世界3位のPCベンダに

エイサーのゲートウェイ買収で変わるPC業界の勢力図

2007/08/28

 台湾エイサーは8月27日、7億1000万ドルで米ゲートウェイを買収すると共同声明で発表した。世界最大級のPCメーカーを目指す動きだ。

 1株1.90ドルのこの買収は、世界第3位のPCベンダ誕生を目指したもの。買収完了後は、年間で売上高が150億ドルを超え、出荷台数はデスクトップ・ノートPC合わせて約2000万台に達する見込みだ。

 買収完了は12月になると見られる。

 ゲートウェイは米国PCベンダートップ5にとどまってはいるものの、ヒューレット・パッカード(HP)やデルなどの強力なライバルに徐々に市場シェアを奪われてきた。7月18日にIDCとガートナーが発表した調査報告によると、ゲートウェイは2007年第2四半期に、前年同期と比べて約7%シェアを落とした。

 同四半期のゲートウェイのPC出荷台数は、全米のわずか5%程度。過去数年、同社はコンシューマ向けデスクトップの直販に力を入れていた1990年代に築いたイメージを新たにしようとしてきた。現在は、SMB(中小企業)向けのPCとサーバにフォーカスし、ノートPCやタブレット型PCなど多様な製品を提供している。コンシューマ製品もまだ販売している。

 一方エイサーはこの数四半期、低価格ノートPCと、コンシューマー市場への集中で勢力を急拡大している。先述のガートナーとIDCの調査結果では、エイサーが第2四半期に163%シェアを伸ばしたことが示された。

 この調査によると、エイサーは世界市場で上位5位に入っており、約7%のシェアを握っている。ゲートウェイの買収により、エイサーは世界第3位のPCベンダとして、2005年にIBMのPC部門を買収したレノボに挑める立場に立った。

 Forrester Researchの主席アナリスト、J・P・ゴウンダー氏は、たとえゲートウェイブランドに7〜8年前ほどの人気や重要性がなくても、同社の買収はエイサーにとって大きな一歩だと語る。

 「エイサーにとっては重要な取引だ。同社は多数のしゃれたデザインでプレゼンスを拡大しようとしてきたし、フェラーリとのコラボなど、興味深い共同ブランドの取り組みも展開してきた。エイサーは最近好調で、ゲートウェイは7年前ほどではなくてもいまも重要なブランドだ。まだゲートウェイの名は知られているし、Best Buyで売られている」(同氏)

 ある企業が別の企業を買収するということ以上に重要なのが、今回の動きが、エイサーやASUSなどのアジアのOEMメーカーの多くが、自力で強力なPC企業になりつつあるということを示しているということだ。

 エイサーにとってこの買収の難点の1つが、ゲートウェイのPCラインは、高めの利益率を実現できるハイエンドノートPCを作っているエイサーのデザインに合わないということだ。

 レノボも中国での売り上げのおかげで国際市場で良好なプレゼンスを有しているが、企業向けの人気シリーズThinkPadとThinkCenterをもってしても、米国市場では上位5社には入っていない。

 エイサーのゲートウェイ買収は、レノボのパッカードベル買収に向けた動きを止めるか、少なくとも複雑にするだろう。レノボは最大の弱点である欧州市場でのプレゼンス拡大のために、欧州PCベンダのパッカードベル買収を検討している。ゲートウェイ幹部は発表文で、同社はパッカードベルの親会社PB Holding Companyの全株式を買収する選択肢を追求することを明らかにしている。PB Holdingはラップ・シュン・フイ氏(eMachines[現ゲートウェイ]創業者)が経営権を持つ。

 レノボの広報担当者は、同社がいまもパッカードベル買収に興味を持っていることを認めた。

 「当社は依然、パッカードベルに関心を持っており、選択肢を検討している」とレノボの広報担当レイ・ゴーマン氏は言う。「適切な時期が来たら、さらにコメントする」

 エイサーはゲートウェイの買収により、レノボだけでなく、コンシューマ市場でデルにも挑戦できるようになる。この分野は以前からデルにとって弱点で、エイサー、それからAppleなどほかのPCメーカーはコンシューマ市場の特定のセグメントのニーズにより調和したノートPCの提供に長けていることを証明してきた。

 今回のエイサーによる買収に、法人事業がどの程度関わってくるのかは不明だ。同社は主にコンシューマ向けノートPCのサプライヤとして名を成してきた。同社は共同発表文で、ゲートウェイの企業向けラインを第三者に売却する交渉を進めていると述べている。

 IDCのアナリスト、リチャード・シム氏は、ゲートウェイの法人事業にはどちらの道もあり得ると語る。ある意味では、エイサーはコンシューマ向けノートPCに力を入れており、社内に法人部門を必要としていない。その点では、エイサーのゲートウェイ買収は、流通を強化し、より多くの製品を小売市場に送ることが目的だ。

 一方で、政府機関や教育機関、垂直市場にPC、サーバ、ストレージを提供するゲートウェイの法人事業は、コンシューマ市場が減速すればその価値を示せるだろう。

 「ゲートウェイの法人事業はある程度の規模を加え、またエイサーが教育および政府機関の大口顧客にアプローチできるようにする」(シム氏)

 両社は、バックエンド業務の統合、および合併後の新会社の影響力を活かしてサプライチェーンをより効率的に活用し、部品をもっと安く仕入れることで、コスト節約が見込めるとしている。

原文へのリンク

(eWEEK Scott Ferguson)

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