MPLSの権威がトレンドを語る

日本のキャリアは世界最先端!? ジュニパーフェローのコンペラ氏

2007/06/04

 日本の通信事業者で5〜6年前から導入されだし、現在ではキャリア間通信の主要技術ともなっているMPLS(Multi Protocol Label Switching)。次世代ネットワークNGNのキモともなるMPLSの現状について、現在、IETF(インターネット技術タスクフォース)のCCAMPワーキンググループ共同議長を務め、MPLSの標準化作業などを手掛けているジュニパーネットワークス ジュニパーフェローのキレッティ・コンペラ(Kireeti Kompella)氏に話を聞いた。

 コンペラ氏によると、MPLSの最新のトレンドは「エンタープライズ(大企業)において、VLANの代替としてMPLSを利用するケースが現れてきたことだ」という。MPLSの方が柔軟で管理しやすいネットワークを構築できるからだ。ただし、エンタープライズへの導入には、苦労も多い。キャリアではかなり浸透しているMPLSだが、エンタープライズでの導入はほとんどなかったため、「いかに、簡単に導入でき、便利になるかを啓蒙しなければならなかった」(コンペラ氏)という。

コンペラ氏写真 左)ジュニパーフェロー キレッティ・コンペラ氏
右)アジア太平洋地域 CTO マット・コロン氏

 この状況から、同氏はMPLSをWindowsのプラグアンドプレイのように簡単に導入できる環境を実現するコンセプト「MPLS プラグアンドプレイ」を1年半前から提唱し推進してきた。その結果、ようやく導入企業が現れてきたとアピールする。現在では、企業VPNをMPLSで構築するケースも出てきているという。

 世界に先駆けて日本で利用が進んでいる技術には、IPと光通信のネットワークを協調させるルーティング技術「GMPLS(Generalized Multi-Protocol Label Switching)」を挙げた。GMPLSは、キャリア間通信を促進する技術として、文部科学省などが中心となり普及を促進させている。コンペラ氏は、「日本はGMPLS導入に非常に協力的だ。他国では、さまざまな問題からGMPLS導入が進んでいないが、日本は政府も積極的に推奨してくれている。実際、日本の最大手キャリア2社がGMPLSを使ってキャリア間通信を行っている点は世界に誇れる実績だろう」と説明した。

 日本でGMPLSが導入されている背景として、同氏は「NGNの導入が見えてきた」ことを挙げる。NTTを中心に、キャリアや大手メーカーがこぞってNGNに向けた準備を開始しているため、NGNに必要なGMPLSの利用も進んでいるのではないかと推測する。

 次にコンペラ氏が推奨するのが、「IP/MPLSをエッジに移していく」ことだ。この発想は、従来コアネットワークで利用されることが多かったMPLSを、メトロネットワークやさらにユーザー側に移すというものだ。MPLSをエッジに移動することで、トラフィックを減らせるほか、サービス展開も容易になるという。こういった動きは、すでに欧州のキャリア2社や、米国のキャリアが実際に取り入れており、今後日本でも進むのではないかと同氏は推測する。

 今後のMPLSの活動については、まず「MPLS プラグアンドプレイ」をさらに進めていきたいという。そして、現在、ボックスレベルのプロビジョニングしかできていないものを、ネットワーク全体でプロビジョニングができるようにプロビジョニングのレベルを上げていきたいとした。

(@IT 大津心)

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