BPPへ向かう

知っておきたいSAPの「脱ERP戦略」

2007/06/19

 ERP最大手のSAPは顧客ニーズの変化を受けて、これまでのビジネスを大きく変える「脱ERP戦略」を進めている。既存のIT投資を生かしながら、変化に柔軟、迅速にITシステムを対応させることを望むユーザー企業に応えるには従来のERPでは限界があると判断したからだ。SAPが選択したのは「ビジネス・プロセス・プラットフォーム」(BPP)という新しいITシステム環境だった。

sap01.jpg SAPジャパンのバイスプレジデント ビジネスプロセスプラットフォーム本部長 福田譲氏

 「明日何が起きてもITで対応できるようにしてほしい」。SAPジャパンのバイスプレジデント ビジネスプロセスプラットフォーム本部長 福田譲氏は、このように考えるユーザー企業が増えてきたと実感している。ERPといえば企業の基幹システムで、ベストプラクティスを基に企業それぞれのプロセスも盛り込みながらじっくりと開発する――というのが一般的な認識だ。1度開発したシステムは途中でバージョンアップを行いながらも長期間にわたって使い続ける。SAP R/3はそのようなERPの代表格であり、企業のビジネスプロセスに密接に結びついている。

 その反面、ERPは改修が難しいという問題があった。ビジネスプロセスの変化に応じてERPを改修しようとしても、長期間の開発と多額のコストがかかる。ユーザーインターフェイス(UI)を少し変えるだけでも背後のロジックに変更が生じるなど、1度構築したシステムに変更を加えるのは難しかった。だが企業の合併・買収が日常的に行われ、事業の選択と集中が常に意識される市場環境が到来。ITシステムの柔軟性が強く求められるようになった。

 SAPが選択したのは、「オープンで疎結合されたサービス指向のアーキテクチャ」(福田氏)。つまりSOAをERPに取り入れることだ。SAPは2003年からアプリケーションを管理し、実行するためのミドルウェア群である「SAP NetWeaver」の整備に着手。ERPはビジネスの観点からサービスごとに分割し、「エンタープライズ・サービス」としてSAP NetWeaverが管理する「エンタープライズ・サービス・リポジトリ」に格納する。「SAP ERP」だけでなく、ユーザー企業が自社開発したアプリケーションもSAP NetWeaverに接続できるようにし、アプリケーションの統合を進める。ユーザー企業はエンタープライズ・サービス・リポジトリからサービスをピックアップし、コンポジット・アプリケーションとして利用する。SAPはこのアプリケーション基盤全体をBPPと呼んでいる。

 BPPのもう1つの狙いはアプリケーションやサービス、ビジネスプロセスの相互依存を少なくして、システムに柔軟性を持たせること。「機能、サービスは同一にし、UIを使い分けてもらう」(福田氏)ことが可能になる。SAPは2007年第3四半期にリッチクライアントを実現する「SAP NetWeaver Business Client」を出荷する予定で、エンドユーザーの操作性を向上させる。

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(@IT 垣内郁栄)

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