複数サーバをクラスタ化して単一の仮想メモリを実現

オラクル、メモリ・データグリッド新製品発売

2007/09/05

oracle01.jpg 日本オラクル 常務執行役員 システム製品統括本部長 三澤智光氏

 日本オラクルは9月5日、「Oracle Fusion Middleware」の最新コンポーネントとしてインメモリ・データグリッド製品「Oracle Coherence 3.3」を9月11日から販売すると発表した。Coherenceは米オラクルが6月に買収した、米タンゴソルの同名の製品を新たにオラクルがミドルウェアに取り込んで販売するもの(参考記事:急成長中のデータグリッド製品“Coherence”が日本に上陸)。大量のトランザクションを高速に処理するための、新しいアーキテクチャを実現した「エポックメーキングな製品」(常務執行役員 システム製品統括本部長 三澤智光氏)という。

 CoherenceはJavaが稼働するサーバで利用でき、BEA WebLogic、IBM WebSphere、Tomcat、JBoss、.NET Frameworkなどに対応する。独自プロトコルを用いて複数サーバをクラスタ化し、異なるマシン上に実装された物理メモリを単一の仮想的なメモリとして利用するためのソフトウェア。アプリケーションサーバから、データベースやストレージのリード・ライトのトランザクションで発生するオブジェクトデータをキャッシュすることで大幅にレスポンスを高速化する。メモリグリッド内のオブジェクトデータは、常に二重化されているため、特定のCoherenceサーバに障害が発生しても、システムを停止することなく復旧できる。また、稼働中のシステムに対して動的にサーバを追加することもできる。

 現在、Webサービスなどで大量のトランザクションを処理するには、通常、Webサーバやアプリケーションサーバを並列してロードバランサで処理を振り分ける構成を取り、可用性と信頼性向上のためにアプリケーションサーバノード間で処理中のセッションデータのレプリケーション処理を行っている。このため、アプリケーションサーバの処理能力は半減するほか、ノード間のキャッシュの整合性を取るための仕組みを独自に構築する必要があり、コスト増につながっていた。また、肥大化するアプリケーションでは、Java VMのヒープサイズを超えるケースも出てきていることが問題だった。

 データベースやストレージとアプリケーションサーバの間に、新たに“ミドルウェアグリッド層”としてCoherenceを導入することで、アプリケーションサーバからレプリケーション処理を切り離すことができる。

oracle02.jpg Coherenceで実現する次世代のアーキテクチャ
oracle03.jpg 高可用性を実験するためのオンライン販売サイトのデモンストレーション。稼働中のデータベースを停止しても、サービスは継続している。右上のデータベースのトランザクションが0になった後も、注目を受け付けるスループットは変わっていない。これはCoherence上にキャッシュされているからで、データベースを再起動したときに、未処理のデータはデータベースにライトバックされる

 すでに米国では、フェデックス、デルタ航空、メイシーズなど、Webサイト上でコンシューマ向けサービスを展開する企業での導入事例がある。ネット旅行予約大手のHotwire.comでは、予約料金をルールベースで動的に計算する必要があるため、ユーザーによる1回のクエリに対して1300〜1500のトランザクションが発生するが、Coherenceの活用でレスポンス時間を1秒にまで短縮できたという。単一のアプリケーションから大容量のメモリを確保できるため、金融、科学計算んどのコンピューティング・グリッドでも活用事例がある。データを仮想化できることでアプリケーションの記述が容易になるほか、ディスクストレージから、必要となるたびにデータをロードして計算していたような処理は劇的に高速化されるという。

 現在、Web 2.0や複雑化する金融商品など高負荷のトランザクションへのニーズが高まっているが、「今後、SOAが普及してWebサービスやコンポジットアプリケーションの数が増えたときに、Coherenceを用いたデータ参照は有効」(三澤氏)とし、Coherenceは同社の製品ラインナップのなかで重要な役割を担うことになるという。

 米オラクルによる米タンゴソルの買収前に、国内では2月から日本インサイトテクノロジーが販売を行ってきた。オラクルは同社とパートナー契約を結び、今後も協業を進める。またパートナー企業を含めて社内外で2、3カ月中に50人のエンジニア教育を行い、ソリューション提供を進めていく。価格は1プロセッサ当たりでスタンダードエディションが50万円、エンタープライズエディションが125万円、グリッドエディションが250万円など。

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(@IT 西村賢)

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