ペレンス氏がACTの主張を激しく批判

「GPL3に法的リスク」はMSの主張!?

2007/04/11

 Association for Competitive Technology(ACT)の弁護士が、GNU General Public Licenseバージョン3の最新の草案は法的リスクをはらんでいると主張したことに対し、オープンソースの開発者でエバンジェリストのブルース・ペレンス氏が激しく批判した(参考記事)。

 「はっきりさせておきたいのは、ACTはマイクロソフトのロビー活動部隊であり、できるだけ否定的なイメージを描こうとしているということだ」――ペレンス氏は米eWEEKの取材でこのように語った。

 「GPLソフトウェアがマイクロソフト製品に取って代わろうとしているのが明らかなので、彼らは不安を抱いているのだ。しかも、彼らにとって重要な顧客のところでそれが起きているのだ。弁護士の仕事は、可能であれば相手を脅すことだ。その方が訴訟で勝つよりも安くつくことを彼らは知っているからだ」と同氏は言う。

 さらにペレンス氏は、IBM、ヒューレット・パッカード、レッドハットを含む二十数社の企業の弁護士がGPL3の委員会のメンバーとなっており、GPL3の草案に含まれる潜在的な法的リスクについて常に検討を行っていると指摘する。

 Free Software Foundation(FSF)では、ACTによる法的評価に関するコメントを避けている。

 Sidley Austinの弁護士で、ACTの知的財産担当顧問を務めるリチャード・ワイルダー(Richard Wilder)氏は、「GPLv3: The Legal Risks of Overreaching for Third-Party Patent Rights」(GPLv3:第三者の特許権を侵害する法的リスク)と題された分析レポートを作成した。

 この分析の中でワイルダー氏は、「法的に有効であり、しかも契約法ならびに議会によって制定された知的財産法にも準拠した特許ライセンスを妨げようとする行動は、ある時点で、GPLv3を開発中の人々やそれに賛同する人々を防衛策や批判にさらすことになるだろう」と主張している。

 ペレンス氏はこれに対し、「FSFが法律に逆らい、既存の契約に違反し、政府とさえ衝突しようとしているという印象を与えることを狙った言葉に過ぎず、その主張を裏付ける事実を一切示していない」と一蹴する。

 「非当事者が、当事者に有効な契約を廃棄したり契約の締結を差し控えたりするよう強制あるいは勧誘する行動は、不法な干渉という訴因になり得る」とするワイルダー氏の主張に対して、ペレンス氏は「新しいライセンスの下でソフトウェアの新バージョンを提供することが、なぜ不法な干渉と見なされるのか理解できない。しかも、GPL2のように受け入れられたライセンスの下で提供されるほかのバージョンが存在するのだ」としている。

 「Linuxディストリビューション(のユーザー)であれ誰であろうと、GPL3の下でライセンスされたソフトウェアを使用するよう強制されることはない。自分たちが雇ったわけではないGPL3開発者の支援を要求する権利は誰にもない。そして誰も、GPL3の下でライセンスされたソフトウェアを、そのライセンスに従って使用する権利を否定されることはない」とペレンス氏は語る。

 「ほかの契約と互いに排他的な条項が含まれるライセンスは、GPL3だけではない。ほとんどのライセンスがそのようになっている」(同氏)

 GPL3は、誰に対しても特許ライセンスを取得することを禁じていない。そういったライセンスを他人に譲渡する方法に影響するだけであり、しかもそれは、そのライセンスがGPL3の下でライセンスされた特定の著作権付きの知的財産に適用される場合に限られるという。

 「Linuxソフトウェアおよび関連サービスを提供する競合プロバイダの間で、特許保有者とのライセンス契約の締結を拒否するという共同合意、あるいは特許保有者とライセンス契約を結ぶ企業に対する懲罰としてLinuxソフトウェアの供給を拒否するという共同合意がなされた場合、集団ボイコット理論に基づく独禁法違反に問われる可能性がある」とするワイルダー氏の主張については、ペレンス氏は「集団ボイコットとは、ほかの競合企業と取引しないという競合企業間での合意である」と指摘する。

 「GPL3はそのような合意を行うものではない。われわれは、ダニエル・ウォレス(Daniel Wallace)氏がFSFに対して起こした訴訟で独禁法問題に対処した。この訴えは却下されただけでなく、裁判官は原告のウォレス氏にFSFの訴訟費用を支払うよう命じた。この1件が重要なのは、GPL2にも特許に関する文言があり、GPL2ソフトウェアとともに譲渡される特許ライセンスは、そのソフトウェアを利用する可能性のあるすべてのユーザーに対して適用しなければならず、さもなければそのソフトウェアを一切配布することはできないと規定しているからだ」と同氏は語る。

 さらにペレンス氏によると、GPL3開発者は誰に対しても自分たちのソフトウェアを使用する権利を与える義務はないため、「供給を拒否する」というワイルダー氏の議論はインチキであるとしている。「インターネットを通じてソフトウェアをダウンロードできるので、ライセンスに準拠すれば誰でも利用することができる」と同氏は付け加えている。

 またペレンス氏は、「著作権を利用して、法定著作権の範囲を超える特許権のような対象を支配しようとする行動は、著作権の乱用であるという批判を招き、乱用をやめるまでそのような著作権の適用が一切認められなくなる可能性がある」というワイルダー氏の主張も退けている。

 「GPL3は、ソフトウェアに適用される特許ライセンスを譲渡するのであれば、それをどのように譲渡しなければならないかに関する条件を規定している。GPL3は、人々からいかなる権利も奪うものではない。しかしGPL3抜きでソフトウェアを配布する権利は一切ない。この規定のデフォルトは『All rights reserved』(著作権所有)であり、このため、GPL3が権利を与えない限り、ソフトウェアに付随する特許ライセンスを譲渡する権利は一切ない」(同氏)

 ペレンス氏によると、「FSFの真の関心事は、ノベルとマイクロソフトがオープンソースとプロプライエタリソフトウェアを結ぶ橋を構築する手段を見つけたことであり、これは基本的にFSFにとって遠すぎる橋である」とするワイルダー氏の主張も「まったく的外れ」だという。

 「GNU/Linuxシステム上で動作するプロプライエタリソフトウェアを作成することは、これまでずっと合法的であったし、現在もそうである。例えば、オラクルは問題なくそれを行っている。これはプロプライエタリとオープンソースの世界を結ぶ橋ではないというのだろうか。それが合法的であるのは、FSFがそうしたからだ」とペレンス氏は話す。

 オラクルがリンクするよう求められた主要なライブラリは、Linux用のGNU Cライブラリだけだという。同ライブラリは、GLIBC、あるいは単にlibcとも呼ばれている。「このライブラリはLGPLの下でライセンスされている。LGPLは、誰でもフリーソフトウェアライブラリをプロプライエタリソフトウェアに結び付けられるようにするためにFSFが作成したライセンスである」と同氏は語る。

 「つまり、ワイルダー氏がいっていることは、FSFは自分たちにとって十分にオープンではないとする世界最大のクローズドソフトウェア企業の主張を代弁したものだ。しかも マイクロソフトはもちろん、FSFが所有するソフトウェアのあらゆる部分に対して認めている権利に近いものを人々に与えていない」(同氏)

 ACTで執行ディレクターを務めるモーガン・リード氏は、「対象著作物を譲渡する、あるいは対象著作物の譲渡権を獲得することによって普及させる」のであれば、特許ライセンスをすべての受取人に自動的に認めることを求める第3草案の内容には欠陥があるとしている。これはライセンス条件ではなく契約条件であるからだという。また、マイクロソフトなどの企業は契約の当事者ではないので、それに拘束されることはない、と同氏は話す。

 「この内容は非当事者も契約に含まれることを意味する――ライセンスを超越し、契約の領域に入ったというわけだ」とリード氏は指摘する。

 「第三者には何の権利も与えられず、義務が課せられているだけだ。しかも、受け入れるのに同意していない義務である。ソフトウェアライセンスに関する判例法は、契約形成における同意の重要性を否定していない。相互の合意は、法律が効力を与えるすべての契約の根底をなすものだ」(同氏)

 しかしペレンス氏にとって、マイクロソフトが現在、SUSE Linuxと引き換えることができるクーポンを顧客に提供しているという事実は、これらのクーポンが著作権付きのGPL2ソフトウェアと引き換えられることを意図したものであることを示している。

 「つまり、マイクロソフトは今日、GPL2ソフトウェアの配布に積極的に参加しているわけであり、そうするためにGPL2に同意したのに違いない。GPL2に同意せずに配布することは違反であるからだ。彼らはGPL2に従い、誰であろうともノベルのディストリビューション内で適用されるマイクロソフトの特許を、GPLソフトウェア内で使用する権利を既に放棄したのだ――永久にだ」(ペレンス氏)

原文へのリンク

(eWEEK Peter Galli)

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