧州・中東・アフリカ)が24%、日本が14%、APECが7%。日本のマーケット別の売上比率はデジタル家電が55%、インダストリアルが17%、ネットワーク機器が14%、航空宇宙産業が10%、オートモーティブが4%だった。この点について藤吉氏は、「日本では圧倒的に情報家電が多い。これは当社のVxWorksが強い裏付けでもある。一方、米国で強いネットワーク機器や航空宇宙が日本では少ないのが特徴だ」と説明した。

 また、同社のLinuxプラットフォームについては「残念ながら、日本のLinux事情は欧米と比べて半年遅れている。欧米では300社以上が当社のLinuxプラットフォームを導入しているが、日本ではやっと評価が終わってちらほらと使い始めた程度だ。日本は諸外国と比べて評価を重視していることが一因だろう」と語った。

 従来の開発環境とプラットフォーム製品に続く第3の柱となるのが、保守管理だ。保守管理製品には、動的診断ツール「Workbench Diagnostics」(以下、Diagnostics)や管理スイート「Wind River Management Suite」が挙げられる。Diagnosticsは、Workbenchのアドオン製品で、無停止でシステムレベルの動的デバッグやソフトウェアの診断が行える動的診断ツールだ。通常は原因究明のためにシステムを止めて行っているが、Diagnosticsは稼働中のシステムに対して動的に情報を収集できるため、大幅にデバッグ効率を上げることができるという。

 また、Diagnosticsをインターネットを介して遠隔でできるようにしたのが「Wind River Field Diagnostics」だ。このように、「Diagnosticsをリモートで使いたい」という要望は以前より強くあったため、実現したものだ。ただし、インターネットを介して内部プログラムに直接アクセスするには、セキュアな環境が不可欠だ。そのための施策を数々と施したという。同社では、Field Diagnosticsを中心にした管理スイート「Wind River Management Suite」を投入することで、本格的に保守管理製品市場に参入する。

 藤吉氏は、この点について「価格競争が厳しい現在では、インドで設計し、中国で開発するといった国をまたがった製品開発が頻発している。従来はグローバルな開発環境を管理できるツールがなかったため、このようなケースで問題があった場合には日本人エンジニアが現地を訪れてカバーしていた。これではあまりにも非効率的なので、当社製品のようにワールドワイドで開発環境を管理できるツールの意義は大きい」と語った。

(@IT 大津心)

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