ノベルとの契約下ではGPLv3向けのサポートは提供せず

「GPLv3には縛られない」、マイクロソフトが明言

2007/07/06

 米マイクロソフトは7月5日、同社のGNU General Public License(GPL)バージョン3のサポート義務に関する誤解を解消、昨年11月に米ノベルと交わしたSUSE Linuxの証明書配布契約の下では、同社はGPLv3向けのサポートやアップデートを提供しないと宣言した。

 また同社はこの日、ノベルおよびその同業のXandros、Linspireとの契約は、Free Software Foundation(FSF)による6月のGPLv3リリースには影響されないとも語った。

 ノベルは、マイクロソフトの証明書の条件にかかわらず、通常のSUSE Linux Enterprise Serverサブスクリプションの顧客をサポートするとしている。

 マイクロソフトは「GPLv3ライセンスの仲間ではない。その行動はいずれもGPLv3の契約当事者としての立場を受け入れ、そのようなライセンスの下で法的義務を負っていると誤って解釈されるべきではない」とマイクロソフトの知的財産・ライセンス副社長ホレーショ・グティエレス氏は語る。

 FSFなどがGPLv3に関連するマイクロソフトの法的立場と義務に疑いを投げかけるコメントを出したことで、同社は自身の姿勢を明確にする必要があると判断した。

 「マイクロソフトがノベルとの相互運用契約の下でノベルサポートサービスの証明書を配布していることが、GPLv3ライセンスを受け入れたことになるという主張もあるが、われわれはこのような主張に、契約および知財関連法による妥当な根拠があるとは考えていない」とグティエレス氏は5日の声明文で述べている。

 「事実、サポート証明書の配布も含め、ノベルとの契約のいかなる側面についても、当社には、GPLの下でのライセンスは不要だと確信している。たとえノベルが今後、GPLv3コードの配布を選んだとしてもだ。さらに当社は、GPLv3の下で、あるいはその結果として特許権を暗示あるいは明示することを認めない。GPLv3ライセンサーには、いかなる方法でもマイクロソフトを代表したり、拘束する権限はない」

 FSFは、マイクロソフトがノベルと交わした特許契約および訴訟免責契約にGPLv3は適用されるが、マイクロソフトが販売し、顧客に提供するSUSE Linux Enterprise Server(SLES)証明書が特許の脅威を弱めるとの希望を持っていると主張している。

 しかし、この問題に関する疑いや法的議論を避けるために、マイクロソフトはSLES証明書でGPLv3の下でライセンスされるあらゆるコードのサポートとアップデートをカバーしないことにした。「状況をつぶさに調べ、今後この証明書の範囲を拡大するかどうか決める」とグティエレス氏は言う。

 マイクロソフトがこれらの証明書をどう変更しようと、ノベルはGPLv3の下でライセンスされるコンポーネントを含む、完全な機能を備えたSLESの配布を続けるとノベル広報担当のブルース・ロウリー氏は語る。

 これはつまり、ノベルはGPLv3の下でライセンスされる技術をサポートするという意味だと同氏は語り、今後マイクロソフトの証明書からLinuxを手に入れる顧客には、 マイクロソフトの証明書の条件にかかわらず、通常のSLESサブスクリプションを提供すると述べた。

 「ノベルは今後も顧客のニーズを第一に考え、彼らが最新版のSUSE Linux Enterpriseをビジネスに活用できるようにする。既にマイクロソフトから証明書を受け取った顧客はその影響は受けない。この証明書はGPLv3発行前に完全に履行されたからだ」(同氏)

 マイクロソフトの証明書の変更には、両社の契約の範囲を狭めるもの、将来の見込み顧客にとってSLESの魅力を損なうものはないと同氏は語る。顧客は、たとえSLESに今後GPLv3技術が盛り込まれることがあっても、同製品の最新版を受け取るという。

 マイクロソフトのグティエレス氏は、同社がノベル、Xandros、Linspireと結んだ契約はGPLv3の影響を受けないと語った。「マイクロソフトとノベルがそれぞれの顧客に提供する特許の契約は変わっていないし、以前と同じように適用され続ける」

 「当社とノベル、その他Linuxプラットフォーム・デスクトップベンダーとの提携は、依然として強力だ。その契約で定められている、彼らとの間に築いた知財の架け橋は変わらない。特に、仮想化、標準ベースのシステム管理、ID相互運用、文書フォーマット変換ツールの共同開発など、ノベルとの技術・事業協力はこの先も全力で進める」(同氏)

 マイクロソフトは依然、混在環境で働く顧客のために相互運用性を向上させ、知的財産の保証を与えるためにオープンソースソフトコミュニティーとの協力に力を入れていると同氏は言う。

 だがマイクロソフト広報担当者は、この点に関してRed Hatと話し合っているかどうかを明かすことを避けた。Red Hatは先にマイクロソフトと相互運用性の問題について話し合う意向を表明した。

 だがRed Hatは、顧客の問題を解決することを目標に、話し合いを純粋にWindowsとRed Hat Linuxの相互運用性だけに限定したい考えだ。「マイクロソフトの人たちと、2つのOSや、知的財産など無関係な条件を付けることなく、協力して顧客の問題を解決する方法について話し合いたい」とRed Hatのエンジニアリング上級副社長ポール・コーミア氏は話していた。

原文へのリンク

(eWEEK Peter Galli)

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