「やらされ感がある」

日本版SOX法適用が進まない……各社の言い訳は?

2007/08/02

 財務報告の適正性を保つために上場企業に対して内部統制の整備を義務付ける金融商品取引法(いわゆる日本版SOX法)の適用が8カ月後の2008年4月に迫った。上場企業の多くは内部統制整備の作業を進めているが、すべての企業で順調に進んでいるわけではない。NRIセキュアテクノロジーズが8月2日に発表したアンケート結果からは「内部統制整備がうまく行かない理由」が分かる。

 アンケートは同社が東証1部、2部の上場企業、および従業員が300人以上の非上場企業の計386社に実施した。「金融商品取引法に基づく『財務報告に係る内部統制の評価』を進めているか」の質問に対しては、83.7%の企業が「すでに着手」と回答。だが、今年度の第2四半期(7−9月期)以降に着手したいとしている企業が9.3%、「来年度から取り組む予定」「いつから取り組むか分からない」としている企業も数%ずつあり、取り組む姿勢は一様ではない。

 では、内部統制整備を進める上での問題は何なのか。複数回答で46.7%を占めたのは「関係者が多忙であり、計画通り進んでいない」。次いで「プロジェクト体制はできたが、進捗が遅れている」(43.3%)だった。「監査法人が多忙」(25.9%)などの答えもあり、リソース不足が深刻になっていることが分かる。「やらされ感があり、意欲が高まらない」(19.6%)との回答もあった。「文書化の品質にバラつきが多く、手直しが発生」(23.1%)、「リスクや統制の理解が不十分なため、文書化作業が進まない」(21.5%)との回答も多く、内部統制整備への戸惑いも感じられる。

 このような企業のリソース不足、戸惑いを反映してか、作業の進捗に対する評価は各社とも低調だ。自社の進捗を「非常に満足」と答えたのは0.6%に過ぎず、「満足」も6.9%。「まあ満足」は35.2%だった。最も多かった回答は「やや不満」の36.4%。「不満」(16.2%)や「非常に不満」(4.7%)の答えも目立つ。

 内部統制整備を進めている企業でも「最低限の対応」が多いようだ。2008年4月の適用までにどのような方針で内部統制整備を進めるのか、との質問に対して、最も多かった回答は「評価範囲とする組織や業務プロセス、情報システムは可能な限り絞る」(74.3%、複数回答)だった。「評価目的は財務報告の信頼性確保に絞る」(72.7%)、「リスク、統制については可能な限り、重要なものに絞った評価を行う」(70.9%)との回答も多かった。

(@IT 垣内郁栄)

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