システム開発、保守、運用を調査

最適な工期は「投入人月の立方根の2.4倍」、JUASが調査

2007/07/05

 日本情報システム・ユーザー協会(JUAS)は7月5日、ユーザー企業102社の357プロジェクトを調査した「ソフトウェアメトリックス調査2007」を発表した。システム開発の企画、開発計画に始まり、保守や運用管理まで実態を調査した内容で、企業情報システムの実態を伝える。調査結果からは“デスマーチ”となるプロジェクトの実態も浮かび上がった。

juas01.jpg JUASの専務理事 細川泰秀氏

 デスマーチ化するプロジェクトの条件の1つは工期の設定が不適切であることだろう。調査から導き出された標準開発工期は「投入人月の立方根の2.4倍」。調査対象のプロジェクトの全体工数と全体工期をグラフ化し、回帰直線によって求めた。この計算によれば1000人月のプロジェクトの場合は24カ月の工期を設定するのが標準的といえる。事情によってこの標準工期よりも短い工期しか取れない場合は、その短縮率を計算して対策を採るべきとJUASは提言。だが、「(短縮率が)30%以上の短い期間での開発は無謀である」(JUAS)としている。

 調査したプロジェクトのうち、事前の予定通りの工期で開発を終えられたのは70%以上で、工期に関しての失敗はそれほど多くないことが分かる。遅延する理由で最も多いのは「要件仕様の決定遅れ」。3位は「要件分析作業が不十分」で、ユーザー企業が行うべき上位工程での不具合が工期全体に影響を与えているようだ。

 工数(人月)の設定ではシステムの画面数やファイル数も使える。調査から導き出されたのは「必要工数=0.1×ファイル数+1.3×画面数+0.3×バッチ数」という数式。その中でも工数と最も高い相関を示すのは画面数で、「必要工数=画面数×1.55」との数式も示された。

 完成したシステムの品質の計算では、ユーザーが発見した欠陥数をプロジェクトの全体工数、または発注金額で除した欠陥率を使用。調査したプロジェクトの欠陥率は、平均値で0.81個、中央値で0.33個との値になった。1人月を100万円と計算すると、欠陥が5人月(500万円)当たり1件に収まっているプロジェクトは全体の約40%。JUSAは「5人月(500万円)当たり1件以下」を目標にすべきと提言している。

5年の総保守費用は開発費の2倍

 調査ではシステム保守に大きなコストがかかっていることも分かった。調査結果によると、システムを自社で開発した場合、5年間の総保守費用は初期開発費用の2倍。パッケージソフトウェアを使った場合は本体保守が年間に本体金額の20%前後、アドオン開発が10%前後というのが平均の値だった。保守作業は自社、あるいは情報システム子会社が行っているという答えが8割だった。

 2007で初めて行ったシステム運用についての調査では、ホスト1台当たり5人の運用担当者、サーバは1人が50台を運用できるとの基準が分かった。ただ、サーバの種類などによってこれ以上の人員が必要になるケースもある。

(@IT 垣内郁栄)

情報をお寄せください:



@ITメールマガジン 新着情報やスタッフのコラムがメールで届きます(無料)