IDC Japan特別寄稿

コンプライアンスにお金を使い始めた日本企業

2007/02/26

 個人情報保護法、新会社法、金融商品取引法(日本版SOX法)など、企業の経営や日常業務に及ぼす法規制の影響度は日増しに大きくなっており、社会全体の法令遵守に対する関心も高まっている。企業の業務プロセスにおいて違法/不当な行為が発覚すると、それに関与した従業員や経営トップが法的/社会的制裁を受けるだけでなく、企業自体も社会的信用を失い、結果として企業価値の低下を招くことになる。

 今後は、企業価値向上策、CSR(企業の社会的責任)活動の一環として、ITを利用/活用しながらコンプライアンス対策に取り組もうとする企業経営者が増加し、国内コンプライアンス市場は急激に拡大するとIDCは予測している。

 企業の経営を規律し監視する仕組み、戦略的方向性を提示する活動(ガバナンス)、企業の内外に存在するリスクを特定し、分析/評価し、管理するための活動(リスク)、法令、基準、行動規範などによって課せられた規則や要求事項を遵守する活動(コンプライアンス)について、それぞれの相互依存関係を前提とした統合的な管理を支援するソリューションが、ガバナンス/リスク/コンプライアンス(GRC)管理ソリューションである。

 特に、人手と紙に依存したコンプライアンス業務プロセスの自動化、効率化のためのIT利活用策として、注目を集めつつある。

コンプライアンス統括最高責任者は42.8%

 IDC Japanが2006年10月に国内主要企業180社を対象に実施した、コンプライアンスに関する調査によると、コンプライアンスの推進組織については、チーフコンプライアンスオフィサー(全社レベルのコンプライアンス統括最高責任者)を置いているユーザー企業は42.8%にとどまっており、組織体制の整備と人材の育成/確保が当面の課題となっている。

 2006年のコンプライアンス関連予算をみると、総IT予算と比較して小規模にとどまっている。全体的に企業のコンプライアンスへの取り組みは発展途上段階にあり、コンプライアンスに関連する予算の計画策定/管理方法についても方向性が定まっていないものと推測される。

関連IT予算は拡大基調に

 しかし、コンプライアンスに関する調査で、2007年のコンプライアンス関連IT予算の見込増減率について聞いたところ、有効回答企業のうち34.5%が「20%以上の増加」と回答しており、「10%以上20%未満の増加」が10.3%、「10%未満の増加」が1.4%となっている。全体では、46.2%が増加、2.8%が減少を見込んでおり、コンプライアンス関連IT予算の拡大基調が鮮明に現れている。

(IDC Japan ITスペンディング リサーチマネージャー 笹原英司)

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