ソフトウェア機能の充実で差別化

中堅企業の“ど真ん中”を狙うネットアップの新ストレージ

2007/09/07

 日本ネットワーク・アプライアンス(ネットアップ)は9月7日、同社の「FAS」ストレージシリーズにおけるエントリレベル製品群をリニューアルし、中堅企業向けの戦略的製品として発表した。ネットアップのいう「中堅企業」とは従業員100〜1000人規模の企業。同社にとってエントリレベルの製品群とはいえ、多くの企業をカバーできることになる。日本では特にDASがまだ多く残っていることから、新製品は特に日本市場で伸びる可能性が高いとし、米国における発表に先駆けての国内発表となった。

 新製品「FAS2020」「FAS2050」から成る「FAS2000」シリーズは、これまでの「FAS250」「FAS270」に代わり、同社にとって最下位の製品ラインとなる。より正確には、FAS2020がFAS250、FAS270の後継となり、FAS2050は従来の「FAS200」シリーズと、より上位の「FAS3000」シリーズの間のギャップを埋める位置付けになるという。つまり、「FAS2020」は従来の製品と同レベルの価格からスタートできるが、拡張性や信頼性機能は大きく向上する。最大容量はFAS250、FAS270がそれぞれ4.2TB、16TBであるのに対し、FAS2020とFAS2050はそれぞれ24.6TB、69TB。また、FAS2000シリーズでは2機種ともデュアルコントローラ搭載モデルを用意している。

netapp01.jpg 米ネットアップ 上席副社長 リッチ・クリフトン氏

 新製品で特徴的なのはSASのサポート。「FAS200」シリーズではSASドライブに対応していなかったが、今回はメインシャーシ内蔵ドライブ用の内部インターフェイスをSASとし、ファイバーチャネルやSATAのディスクドライブは拡張ユニットでサポートしている。外部インターフェイスとしてはファイバーチャネルSAN、iSCSI、NASプロトコル(NFS、CIFS)に対応する。

 SASへの対応の意味について米ネットアップ 上席副社長兼ネットワークストレージ事業部門ジェネラルマネージャー リッチ・クリフトン(Rich Clifton)氏は@ITの取材に答え、「新製品はSASのために出すのではない。当社のエントリ製品群は長らく更新されておらず、リニューアルを必要としていた。その際に最新の技術を取り込んだということ」と話した(FAS200シリーズは2003年9月下旬に発表された)。

 FAS2020が直接競合するのはEMCでは「CX3-10」、HPでは「MSA1500cs」、FAS2050が競合するのはEMCでは「CX3-20」、HPでは「EVA4000」シリーズ。ネットアップでは同社のストレージ製品群がFAS2000シリーズも含め、単一のOSに基づいていること、さらにFAS2000シリーズではRAID6を標準サポートし、低負荷のスナップショット・コピー機能、シン・プロビジョニング、データの重複排除機能を提供できるほか、NASプロトコルをサポートするなどソフトウェア機能に優れているとしている。

 全ストレージ機器に共通なソフトウェアを、標準搭載だけでなくオプションとして用意していることは、中堅企業市場においてもネットアップの売り上げを押し上げる重要な要因になっているとクリフトン氏は話す。「例えばMicrosoft ExchangeやOracle Databaseなどの(無停止バックアップを可能にする)SnapManagerなどは、中堅企業のミッションクリティカルシステムにも大きく貢献できる」。こうしたソフトウェア機能はまた、低価格なローエンドストレージ製品との差別化にもつながっているという。

 ストレージのソフトウェア機能におけるネットアップの強みを強調するクリフトン氏だが、同社は現在のところ、情報管理などのソフトウェア分野に参入するつもりはないと語った。「ストレージ市場はまだまだ限界に達していないからだ。例えばテープによるバックアップがディスクに置き換わることで、今後も膨大な事業機会が見込める。ほかにもD to Dバックアップやストレージの仮想化など、顧客ニーズにフォーカスすることで、ストレージ市場全体の伸びが低くとも高い成長率を保っていくことができる」とクリフトン氏は話した。

(@IT 三木泉)

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