「再現し、よりよいものを与える」

地デジはアナログ放送に学べ――インテルが提言

2007/08/31

 「地上デジタル放送は利用者からアナログ放送の経験を取り上げるのではなく、その経験を再現し、よりよりものを与えないといけない」。米インテルのコーポレート・テクノロジー統括本部 コンテンツ政策・アーキテクチャー担当ディレクター ジェフリー・ローレンス(Jeffrey Lawrence)氏は8月31日、都内で会見し、日本の地上デジタル放送について考えを述べた。

intel01.jpg 米インテルのコーポレート・テクノロジー統括本部 コンテンツ政索・アーキテクチャー担当ディレクター ジェフリー・ローレンス氏

 地上デジタル放送については現行のコピーワンス制限を9回コピーに見直す議論や、コンテンツをIPネットワークで配信するIP再送信、そして2011年のアナログ放送の停波に向けて、地上デジタル放送に移行しない利用者が現れる「地デジ難民」問題などが課題に挙がっている。ローレンス氏は「これらの問題解決にはルールやビジネスのやり方を変えないといけない場合がある。インテルは次のステップとして日本の皆さんにかかわりたい」と話す。

 ローレン氏は9回コピーについて、「妥協の産物」としながらも「アナログ放送で当然できたことが、地上デジタル放送でも再現できる。PCとの連携も拡大するだろう」と指摘し、歓迎する考えを示した。また、IP再送信についても、外出先の利用者が自宅のデジタル家電にアクセスしてIPネットワーク経由でコンテンツを楽しむケースや、コンテンツプロバイダーの放送サービスにアクセスしてコンテンツを視聴するケースを紹介。視聴者が世界中に広がる可能性があることから「テレビ局にとってもビジネスモデルを変革するチャンスになる」などと話した。

 地デジ難民問題について政府は5000円程度の販売価格の地上デジタルチューナーを検討しているが、メーカーからはこの価格を実現するのは難しいとの声も聞かれる。ローレンス氏は現状の地上デジタルチューナーの機能をソフトウェアで実現する「ソフトウェアCAS」の活用を提言した。ソフトウェアベースになるため、専用の受信機だけでなく、PCやモバイルデバイスなどに容易に展開可能で、低価格な受信対応機器の増加が期待できるという。ソフトウェアCASは「すでに開発は終わっている。あとは実装するだけ」の段階といい、ローレンス氏は「おそらく2008年ごろには実装できる。B-CASカードを挿入しなくても地上デジタル放送を楽しめるようになるだろう」と語った。

 ソフトウェアCASが普及するには現状の地上デジタル放送受信機の実装基準などを見直す必要がある。テレビ局やメーカーなどは既存の地上デジタル放送受信機をベースにビジネスを設計しているため、ソフトウェアCASを採用するには、ビジネスモデルの変換が必要になる。ローレンス氏は「テレビ局がソフトウェアCASをサポートしないのは財務的な理由。ソフトウェアCASを実装するためにはビジネス上のルール変更が必要だ」と話した。

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(@IT 垣内郁栄)

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