「もうExcelには戻らない」

アップルの「美しいNumbers」はExcelの代わりになるか

2007/08/17

 ユーザーや開発者の反応を見たところ、アップルの8月7日のスペシャルイベントの最大のニュースは、スティーブ・ジョブズCEOがいうところの「普通の人」のための新しい表計算ソフト「Numbers」のデビューだったようだ。

 Numbersはアップルの79ドルのソフトウェアスイート「iWork'08」の一部。このスイートにはプレゼンテーションソフト「Keynote」、ワープロ・ページレイアウトアプリケーション「Pages」の新版も含まれる。Pagesの新版はMicrosoft Word 2007文書を開ける。現時点ではMac用WordのユーザーがWord 2007ファイルを開くには、マイクロソフトのファイルコンバータのベータ版を使わなくてはならない。

 アップル製の「表計算アプリケーションはかなり期待されていた」とコンピュータショップFirstTech Computerのプロダクトマネジャー、フレッド・エバンズ氏は言う。「たくさんの人がMicrosoft Officeを買っているが、彼らは欲しいからではなく、買わなくてはならないから買っている」

 エバンズ氏は、iWork'08の「評判は、全体的に良く」、同スイートが発表された日から、FirtsTechには問い合わせの電話が来ていると話す。

 iWork'08の「売り上げは上々だ」と同氏は語り、それに比べると旧版iWorkの売り上げはそこそこだったと付け加えた。

 Numbersが加わったことが、その違いを生んだのだろうと同氏は指摘する。「特にNumbersにかなりの関心が集まっている。人々は見た目や、項目の並べ替えの簡単さを気に入っている」

 しかし、ほとんどの人は同氏に、NumbersがMicrosoft Excelの代わりになるのかどうかを聞いてくるという。同氏は、Numbersは「個人向けで、おそらくオフィスや企業向けではない」と答えている。同氏は、アップルがサイトライセンスを提供していない点を指摘、そのようなライセンスがあれば、大規模導入する上でもっと魅力的になるだろうとしている。

 だが、Mac OS X向けカタログ化アプリケーション「Delicious Library」を開発するDelicious Monsterのような小規模企業にとっては、NumbersはすぐにExcelの代わりになるものだった。

 「購入したその日にNumbersを起動した」とDelicious Monsterのウィリアム・ジョン・シプリーCEOは語る。同氏は、会社の毎週の売り上げを記録するのに使っていたExcelファイルをすべてインポートしたという。

 「良かれ悪しかれ、Excelで目にするものとまったく同じだった。Numbersの自動チャートバックグラウンドは非常に美しく、これまでExcelで見てきたよりもいい」(同氏)

 同氏は、業務ファイルのアーカイブすべてを――計算式や書式はそのままに――40分で変換できたとしている。

 「もうExcelには戻らない」(同氏)

 ただしシプリー氏は、Excelのスクリプトを利用したことはないと認めている。Numbersは、多くの企業が使っているVisual Basicスクリプトをサポートしていない。同氏はまた、Numbersがアップルのネイティブスクリプティング言語AppleScriptをサポートしていないのは「信じられないほどひどい」と話す。

 「アップルは長年、開発者にAppleScriptサポートを組み込むよう言っていたのに」と同氏。ただ、アップルはソフトアップデートでNumbersのAppleScriptサポートを「確実に」追加できると同氏は言う。

 「アップルは、Mac向けの表計算ソフトをうまく作れる唯一の会社だ。Excelは非常に定着しているが、それは優れていることとイコールではない」(同氏)

 シプリー氏は一開発者として、マイクロソフトが最近ファイルフォーマットをオープンにしたのとは違って、アップルがiWorkアプリケーションファイルフォーマットを開放していないことを批判しているが、iWorkアプリケーションが「開発者にとって素晴らしい目標を作り出している」ことは認めている。

 それでも一部の企業にとっては、Numbersは依然としてコンシューマー向けアプリケーションであり、企業ニーズを満たす十分なツールではない。

 「Numbersは優れたスタイルと表計算機能を多数持っているが、データのインターチェンジ機能をちょっと見たかった。どうやらその機能はないようだ」とデータベースおよびWeb開発サービスを提供するConcise Designのオーナー、ブルース・ロバートソン氏は言う。

 「Numbersはスクリプトのサポートがない点で、第1世代のiWorkのほかのアプリケーションに似ているようだ。できればPagesやKeynoteで――部分的にではあるが――サポートしたように、スクリプトサポートを追加してほしい」と同氏は語る。「データをうまくテンプレートに入れる唯一の方法は、コピー&ペーストか手動でのデータ入力のようだ。スプレッドシートのリージョンは名前付きのテーブルだが、それを結合したり、インポートできる機能やメニューコマンドがあるようには見えない」

 「Excelとは違って、1つのNumbersファイルをほかのファイルのデータソースとして使うことはできない。Numbersファイル間でテーブルをドラッグすることもできない。データフォーマットはXMLだが、すぐに変換ツールが出てくることはおそらくないだろう。Address BookやiCalからアイテムをドラッグすることはできる。Numbersは美しく多才だが、データの挿入に関していえば、自動オプションがないようだ」(同氏)

 それとは無関係かもしれないが、アップルは今週、コンシューマー向けに長年提供しているオフィススイート「AppleWorks」を密かに「生産中止」ステータスにしたことを認めた。

 同製品はワープロ、表計算、データベース、作図、描画ソフトを備え、1984年にApple II向けの「ClarisWorks」として誕生した。1991年にMacintoshに、1993年にWindowsに移植された。

 アップルの担当者は、iWork'08はAppleWorksのワープロ文書、スプレッドシート、プレゼンテーションを開けるとしている。

原文へのリンク

(eWEEK Daniel Drew Turner)

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