グリッドを使ってTCOを大幅削減

グリッドを使ってアジャイル経営を実現〜シティグループ

2007/03/16

 「迅速な意思決定をしたい」「アジャイル経営を実現したい」「しかし、コストは抑えたい」というのが多くの経営者の願いだろう。そんなIT環境をグリッド技術を導入したことで実現したのが、米大手金融グループのシティグループだ。シティグループではどのような方法でアジャイル経営を実現したのか。米シティグループ 資本市場&銀行技術担当副社長 ジョン・バン・ウデン(John van Uden)氏と、グリッド製品大手であるプラットフォームコンピューティング CEO ソニアン・ゾウ(Songnian Zhou)氏に話を聞いた。

アジャイルエンタープライズを実現するグリッド技術

 プラットフォームコンピューティングはカナダに本社を置き、1992年の創業以来グリッドコンピューティングを専業で担ってきた企業だ。グリッドコンピューティングの共通基盤となる「Platform Enterprise Grid Orchestrator」(EGO)を中心に、仮想サーバの管理を自動化するツール「Platform Virtual Machine Orchestrator」(VMO)などを提供している。

 EGOをシステムに組み込むことで、既存のサーバリソースをグリッドコンピューティング化することができる点が特徴だ。例えば、メール、ERP、EI(Enterprise Inteligence)用にそれぞれ1台づつ専用サーバを用意している場合、計3台のサーバが必要だ。しかし、ERPやEIは24時間常に稼働するアプリケーションではないので、グリッド技術を使って1台に集約することが可能だ。これにより、サーバリソースの稼働率を上げ、TCOを削減できるという。

 ゾウ氏は、「いままで眠っていたサーバリソースを有効活用できるようになる。また、一時的にサーバ3台分のリソースを必要とするアプリケーションであっても、グリッド技術であれば容易にリソースを追加できる。つまり、必要に応じて柔軟にリソースを割り振ることが可能だ。しかも、サーバを追加することなく、既存のサーバリソースに導入するだけで実現できる」と説明した。

 さらに、VMOを利用することで、EGO上で動いている仮想サーバを自動的に管理し、リソースを配分する。これにより、あらかじめユーザーが決めたポリシーに基づいて、仮想サーバ上で稼働するアプリケーションをリアルタイムかつ動的にリソースに割り当てることが可能だ。

ゾウ氏ウデン氏写真 (左)プラットフォームコンピューティング CEO ソニアン・ゾウ氏
(右)米シティグループ 資本市場&銀行技術担当副社長 ジョン・バン・ウデン氏

時簡短縮と複雑化する商品変化に対応するためにグリッドを利用

 グリッド技術は、主に多大なCPUパワーを必要とする航空機設計などに使われていたが、近年では、金融業での導入も目立つという。金融業においては、デリバティブ商品の設計や、株のトレーディング業務などで利用されているとした。

 実際、シティグループでは3年前の2004年からグリッド技術導入プログラムを展開。現在では、主にリスク管理とデリバティブ分野でグリッド技術を利用しているとした。グリッド導入以前のシティグループは、世界で約1万CPUのサーバ資源を有しているものの、サーバの平均利用率は15%未満だった。一方、サーバの計算量は増えるばかりで、毎年20%以上のサーバ資源が増加していたという。

 現在、シティグループではアプリケーションサーバやUNIXサーバの一部をグリッド化しているが、将来的にはディールサーバやプライシングサーバ、分析サーバなどをグリッド化したいという。しかし、ウデン氏は「すべてのサーバを仮想化、グリッド化するのは難しい。なぜなら、アプリケーションの種類によってはCPU単位課金だからだ。CPU課金の場合、グリッドコンピューティングは不利な課金をされる場合がある。この課金制度が変わらないと難しい」とコメント。しかし、「車などの製造業では数年単位のプロジェクトが主体だろうが、銀行は長くても3カ月でプロジェクトが終了する。そのようなケースでは、数週間単位のレスポンスが必要で迅速な意思決定や経営が必要となる。そのようなアジャイル経営を実現するにはこのようなグリッドシステムが必須といえよう」とグリッドコンピューティングのメリットを強調した。

(@IT 大津心)

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