テンプルトンCEOが説明

MSとOSSの間で揺れる新生シトリックスの仮想化技術

2007/09/05

 米シトリックス・システムズのCEO マーク・テンプルトン氏(Mark B. Templeton)は9月5日、都内で会見し、買収した仮想化ソフトウェアベンダ、XenSourceについて「データやロジック、アプリケーションなどのコンポーネントをビジネス要件に応じてリアルタイムで組み立てられる環境が求められている。そのためにどうしても必要なピースは仮想化技術だ。シトリックスにとっては仮想化技術の幅広い品揃えを持つことが重要だった」と話した。

 XenSourceの買収でシトリックスはサーバ仮想化市場に参入することになる。シトリックスはPresentation Serverによるアプリケーション仮想化やデスクトップ環境の仮想化をすでに手がけていて、今回の買収で「デスクトップからアプリケーション、サーバまでシトリックスの製品がカバーできることになる」(テンプルトン氏)。同氏はサーバ仮想化の市場を10億ドルと評価。さらに今後、年間80%の成長を続けると指摘した。XenSourceがオープンソースプロジェクトで開発されるハイパーバイザー型の仮想化エンジンを組み込んでいることや、すでにマイクロソフトと良好な関係を維持していることなどを挙げて「買収しないわけにはいかないほどのすばらしい機会だった」と話した。

citrix01.jpg 米シトリックス・システムズのCEO マーク・テンプルトン氏

 シトリックスは今後、XenSourceの「XenEnterprise」などの仮想化ソフトウェアを販売し、サーバ統合を企業に提案していく。しかし、微妙なのはマイクロソフトやオープンソースプロジェクトとの関係だ。主力のPresentation ServerがマイクロソフトのWindows Terminal Serverと連携して稼働していることからも明らかなように、シトリックスにとってマイクロソフトは最重要のパートナーだ。そのマイクロソフトは次期サーバOS「Windows Server 2008」にハイパーバイザー型の仮想化技術「Viridian」を組み込むことを計画している。つまり、仮想化技術ではシトリックスとマイクロソフトはライバル関係になるわけだ。

 では、シトリックスはマイクロソフトと対立するのかというとそうではない。テンプルトン氏は「Viridianで実行される製品も計画している」と語り、マイクロソフトの仮想化環境で稼働する仮想化製品の計画を明らかにした。サーバ統合の仮想化エンジンとしてはXen仮想化エンジンのほかにViridianもサポートする考えで、マイクロソフトとの連携を強調した。買収前のXenSourceもマイクロソフトと提携し、相互運用性の向上で協力するとしていた。さらに、仮想化プラットフォームとしては「客観的に見てWindowsにより大きなオポチュニティがある」と指摘し、Windows環境を重視することを説明した。

 Xen仮想化エンジンを開発しているオープンソースのXenプロジェクトとの関係も微妙だ。テンプルトン氏はXenプロジェクトについて「シトリックスはファンディングを加速させてエンジンの性能、信頼性を増すように協力する」と話したが、一方で「プロジェクトをもっとフォーマルで、形の整ったものにしていく。主要な協力者と話をしている」とも語り、新たな関係を築く考えを示した。Xenプロジェクトの開発者とXenSourceの開発者は重なっている。Xenプロジェクトの独立性を高めることで、XenSourceを飲み込んだシトリックスが動きやすくなることを狙っているようだ。

(@IT 垣内郁栄)

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