MSがCRMを正式発表、パートナー配慮し「何度もいうがプラットフォームだ」

2006/9/8

 マイクロソフトは9月7日、同社初の業務アプリケーション「Microsoft Dynamics CRM 3.0 日本語版」を9月8日に発売すると発表した。当初の計画を上回る50社のパートナーを確保し、「パートナーアプリケーションの新しいプラットフォーム」(マイクロソフトの代表執行役 社長 ダレン・ヒューストン[Darren Huston]氏)として売り出す。

マイクロソフトの代表執行役 社長 ダレン・ヒューストン氏

 同社の業務アプリケーション参入についてはパートナーが展開する既存の業務アプリケーションとの競合を懸念する声があった。マイクロソフトは、ISVのアプリケーションと連携する製品としてDynamicsを位置付けるパートナーモデルを強調。業務執行役員でマイクロソフト ビジネスソリューションズ事業統括本部 統括本部長 宗像淳氏は「パートナーと一緒にビジネスをクリエイトし、Win-Winの関係になることで、顧客により高い付加価値、生産性を提供できる」と語り、パートナーとの協調をアピールした。「何度もいうがパートナーと一緒に製品を拡販するプラットフォームだ」(宗像氏)

 Dynamics CRM 3.0は主に中堅・中小企業をターゲットにしたCRMアプリケーション。Office Excelや手作業で行っている顧客管理などのワークフローを統合管理可能にする。ExcelやOutlookなどをフロントエンドとして利用でき、ほかのマイクロソフト製品との親和性が極めて高い。ヒューストン氏は「CRMの価値はどのくらい使用されるかに比例する。よいCRMとはよく利用されるCRMだ。Dynamics CRM 3.0はあたかもOffice製品の一部のように使える」と話し、操作性の高さを強調した。

 50社のDynamics CRM 3.0のパートナーの多くは独自のアプリケーションを持つシステム・インテグレータ(SIer)。大塚商会の取締役 兼 上席常務執行役員 片倉一幸氏は情報系アプリケーション「eValueシリーズ」、ERPパッケージの「SMILEシリーズ」とDynamics CRM 3.0を連動させると語った。開発子会社のOSKではDynamics CRM 3.0をエンジンとした新しいアプリケーションの開発も検討するという。大塚商会はDynamics CRM 3.0関連のシステム構築だけでなく、コンサルティングやアプリケーション構築、サポートなども提供する。

左から大塚商会の片倉一幸氏、マイクロソフトのダレン・ヒューストン氏、沖電気の坪井正志氏、マイクロソフト 宗像淳氏

 沖電気工業の情報通信事業グループ IPシステムカンパニー プレジデントの坪井正志氏は、同社のCTIプラットフォーム製品「CTstage」をDynamics CRM 3.0と連携させると発表。Dynamics CRM 3.0の基盤となるSQL Serverとも連携させる。坪井氏は「CTstageとDynamics CRM 3.0の連携作業は1日で終わった。Dynamics CRM 3.0の柔軟性には驚いている。コールセンターやIP-PBXとの連動が可能になる」と話した。ほかに米マイクロソフトと米アクセンチュアが合弁で設立した米アバナードの日本法人が、Dynamics CRM 3.0で利用できる金融機関向けのテンプレートを発表した。

 価格は「Professional Edition」が13万200円〜38万5000円。クライアントアクセスライセンス(CAL)が6万5000円〜19万3000円。「Windows Small Business Server」専用の「Small Business Edition」が11万6000円から、CALが9万6000円から。販売は「必ずパートナー経由で行う。100%パートナーモデル」(宗像氏)。

 マイクロソフトはDynamics製品の第2弾としてERPパッケージの「Dynamics AX 4.0」を来春発売する予定だ。マイクロソフトにとってDynamics AX 4.0もパートナー製品のプラットフォームとの位置付けで、宗像氏は「Dynamics AX 4.0も同じビジネスモデルが構築できる。すでに数社とはコラボレーションのモデルを開発している」と話した。ERPはCRM以上にパートナー製品と競合すると指摘する声もあるが、宗像氏は「パートナー製品とのバッティングは絶対にない」と強調した。

(@IT 垣内郁栄)

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マイクロソフトの発表資料

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