EPCglobalがRFIDの家電適用を議論、日立「5円ICタグ」も評価

2006/10/5

 無線ICタグ(RFID)の国際標準を推進するEPCglobalの理事会は10月4日会見し、家電製品のライフサイクル管理についての議論を始めることを発表した。RFIDの利用は欧米の小売業などで一般消費財を中心に進んでいて、販売促進や物流の効率化で成果が出ている。新たに家電製品へのRFID展開を促進することで、製品のリサイクルなどが進むことを期待している。EPCglobalの社長 クリス・アドコック氏は「家電はEPCglobalにとって重要な分野。日本の貢献に期待したい」と話した。

説明会に参加したEPCglobal理事会のメンバー。エンドユーザー企業が中心で、自社の取り組みを説明した

 家電製品のライフサイクル管理ついては2005年10月に国内家電メーカーがコンソーシアムを結成。今年5月に新たなRFIDのスペック策定の必要性を指摘するレポートを、EPCglobalに提出していた。EPCglobalはこのレポート受け、家電ディスカッショングループの設置を決定。10月5日に最初の会合を開く。同グループには国内家電メーカーを中心に30社程度が参加。5日の会合には国内家電メーカー11社とカメラメーカー3社、物流関連4社、アジアの家電メーカーなどが参加する。

 EPCglobal理事会メンバーで、ソニー顧問の青木昭明氏は「家電メーカーとしては工場から顧客の手に製品が渡って捨てられるまでの管理をRFIDで行うことに関心がある。理事会に入っているソニーが国内やアジアの家電メーカーの要望を伝えられれば」と話した。ただ詳細は今後詰める考えで、青木氏は「具体策はこれからだ」とした。

 EPCglobal理事会はウォルマートやプロクター・アンド・ギャンブル(P&G)、ドイツのメトロ、DHLなどRFIDのエンドユーザー企業が多く参加している。ウォルマートの情報システム担当副社長 キャロライン・ウォルトン氏は「RFIDを使うことで、適切な商品を店舗の適切な場所に、適切なタイミングで置ける」とメリットを説明。RFIDの利用でサプライチェーンの可視性が高まり、「商品棚が空っぽになってもいままでよりも3倍早く補充できる」と話した。

 ウォルマートは商品を納入するサプライヤに対してRFIDタグの利用を強く呼びかけていることで知られる。ウォルトン氏によるとすでに300社のサプライヤがRFIDに対応。来年初めには600社まで増やすという。RFIDを付けた商品、ケース、パレットの納入を受け付ける店舗も、現状の500店舗から1000店舗に拡大する。ウォルトン氏は「ウォルマートはRFIDを付けたケースを1週間に300万個扱っている。すでに商業ベースだ」と話し、実運用を強調した。

 また、ドイツを中心とする小売大手メトロの取締役 ジグムント・ミエルドルフ氏は「EPCglobal準拠のRFIDでサプライチェーンの一層の可視化ができる。小売業界を一転させる技術だ」と評価したうえで、「メトロはすでにケースレベルでRFIDの貼付を始めている。アパレルでは商品個別レベルの貼付を検討すると話した。

 P&Gの副社長で、理事会議長を務めるリチャード・カントウェル氏は、RFIDによる販売促進策を説明した。P&Gは店頭の販売促進に利用するディスプレーにRFIDを貼付。ディスプレーが店頭に展示されていないとP&Gにアラートが行くようにした。小売店別にプロモーションの展開状況が分かるようになり、関連売上が20%向上したという。「RFIDはサプライチェーンにおける水晶玉だ。商品がサプライチェーンのどこにあるか分かり、なくなっても高い透明性で発見できる」

 10月3日に開催されたEPCglobal理事会では、日立製作所が1個当たり5円で販売できるUHF帯の無線ICタグ「μ-Chip Hibiki」を紹介。「EPCglobalにとって意義があると評価された」(流通システム開発センター 専務理事 井上孝氏)という。カントウェル氏は「μ-Chip HibikiがEPCglobalが策定した国際標準のUHF Gen2に準拠していて、非常に安価に利用できることを喜んでいる」と話した。EPCglobalは今後μ-Chip Hibikiの認定手続きを進める。

(@IT 垣内郁栄)

[関連リンク]
流通システム開発センター/EPCglobal Japan

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