生き残るWeb 2.0サービスの条件は、リクルートとサンに聞く

2006/9/1

 Webサービスを組み合わせたマッシュアップ・コンテンツを対象に、リクルートとサン・マイクロシステムズが主催した開発者向けのコンテスト「Sun×RECRUIT Mash up Award」の審査結果が8月31日、発表された。Mash up Awardを企画したリクルートのフェデレーションオフィサー 小浜勇人氏は企画の狙いを「Web 2.0と呼ばれる潮流がビジネスをどう変えていくのか、その答えがほしかった」と語る。

リクルートのFederation of IT FIT1部 兼 BIコラボレーション委員会 フェデレーションオフィサー 小浜勇人氏(左)と、サンのマーケティング統括本部 プロダクト・ストラテジック・マーケティング本部 システムズ・マーケティング・グループ グループリーダ/専任部長 藤井彰人氏

 リクルートは雑誌主体のコンテンツをWebベースに急速に移している。小浜氏は「デベロッパの知をどう吸収できるかが今後の鍵になる」と語り、Web 2.0の考えを取り込むことがビジネス展開の今後に欠かせないと説明する。リクルートは「Smatch API」「じゃらんnet」「フロムエー・ナビ API」など、Web上で展開している各種コンテンツのWebサービス APIを公開。狙いは開発者の取り込みだ。小浜氏は「Web 2.0の考えに基づくサービスをさくさく作り、アイデアを出してもらえる開発者のネットワークがリクルートにはなかった。そのネットワークを持ちたいと思い、Mash up Awardを企画した」と話す。

 Mash up Awardを共催したサンの狙いは、開発者の目をWeb 2.0に向けさせることだ。サンのシステムズ・マーケティング・グループ グループリーダ/専任部長の藤井彰人氏は「サンは『参加の時代』を提唱している。従来型の開発者にWeb 2.0の楽しさに気づいてほしかった」と語った。

 Mash up Awardには事務局の予想を上回る56作品の応募があった。最優秀賞などの受賞作はサンのWebサイトで公開されている。小浜氏は受賞作について「作った人のコンセプトが色濃く出ている」と評価。Webサービス APIを複数組み合わせて利便性の高いサービスを作り上げたマッシュアップ・コンテンツと、ユーザーの知の共有に重きを置くCGM(Consumer Generated Media)的コンテンツの2つの流れがあったと説明した。その中で、「何かを尖らせているコンテンツ」(小浜氏)が受賞した。

 TISはある事業部トップの音頭で3チームが参加。実際の業務ではまだ利用せず、技術検証段階のテクノロジを使ってMash up Awardに応募。Ruby on Railsを使ってサービスを開発したTIS Macho チームが入賞した。

 受賞作には「そのままビジネスで利用できそうなサービスもあった」(小浜氏)といい、いずれも評価が高かった。小浜氏はWeb 2.0の考えに基づくサービスをビジネスとして提供するには「コンテンツの信頼度が重要になる」と考える。「情報が正しく、さらにカスタマにとって受け入れやすい情報であること」が条件となり、「この条件をどう担保するかがテーマになる」。このテーマをどう解決するかの、小浜氏はまだ明確な答えを出していない。「次のステップとしてこのテーマをどう解決していくのか、決めかねている状況だ」(同氏)。

 サンの藤井氏は、生き残るWeb 2.0サービスの条件として「データが貴重であること」に加えて、「技術的なイノベーションがあるか」を挙げる。「この2つがないといいアイデアでも誰かにまねをされて終わり。この両方が必要だ」。

 両社はWeb 2.0関連のサービスを開発する開発者の支援を今後も続ける。Mash up Awardの第2回開催も検討する。

(@IT 垣内郁栄)

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Sun×RECRUIT Mash up Award
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