PCCW上級副社長ウォン氏がNGNを語る

NGNで一番重要なのは“顧客の囲い込みができること”

2007/06/01

 米ジュニパーネットワークスは6月1日、中国上海でテクノロジ関連イベント「J-Tech Forum」を開催。NGNの最新事例として、香港PCCWの上級副社長 ユエン・キン・ウォン(Yuen-Kin Wong)氏が同社が進めているNGNへの取り組みや「クアドラプルプレイ」について語った。

ウォン氏写真 香港PCCW 上級副社長 ユエン・キン・ウォン氏

 PCCWは香港最大の通信キャリアで、日本を含め世界各国で通信事業を手掛けている。香港はアジア経済の主要拠点だが土地が狭く、230万世帯700万人しかいないため、そのパイを複数のキャリアが取り合っている状況だという。その中、PCCWは、固定回線はシェア70%260万契約、ブロードバンド回線は117万契約でシェア50%、IPTVは75万8000契約でSDTV品質では93%のシェア、携帯電話は90万契約(2G/3Gの合計)を持つという。そのような背景の中、同社は100%子会社のCascadeと共に2年前からNGNを導入してきた。

 まず、IPTVではブロードバンドの普及でかなり進化が進み、VOD(ビデオオンデマンド)はすでに実装済みで、2007年7月にはH.264でエンコードしたHD(High Definition)画質を12Mbps程度で流すサービスを開始するという。また、3G対応携帯電話に対するIPTVにも取り組んでおり、130チャンネル以上の番組の中から6チャンネルのIPTVを同時に配信できるサービスを開始する予定だとした。

 こうした取り組みの中、PCCWではインターネット+固定電話+ビデオ配信+携帯電話の4つのサービスを組み合わせて提供する「クアドラプルプレイ」を2006年から開始。実際クアドラプルプレイ(NGN)を導入して感じたメリットに、ウォン氏は「1つのコンテンツをTVやPC、携帯電話といった複数のデバイスに提供できるため、TCOを下げることができる点が大きい。そして、最も重要なことは4つのデバイスをバンドルして提供できるという点だ。バンドルすることで、TVはA社、携帯電話はB社、インターネットはC社といった場合にバラバラに契約していたものを1社にまとめることができる。つまり、囲い込みができる。ユーザー側にとっても契約の面倒がなくなる点や支払いをまとめられる点は大きいだろう」と説明した。

 PCCWはクアドラプルプレイのサービスとして、写真共有サービス「snaap!」を提供。snaap!は、写真や動画を友達などと共有できるサービスで、共有した写真をテレビやPC、携帯電話上で閲覧できる。また、エンタープライズ向けサービスでは、インターネットで監視カメラを動かして監視できるサービス「EasyWatch」や、ホットスポットの増強、3GとWi-Fiのローミングサービスなどを実施。コンテンツを充実させるために、英プレミアリーグの放映権も購入したという。

 一方、クアドラプルプレイやNGNでは、「帯域のCannibalization(共食い)」に気を付けなければならないという。1つの帯域で複数のデバイスに提供するため、共食いが起こらないように調整・コントロールすることが重要だとした。インフラ面では、各家庭のFTTH導入を促進し、帯域を可能な限りユーザー側に持っていくことも重要だと指摘した。そして、NGNの現状については「テクノロジ面は2〜3年前に比べてかなり充実してきたが、NGNに十分対応できるとまでは言えない。それよりも、もっと問題なのが、組織面だ。組織がまだ準備できていない。固定電話と携帯電話の部署がバラバラに行動しており、なかなか統一できない。まずは、人間と組織を“NGN Ready”な状態にすることが先決だ」とコメントした。

(@IT 大津心)

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