開発における分社化の影響は特になし

今年のDWHのトレンドは“リアルタイム”

2007/02/16

 米NCRは1月8日(米国時間)、同社の1部門であったテラデータ事業部を分社化すると発表した。分社後は、NCRがPOSやATM事業に、テラデータはデータウェアハウス(DWH)事業にそれぞれ注力するという。今回は、“DWH博士”の異名を誇る米NCRでテラデータ事業部のCTOを務めるスティーブン・ブロブスト(Stephen Brobst)氏に、DWHの最新事情などを聞いた。

よりリアルタイム性を増していくのがDWHの最新トレンド

ブロブスト氏写真 米NCR テラデータ事業部 CTO スティーブン・ブロブスト氏

 ブロブスト氏はDWHの最新動向について、「エンタープライズインテリジェンスがさらにリアルタイム化してきている」と指摘する。同氏によると、現在の多くのDWHが分析結果を返すのに「数分から数時間のレスポンスタイムを要する」という。また、データによってはバッチ処理を行っているものも存在し、とても“リアルタイム”と呼べるものではないと説明する。ブロブスト氏がリアルタイムと表現しているのは、分析結果を数十秒程度で表示できるレベルだ。

 2007年2月現在、このようなリアルタイムを実現したDWHはDWH市場の25%程度にすぎないが、2007年末には50%にまで拡大すると予測。「2007年はDWHやOLAPのDWH化が進む年だ。これにより多くのユーザーの不満を解消できるだろう」(ブロブスト氏)と語った。

 また、BI(Business Intelligence)のトレンドでは、SOAが重要なキーワードだという。その理由には、SOAに基づいてDWHと意思決定システムを統合することで、意思決定をサポートできる点を挙げた。具体的には、SAPのNetWeaverやシーベル、JBossなどとの連携を強化している。

 また、テクノロジ面では、オープンソーステクノロジが重要だと強調する。実際、テラデータはオープンソースへの対応を強化しており、現在では多くのLinuxディストリビューションへ対応しているほか、今後もLinuxサポートを強化するとブロブスト氏は語っている。

日本企業はリスクがお嫌い?

 次にブロブスト氏は、DWHの最新事例を説明した。同氏によると、DWHの最先端ユーザーはすでに企業内データリソースをすべて一元化してDWHを統合したうえに、さらにリアルタイム分析を可能にしているという。米eBayは、2002年からDWHをテラデータに移行しており、現在では64ノード、30テラバイトのDWHを構築。さらに毎日数百万件、250ギガバイトのデータを追加している。

 ブロブスト氏によると、米eBayのような最先端ユーザーはDWHのステージ5にいるのだという。ステージは1の「レポーティング」から5の「自動化を実現」までの5段階存在しており、ステージ4の「SOAを実現している」以上が先端ユーザーだという。現在、DWHユーザーのおよそ25%がステージ4、5におり、ステージ5に達しているユーザーは10%程度だとした。これが2007年末には、ステージ4、5のユーザーが50%、ステージ5のユーザーが15%程度にまで増えているだろうと同氏は予測している。

 また、ブロブスト氏は、このような最先端のDWH技術へのスタンスについて、日本と欧米で興味深い違いがあると指摘する。例えば、日本の場合、こういった最先端のビジョンを持っているユーザーは43%、次世代DWHに必要なシステム統合を実現しているユーザーも44%と高い。しかし、最先端のDWHを導入しているユーザーは数%しかいない。一方、米国の場合は20%を超えている。

グラフ写真 欧米、日本などのDWHに対する傾向グラフ。左上の米国と右下の日本を見比べると、明らかに形が異なることが分かる

 この点についてブロブスト氏は、「日本は慎重だからだろう。リスクを嫌っている。一方、米国は積極的にリスクを取りにいっている。ただし、日本は『リスクが少ない』と判断したときの追従力は非常に高い。また、システム統合も米国以上に進んでおり、下地も十分できている。従って、成功事例が出てくる2007年末には多くの会社が実装しているだろう」と分析した。

分社化問題はテラデータのR&Dには影響を与えない

 今後のテラデータについてブロブスト氏は、3本の柱が重要であるとした。1本目の柱は「さらなるパフォーマンス改善」だ。同社は、アクセス処理速度やロード速度といったパフォーマンスに関する処理改善を8年以上に渡って実施しており、今後も持続する。2本目の柱は「エンタープライズ統合」だ。エンタープライズ統合とは、SAPやシーベルなどほかのアプリケーションとの連携を指す。3本目の柱は「サービスソリューションの強化」だ。これに向けてプロフェッショナル部隊を強化。ソリューションサービスアーキテクトとエンタープライズソリューションアーキテクトを強化する。

 1月8日に発表された米NCRと米テラデータの分社化については、「かなり昔から、NCRとテラデータのR&D部門は分離していた。従って、分社化後も、まったく変わらない開発体制を維持できる。逆に分社化のメリットとして、テラデータならではの商品開発やサービス開発などができるようになる点が挙げられる」とコメントし、分社化後もテラデータの開発に影響がないことを強調した。

(@IT 大津心)

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