普及は3年後の幻滅期をどう乗り切るかが鍵

SOAは過度な期待から今後は幻滅へ!?

2006/11/30

 米国に数年遅れている日本でのSOAの認知や普及は、現在過度の期待を集める“ハイプ期”のピークを過ぎたところ。3年後の2009年から2010年に幻滅期を迎える――。そう指摘するのは11月29日から3日間の予定でITプロフェッショナル向けシンポジウム「Gartner Symposium/ITxpo 2006」で講演したガートナーリサーチのリサーチディレクター 飯島公彦氏だ。

gartnar01.jpg ガートナーリサーチ SOA&Webサービス リサーチディレクター 飯島公彦氏

 優れたものであればあるほど、技術トレンドというものには期待が高まりすぎる“ハイプ”がある。さまざまな課題を解決する夢のような技術だと喧伝されものの、やがて実装が進んで現実が見えてくると、理想と現実のギャップに幻滅する。そして、そこから継続的に啓蒙活動や技術改善していくことで、やがて技術は成熟し、本格的普及に至る。SOAは、こうしたサイクルでいえば今は過度な期待がピークに達し、これから幻滅に向かうという局面を迎えている、というのが冒頭の発言の意図だ。

 飯島氏は現在の日本のSOA適用状況について従業員数2000人以上の大企業68社を対象に調査した結果、2006年5月の時点で「3年以内に適用予定」(23.5%)とした回答が2004年10月の2倍になったとし、「言葉遊びから実装フェーズに入った」と説明する。またSOAに対する認識の変化を示す特徴として、「すでにSOAを適用済み、適用中」と回答した5.8%のグループでは、特定アプリケーションの連携を半数以上の企業が行っているのに対して、今後3年以内に予定と回答したグループでは、トップダウン式アプローチを用いるとした回答が4割を超えたという。ベンダーが提供するSOA関連ツールのスィート化も進み、「いっそ全部作り直せという企業が出てきた」(飯島氏)という。

組織横断的に“地図”を共有することが肝要

 SOAの認知が高まる一方、課題も明確になってきた。

 最大の懸念は、ボトムアップ式にアプリケーション連携をするだけに終始する可能性があること。飯島氏は「ビッグピクチャーなしにテクノロジーセントリックなアプローチだけで導入すると、SOAは根付かない」と指摘する。こうした場当たり的なアプローチでは、結局期待したほどのコスト削減効果やシステムの柔軟性を確保できず、幻滅を招きかねないという。

 SOA導入における要になると氏が指摘することの1つは、幻滅期にも改善を継続するという心構えだ。SOA導入は1度きりのシステム再構築などではなく、断続的な改善のサイクルであると認識することが重要だという。

 さらに重要なポイントとして飯島氏が指摘するのは、プロセス・モデリング。現に動いているビジネスや、目指すべきビジネスのフローやプロセス、イベントの要所を紐解いて、そのプロセスを1枚の“ビッグピクチャー”に収めることだ。異なる事業部が同一の地図を見ながら議論をつめるのが理想だが、そうした認識が薄いのが現状だという。またこのとき、ビジネスプロセスの全体像を理解しておくために、エンジニアを巻き込んでプロジェクトを進めることも重要だ。事業部ごとのニーズを汲み上げて個別に実装する社内請負スタイルでは、早晩サイロ型のシステムに逆戻りしてしまうからだ。「業務機能」と「情報」はビジネスを動かす両輪。両者の知見の橋渡しが不足していることが、SOA導入を控えた現在の日本企業の課題だと飯島氏は見る。

(@IT 西村賢)

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