団結のために

克服すべきはオープンソースのごう慢な優越感

2007/06/26

 一見したところ、このところオープンソースソフトは地歩を得ているようだ。期待されているGNU GPLv3(GNU General Public License Version 3)のドラフトもついに公開され、オープンソースコミュニティはようやく新たな前進の機会を得た。

 州政府や地方自治体は、自分たちの文書を単一のベンダ――いかに善意あるベンダであっても――の人質にするのは、そんなに良いことではないかもしれないと分かってきた。デルは最近Linuxブームに飛び乗り、自社のPCにUbuntuを搭載している。一部プロプライエタリなOOXML(Office Open XML)フォーマットを友好的な標準化団体に承認させようとするマイクロソフトの目論見は、予想ほどスムーズにはいっていない。

 だが舞台裏では、あまり順調ではない。左寄り(マイクロソフトのスティーブ・バルマーCEOが、オープンソース支持者をコミュニストと批判したのは有名な話だ)の評判通りの施策をとってきたマサチューセッツ州は、州政府機関にオープンソースプラットフォームへの乗り換えを命じ、重要な突破口を開いた。ただ、1つ問題があった。彼らが移行をやりきれるようには見えないということだ。この件を知る筋は、同州の元CIO(情報統括責任者)ピーター・クイン氏が辞任した原因の少なくとも一端は、表向きはオープンソースを支持しながら、裏ではこの移行をやめさせようとしているベンダによる遅延工作にあると話している。

 何も驚くようなことではない。IBMのような企業は、毎年売上高を1億9000万ドル増やさなければならず、そのうちかなりの部分をロイヤルティーが占めている。ご想像の通り、マイクロソフトから得られるロイヤルティなどだ。ベンダコミュニティは、自社の収益モデルを妨げない範囲でしかオープンソースを支持しないと言えば十分だろう。

 マサチューセッツ以外にも、ミネソタ、テキサスなどの州がオープンソース法案を提出したが、進展がないか不成立に終わっている。問題の1つは、オープンソースソフトでは、プロプライエタリなソフトで作成した文書がうまく読めないということだ。カリフォルニア州は現在、新しいプラグインをテストしている。目覚ましい成果がなければ、カリフォルニアでもオープンソースは死んでしまうかもしれない。

 一方、マイクロソフトはその締め付けるような腕でオープンソースディストリビューションを包み始めており、平和共存――自らの決めた条件の下、選ばれたディストリビュータのみと――を提案している。

 いまやほとんどの人は、マイクロソフトがOOXMLの承認を得て、特にオープンソースに友好的な州にも門戸を開くと見込んでいる。

 Free Software Foundation(FSF)とLinuxは、GPLv3の一部の条項をめぐって争いを続けており、オープンソースコミュニティーは再び、実際に権力をつかむことよりも難解な理論上の争いに勝つことに関心を持つ過激な政治団体の分派のように見えてきている。

 またデルはPCにUbuntuを搭載する一方で、企業向けPCにLinuxをプリインストールすることは今なお拒んでいる。

 これは、オープンソースが死にかけているということなのか? もちろん違う。だが、オープンソースコミュニティはごう慢な優越感と、自身がメシアのように避けられないものであるという感覚を克服しなければならない。オープンソースは代替選択肢として十分になっているのだから、もしも団結して行動しなければ、いつの間にか回顧の対象に――「UNIXって覚えてる?」と言われるような――なってしまうかもしれない。

原文へのリンク

(eWEEK Michael Hickins)

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