企業や行政のサービス連携はNGNで全世界的に

「企業内SOAの次はワールドワイドSOAを」

2007/02/22

 「Webの世界はバラバラ。ネットが社会インフラとなるにはグローバルなアーキテクチャが必要だ」。NEC特別顧問でGBDe(Global Business Dialogue on electronic commerce)の世界議長も務める川村敏郎氏は、第55回GISフォーラム東京で講演し、NECが構想する次世代ネットワーク(NGN)のビジョンを語った。

日本の企業は何でも垂直統合でやろうとしすぎ

gis01.jpg NEC特別顧問でGBDeの世界議長も務める川村敏郎氏

 「海外に出てつくづく感じるのは、日本の企業は何でも垂直統合でやろうとしすぎではないかということ。それでは世界の仲間に入れないと感じている」。講演の冒頭、川村氏はグローバルなITのトレンドに対する日本企業の立ち後れに対する懸念を表明。日本のIT産業の地盤沈下がささやかれ、SEやプログラマといった職業は3Kのレッテルを貼られている。情報通信関連の学科が定員割れし、SEをどう教育をしていくべきかが議論される。「しかし、シリコンバレーではスタンフォードもUCバークレーも活況。どんどん才能のある若い人が集まっている。SE教育の議論など聞いたこともない。みな自分で勉強する」。

 違いは何か。川村氏は日本企業のビジネススタイルや思考様式が「グローバルになっていないからだ」と指摘する。日本の中だけで考える、仲間内だけで完結するといった日本のDNAともいうべきものを内包した商習慣は、オープンスタンダードを志向するグローバルなITトレンドにキャッチアップしていないという。

 商談なしの中立的な立場でITの専門家や経営者が集い、情報交換やITアーキテクトの育成を行う「The Open Group」の会合に参加した川村氏は、日本の市場競争に特徴的な垂直統合のビジネスモデルの限界を指摘する。ITU-T(国際電気通信連合)で定義されているNGNの特徴は、「広帯域、QoS制御、パケットベース」などいろいろあるが、「最大のポイントはサービス機能と転送機能を分離し、連携してサービスを提供しろという項目にある」という。固定電話はいうに及ばず、携帯電話やISP、ケーブルテレビなどはすべて、端末、ネットワーク、サービスなどを統合した形で提供されてきた。今後はネットワークとサービスを切り離すため「これは現在の通信キャリアにとっては厳しい話かもしれない。ハードウェア製品に固有のサービスはもう必要なくなる」という。

水平分離したサービスはワールドワイドSOAで連携を

 NGNでサービス機能と転送機能(通信や放送)を切り離すと、企業や行政が個人や社会に提供するサービスは、オンラインで自由に融合する時代が来る。現在、業務アプリケーションへの適用で注目されるSOAは、企業内システムで完結しているが、水平分離でサービスを組み合わせる時代には“産業内SOA”や“ワールドワイドSOA”が必要だと川村氏は指摘する。NECでは自社で運用するポータルサービス、BIGLOBEでSOAを採り入れ、パートナー企業のサービスをハブにプラグインするモデルを構築した。こうした仕組みを、より広い範囲に広げる必要がある。

gis02.jpg NGNではワールドワイドSOAでオンラインサービスが融合

 課題は多いが、中でもトレーサビリティや認証技術の標準化は重要だ。川村氏は「現在のネットはパスポートなしで動き回っているようなもの。それはそれでいい面もあるが、これでは犯罪者が何でもできてしまう」と指摘する。

 日本、アジア諸国、米国など19組織の経営陣が集い、オンライン経済発展の政策策定の支援を行う国際組織、GDBeでは現在、国際消費者団体のメンバーらを招いて、ユビキタス社会のオンラインサービスのあり方を議論している。その中では、未成年者に対して提供してはならないサービスや製品のガイドライン策定についても具体的な検討を始めているというが、「問題は未成年かどうか判定しようがないこと」。

 個人情報のやり取りや金融関連のトランザクションが今よりさらに増大する将来は、サービス提供者の信頼性を担保する仕組みも必要だ。GBDeではWebサイトに対して、通信のたびごとに、あらかじめ設けられた基準をクリアしているかをチェックし、利用者側に安全性を認証マークとして示す仕組みも議論しているという。

(@IT 西村賢)

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