米仏英独に展開

空に舞い上がるデルのLinuxペンギン

2007/08/23

 デルは3カ月前、自社のコンシューマ向けデスクトップ/ノートPCの一部にUbuntu Linuxをプリインストールすると初めて発表したが、これまでの結果は、同社がそこでとどまる理由がないことを示している。

 サンフランシスコで開催された今年の「LinuxWorld Conference & Expo」で、テキサス州ラウンドロックに本社を置くデルは、UbuntuベースのPCを欧州にも投入し、フランス、英国、ドイツなどで販売する予定だと発表した。

 同カンファレンスでデルのケビン・ケトラーCTO(最高技術責任者)は、同社のPCに仮想化技術をプリインストールする方針も明らかにした。Linux OSとWindowsの両方を動作するオプションをユーザーに提供するためだという。

 現時点では、デルがLinux PCの投入でどれだけ成功したかを判断するのは難しいようだ。同社でエンタープライズマーケティングを担当するディレクター、ジュディ・チャビス氏によると、同社のUbuntu PCを購入、利用している顧客の正確な数を外部のアナリストおよび同社が把握するには、しばらく時間がかかるという。しかし今年2月にデルのブログ「IdeaStorm」にLinux PC販売のアイデアが掲載されたときに同社に返ってきた反応から判断すれば、Linuxデスクトップという考え方は一般の人々に支持されつつあるようだ。

 「人々がLinuxデスクトップを受け入れている理由はたくさんある」とチャビス氏は語る。「こういったユーザーの多くは、2台目のPCでLinuxを試してみようという人たちだ。当社にとって大きなプラスになっているのは、数年前と比べるとLinuxデスクトップ用のアプリケーションが格段に良くなっていることだ」

 デルがコンシューマ向けPCモデルの一部でプリインストールしたLinuxを提供するという発表は今年、メディアで大きく報じられたが、チャビス氏によると、同社は企業顧客向けには、PCとサーバの両方で数年前からLinuxを提供してきたという。

 しかしエンタープライズ分野でも、デルの顧客の間ではまだWindowsの方が好まれている。Linuxを求める顧客もいるが、デルは特定の技術に肩入れする気はないようだ。

 「われわれは特定の技術を顧客に押しつけようとは思わない。いまのところ、米国と欧州の企業社会では、Windows環境はまだ強固な地盤を持っている」とチャビス氏は話す。

 デルの創業者でCEOのマイケル・デル氏が関心を表明しているもう1つの分野が、中堅・中小企業(SMB)向けのプリインストールLinux である。チャビス氏によると、SMB市場は、同社が今でも関心を持っている市場の1つだが、この市場でLinuxを本格的に推進する時期はまだ決まっていないとしている。

 同氏によると、この分野でのLinux推進で障害となっている要因の1つは、多くのSMBはすでにクライアントとサーバ上でLinuxを運用する能力を持っているが、ほとんどの企業では、Windowsプラットフォーム上でしか動作しない重要なアプリケーションが少なくとも1つあるということだ。「こういったケースでは、出荷前に組み込まれた仮想化ソリューションが求められるとデルは考えている」とチャビス氏は話す。これにより、顧客はPC上でLinuxとWindowsの両方を動作させることが可能になるからだ。

 デルの次の具体的なステップは、Linuxクライアントが受け入れられる新興市場への進出だ。チャビス氏によると、デルはもうすぐ、中国で企業ユーザーとコンシューマー向けのNovell Linuxデスクトップを投入する予定だという。同社はヒューレット・パッカードからPCの市場シェアを奪い返すために勢力範囲の拡大を狙っており、新興市場への進出もその一環だ。

 チャビス氏によると、結局、同社がLinux製品を提供するのは、顧客のニーズがあるからだという。

 「ユーザーがLinuxを求めている市場があれば、われわれはその市場を追いかけるつもりだ」(同氏)

原文へのリンク

(eWEEK Scott Ferguson)

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