企業通貨は「第2の通貨」になれるのか? 野村総研

2006/8/25

野村総合研究所 コンサルティング事業本部 情報・通信コンサルティング一部 上級コンサルタント 安岡寛道氏

 野村総合研究所は8月24日、第46回 NRIメディアフォーラムを開催し、「企業通貨」に関する調査・分析の最新状況を発表した。同社によると、2005年度の企業通貨発行総額は4500億円超(国内主要9業界「企業通貨」発行額から推計)。この数字は今後も大きくなる見込みだ。企業通貨を提供する企業が合従連衡しながら、顧客の囲い込み・相互送客を行うことで、企業通貨の価値や利用率がさらに高まると同社では予測する。

 企業通貨は、発行企業以外でも利用できるポイントと電子マネー(EdyやSuicaなど)で構成される。その定義を野村総研は下記のように記述する。

「有償契約に基づいて発行される電磁的記録で、契約に基づく範囲内で金銭債務を弁済する効力を有する情報」

 企業通貨の先駆けとされる航空会社のマイレージプログラムは、1981年にアメリカン航空が始めた。現在、クレジットカード会社や携帯電話会社、家電量販店、百貨店などで提供されるさまざまなポイント・プログラムの源流はここにある。このような歴史的背景があり、日本でも航空会社(日本航空:JALと全日本空輸:ANA)を中心とした提携網が構築され、企業通貨の相互交換が進んでいる。

 提携企業間で顧客の囲い込みや相互送客を(企業通貨で)行うことのメリットについて野村総研は、中小企業においてはキャッシュフローの改善、大企業では金融コストの削減が期待できるとしている。現時点では想定でしかないが、法人利用としてグループ間取引に電子マネーが使われる可能性がある。対消費者向けの利点としては、新たなマーケティングツールとしての有効性、決済コストの削減といった要素が考えられる。

 ただし、いくつかの問題がある。日本では、電子決済、電子マネーともに立法措置がない点。そして、発行主体が倒産すると保有者の資産が0になる点。情報システムの安全性に対する懸念。法定通貨との関係、税制度の関係なども重要な懸案事項であろう。

 このような状況を踏まえ、野村総研では「企業通貨を健全な決済手段に育成し、2010年以降の日本の産業/業態構造の変革を促す起爆剤へ」という提言を行っている。

(@IT 谷古宇浩司)

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