ITセキュリティ分野で指静脈認証を普及させたい、日立

2006/10/11

日立指静脈認証装置。フードがつき、より小さくなった

 日立製作所は10月10日、「日立指静脈認証装置」と企業向けの認証サーバ用ソフト「指静脈認証管理システム」を発表した。同社は2002年から入退室管理を中心に指静脈認証装置の販売を開始し、ATMや貸金庫など主に金融セキュリティの分野での普及活動を展開してきた。情報・通信グループ セキュリティ事業部長 小坂満隆氏によると、金融セキュリティ分野で売上高は500億円弱の規模に達するという。

 ITセキュリティ分野における課題として、同社は「IDやパスワードを覚えるのに手間がかかったり、忘れたりする」「認証に時間がかかったり、本人認証精度に不安がある」などの点を指摘する。情報システムの運用管理者にとっては、「認証情報がバラバラに管理されている」「認証システムの運用に手間がかかる」といった課題もある。指静脈認証はこれらの課題をシステム的に解決すると同社は主張する。

 指静脈認証装置は、従来製品にいくつかの機能改良を加えた。指静脈認証専用LSIを開発し、端末の小型化を実現した。外光の影響を少なくするため製品上部にフードをつけたほか、認証時の指への透過光の照射方式を変更するなどして認証精度を高めた。ソフトとハード間で生体情報をやり取りするためのインターフェイスとして、国際標準規格BioAPI 2.0に対応している。このため、BioAPI 2.0に対応している生体認証サーバに、指静脈による認証システムを接続することが可能となる。

 大規模な情報システム向けの認証サーバ用ソフトウェア「指静脈認証管理システム」も開発した。ユーザーが企業システムにアクセスする際、IDやパスワードを入力する代わりに、指静脈認証だけで個人認証が可能になる。管理者はアクセス管理の一元化を行える。同社では、「情報システムへのアクセスログも記録できるので、内部統制が容易になる」という利点もあるとしている。

 静脈認証装置では、富士通が手のひらを使った装置を開発している。富士通製品は認証を行う際に投射する光を反射して静脈を認証するが、日立製品の場合は光を透過させる。小坂氏は「指の静脈認証は(端末の)場所を取らないというメリットがある。また、手前味噌だが、認証速度と精度の高さで(他社製品に)優れている」と話す。

 同社では指静脈認証システム事業全体で、今後3年後には1000億円の大台に持っていきたいとし、新たな事業基盤としてのITセキュリティ分野を3年後には「300億〜450億円の規模にまで持っていきたい」(小坂氏)とする。

(@IT 谷古宇浩司)

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日立製作所の発表資料

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