熱拡散性を金属の2倍に

ひざが熱くならないノートPCが生まれる――NECが新材料

2007/04/09

 ノートPCをひざの上で使っても、ひざが熱くならない――こんなノートPCが将来、生まれるかもしれない。NECは4月9日、平面方向に熱を広げる特性を持つバイオプラスチックを開発したと発表した。2008年度以降、熱を発するノートPCや携帯電話の筐体(きょうたい)に利用することを想定している。

 ノートPCをひざの上で使っていてひざが熱くなるのは、CPUなどが発する熱を筐体が拡散させずに、直接に伝導するからだ。金属材料は等方向の伝熱性があり、熱源に近い場所が最も熱くなる局部加熱になりやすい。PCメーカーはユーザーが不快な熱を感じないように、放熱シートや放熱ファンを取り付けているが、ノートPCの薄型化には不利だ。また、プラスチックに金属の粉や炭素繊維を高い比率で配合し、熱を分散させる方法もあるが、成形性が低下し、材料が重くなる。

nec01.jpg 新開発した高熱伝導バイオプラスチックを持つNECナノエレクトロニクス研究所 主席研究員 位地正年氏

 NECが開発した高熱伝導バイオプラスチックは、植物原料で独自開発した結合剤と数ミリの炭素繊維を、ポリ乳酸樹脂に配合する。炭素繊維が結合剤に結びつき、ポリ乳酸樹脂の中でネット状に広がる。ネット状に広がることで、熱の拡散性が高くなるという。

 炭素繊維を10%配合した高熱伝導バイオプラスチックの場合、熱拡散性はステンレスとほぼ同じになる。金属のように局所的に熱くなることはなく、平面方向に広がる。ノートPCでいえば、底面のCPU部分やバッテリ部分だけが高熱になるのではなく、底面全体が低い温度で発熱し、熱を逃がすイメージだ。

nec02.jpg 高熱伝導バイオプラスチックの概要

 炭素繊維の比率を30%にした場合は、熱拡散性が金属の2倍以上になる。高い熱伝導性を保ちながら、重さは従来の熱伝導性プラスチックの半分程度。プレス形成なども可能で、強度も元のポリ乳酸樹脂を上回る。

 新開発の高熱伝導バイオプラスチックは炭素繊維を除く成分の大部分が植物由来で、環境に悪影響を与えないとNECは説明している。2008年度内に材料の量産技術を開発し、その後、ノートPCや携帯電話など電子機器の筐体に利用する計画だ。

関連リンク

(@IT 垣内郁栄)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)