大手ベンダ参入でお墨付き

Enterprise 2.0の本命はマイクロソフトという説

2007/09/12

 マイクロソフトは「Enterprise 2.0」や「Office 2.0」に対応できるほど先進的ではないのではないか、あるいはそこまで成熟していないのではないかと疑問視する人は多いようだ。

 しかしアナリストらによると、マイクロソフトをはじめとする大手ITベンダがこの分野に参入すれば、ソーシャルネットワーキングなどの技術が企業に受け入れられるのに必要な市民権が与えられる可能性があるという。

 カリフォルニア州バークリーにあるEnterprise Applications Consultingの主席アナリスト、ジョシュア・グリーンバウム氏は、ブログ、Wiki、ソーシャルネットワークといったEnterprise 2.0技術がIT部門のお墨付きを得て企業に進出するという動きは、大手ベンダがこの分野に参入することで本格化するかもしれないと指摘する。

 「Enterprise 2.0のムーブメントは、1980年代のPC革命を彷彿とさせる。あのときは、従業員が生産性を改善するために、こっそりと社内にPCを持ち込んだ。PC革命はこのようにして始まったのだ」とグリーンバウム氏は語る。

 「PCに市民権を与えたのは、(Apple創業者の)ジョブズ氏やウォズニアック氏ではない。IBMが参入したことで市民権を得たのだ。 Office 2.0の分野でも、マイクロソフト、オラクル、IBM、SAPといった企業が本格参入することで状況が一変するだろう」(同氏)

 大手アプリケーション/インフラベンダの中でも、現時点でこの分野に本格的に取り組んでいるのがマイクロソフトとIBMだ。 マイクロソフトのSharePoint Serverは、パートナーとの提携などを通じてブログ、Wiki、ソーシャルネットワーキングをサポートしている。一方、IBMはこの分野でLotus Notesのほか、Quickrなどの補助的製品を提供している。

 グリーンバウム氏によると、マイクロソフトはEnterprise 2.0(Office 2.0)技術に向かう波を生かせるチャンスが大きいという。これは主として、同社が各種機能を無償で提供できるという理由による。また同社の場合、SharePointのように、より大型の製品にバンドルするという方法もある。

 IT市場調査会社、Directions on Microsoftのアナリスト、ロブ・ヘルム氏は、昨年10月にリリースされたSharePoint Serverの最新版では、多数のソーシャルネットワーキングツールのサポートが追加されたと指摘する。「彼らは、この分野でやや不意を突かれた感があるが、がんばってサポートを組み込んだ」とヘルム氏は話す。

 「マイクロソフトはSharePoint Serverの1機能として、Knowledge Networkというコードネームで呼ばれるソーシャルネットワーク技術を検索に利用しようと考えていたが、SharePoint Server 2007リリースには間に合わず、機能リストから外された。2009年ごろに予定されている次期リリースには間に合いそうだ」(同氏)

 ヘルム氏によると、Knowledge Networkは基本的に、電子メールなどによるユーザーのやり取りを観察することによって社内における彼らの関係を推測し、その情報を検索機能の改善に利用するという。「問題はプライバシーだ。ユーザーの電子メールまで監視する必要が本当にあるのかということだ」と同氏は指摘する。

 さらにマイクロソフトは、Enterprise 2.0ムーブメントに関連した2つのオンデマンド構想を推進している。その1つが「Office Live」で、これは中小企業向けのホステッドサービスとしてWeb上でSharePoint Serverを提供する。

 企業ユーザーをターゲットにしたもう1つの構想は「Microsoft Managed Services」と呼ばれるサービスで、ヘルム氏によると、これは電子メールとSharePoint Portal Servicesをホストしており、近いうちに音声もサポートする見込みだという。「マイクロソフトは現在、音声のサポートに向けて一部の顧客と共同で取り組みを進めている。長い目で見れば、同社自身が主要アウトソーサーとしての地位を確立する可能性がある」とヘルム氏は話す。

 Forrester Researchのアナリスト、ロブ・コプロウィッツ氏によると、マイクロソフトはEnterprise 2.0の基本コンセプトをSharePointに追加する方向に進んでいるが、機能的に不備のある分野もあるという。「マイクロソフトはかなり多くの Enterprise 2.0機能を開発し、これらを主としてSharePointに組み込んだ。彼らはあらゆる機能を提供しようとしており、その意味では正しい方向に進んでいる。しかし専業ベンダの優れた製品の組み合わせと比べると、同社のブログやWiki機能は必ずしも先進的とは言えない」とコプロウィッツ氏は指摘する。

 短期的には、専業ベンダ各社の製品の機能の方が、専門性の強みという優位性を発揮できるかもしれない。しかし、企業(特にIT部門)がコンテンツを管理下に置く手段を求めるようになるのに伴い、マイクロソフトなどの大手ソフトウェア/インフラベンダが有利になる可能性がある。

 「マイクロソフトの場合、同社の価値提案を魅力あるものにする要素がいくつかある。プロフィールであろうと、ブログあるいはWikiであろうと、いずれもコンテンツを作成するものであるため、企業はこういったコンテンツを厳格にコントロールし、きちんと管理したいと思うようになるだろう。それがSharePointの基本コンセプトの1つである。IT部門がSharePointでコンテンツを管理できるというのは、企業がSharePointを選択する大きな理由になるだろう」とコプロウィッツ氏は語る。

 コプロウィッツ氏によると、マイクロソフトは自社で提供していない機能については、他社との提携やエコシステムの活用という形で対応しているという。例えば、RSS/タギング分野ではNewsGatorと、エンタープライズWiki分野ではSocialTextと提携している。

 とはいえ、マイクロソフトにはアプリケーションベンダおよびインフラベンダとの厳しい競争が待ち受けている。コプロウィッツ氏によると、最も総合的な製品を提供しているのはLotus Notesを擁するIBMだが、BEAシステムズ、オラクル、SAPもそれぞれ興味深いアプローチで臨んでいるという。これらの各社は、ソーシャルネットワーキングをインフラレベルに組み込むのを支援するアプリケーションサーバを提供している。

 「つまり、人間の関与が必要なビジネスプロセスに自分自身を含めることができるのだ。こういった新タイプのソーシャルコンピューティングでは、チームを編成する、ソリューションを見つける、決定や結果を文書化する、その決定を基盤プロセスに組み込み直す、といったことが可能になる」とコプロウィッツ氏は話す。

 「SAPのアプリケーションやオラクルのアプリケーションを購入する場合には、この種の機能をあらかじめ組み込んでもらうことでプロセスの整合性を維持できれば非常に素晴らしい」(同氏)

原文へのリンク

(eWEEK Renee Boucher Ferguson)

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