保守・サポートの会計処理が問題か

NECが米国上場廃止の危機? 「監査厳格化」の影響受ける

2006/11/21

 NECが11月21日発表した2007年3月期の連結中間決算は135億円の経常赤字だった。NECはこの中間決算から従来の米国会計基準ではなく、日本会計基準で決算を発表している。NECは米国ナスダックにADR(米国預託証券)で上場。米国証券取引委員会(SEC)に、10月2日までに2006年3月期決算の年次報告書を提出する必要があった。しかし、この年次報告書についてNECの米国監査法人が追加の分析を要求。SECへの年次報告書の提出が遅れている。NECは最悪、ナスダック上場廃止の可能性がある。

nec01.jpg NECの取締役 執行役員専務 的井保夫氏

 SECへの年次報告書の提出遅延を受けて、ナスダックが11月16日にNECのヒアリングを実施した。ヒアリングを受けたNECの取締役 執行役員専務 的井保夫氏によると、「いつまでに報告書を出せるのかなどの計画について話をした。約1カ月で(何らかの)結果が出る」。ヒアリングが行われたといっても「ナスダック市場での上場維持を認める決定がなされるとは限りません」(NEC)という。

 NECの米国監査法人が要求しているのは、ハードウェア、ソフトウェア、保守・サポートサービスが一体となった「複合契約」の会計処理について。特に収益の計上が遅くなる保守・サポートサービスについて、NECが恣意的に会計を操作していないことを示す「VSOE」(vendor specific objective evidence:販売者特有の客観的証拠)のデータ提出が求められている。VSOEはデータが膨大といい、時間がかかっているのが現状。NECは専門のコンサルティング会社に支援を依頼している。的井氏は「監査の厳格化の流れ」と監査法人の姿勢を説明。「2006年3月期連結財務諸表の早期完成、年次報告書の早期提出に引き続き努める」と話した。

 NECの2007年3月期の連結中間決算は売上高が2兆2276億円で、前年同期比2%の減少。営業利益は61億円で期初の想定どおりだった。瑕疵(かし)補修費用100億円を計上したため、最終損益は74億円の赤字となった。NGN関連システムの受注が増えたネットワークシステムが好調だった。ITサービス、ITプラットフォームはほぼ想定どおりの利益を確保した。IT/ネットワークソリューション事業は売上高が1兆2704億円で2%増。営業利益は90億円だった。

 携帯電話事業は海外、国内とも低調。欧州では2.5Gの新機種投入をすでに中止。2008年からともいわれる3.5G市場を期待し、構造改革を実施する。国内でも出荷台数が前年同期比3割減。下期は製品力の強化で、出荷増を目指す。モバイル/パーソナルソリューション事業は、売上高が4992億円で14%の減少。241億円の営業赤字だった。

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(@IT 垣内郁栄)

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