既存システム、外部システムと容易にマッシュアップ

「社内にSaaSを」、WebメールのZimbraが日本で本格始動

2007/11/14

 「Gmailの弱点は、すべての顧客データをグーグルに預け入れなければならない点。そこが競合としてのわれわれの訴求点になる」。そう話すのは、Ajaxを使ったWebコラボレーションツール「Zimbra」(ジンブラ)の日本での事業展開を本格化する住友商事 ITソリューション事業部 部長代理の佐藤誠之氏だ。ZimbraとGmailの最大の違いは、ZimbraはSaaSで提供するだけでなく、ISP、xSP、SaaSなどの事業者に対してライセンス販売していくことだという。Gmailに対抗できるサービスを検討しながらも自社でサービスを用意できない事業者にとって自社展開がしやすいというメリットがある。また、一般企業で導入した場合はユーザーのデータをグーグル側に保存しない点やSIがやりやすいのが魅力という。

zimbra00.jpg 米Zimbra 社長兼CTOのスコット・ディーツェン(Scott Dietzen)氏と住友商事 ITソリューション事業部 部長代理の佐藤誠之氏

 すでに2007年2月には、フィードパスがZimbraライセンスを取得。「Feedpath Zebra」のブランド名でSaaSビジネスを展開している。住友商事はフィードパスに35%出資しており、「フィードパスの例を早期導入ケースとして、類似の事例を増やしていく」(佐藤氏)という。

 一般企業向けにもライセンス販売を行う。メールデータをグーグル側に置くことを躊躇する企業に対して「既存の業務システムと連携するようSIをした上で、社内でSaaSをすることに興味がある大企業に採用してもらえれば」(佐藤氏)としている。企業向けの採用例として佐藤氏は、大日本印刷が2万7000人規模のNotesユーザーをZimbraに移行した案件を挙げる。住商情報システムがSIerとして参加して実現した。Ajaxベースの使いやすさ、コンプライアンス強化、社内外のサービスとの連携(マッシュアップ)が評価されたのではないかという。

 Zimbraには“Zimlet”(ジムレット)と呼ばれる仕組みがあり、既存システムや既存Webサービスとの連携が容易だ。Zimletは、メール本文内に特定の条件に当てはまる文字列があった場合に、それを自動認識して関連するWebサービスを呼び出す仕組み。例えば、URLを認識してWebページをサムネイル表示したり、住所の文字列から地図を表示する、日付文字列から予定を表示する、などは標準Zimletとして提供されている。このほかSkype連携やWikipedia連携、エキサイト翻訳との連携なども可能であるほか、自社の既存業務システムと連携することで、型番文字列から詳細な製品情報を得る、ユーザーIDからCRMと連携して顧客情報を表示するといった拡張もできる。

 米Zimbraは米ヤフーに2007年9月に買収されているが、その目的は「法人と学校関係のユーザーにリーチしていくこと」(佐藤氏)。住友商事は日本国内でも学校関係の市場を開拓していく意向だ。関東学院大学の事例ではSIを行ったネットマークスが、1万5000人のユーザーに対してZimbraサーバのホスティングも行う。SaaSとパッケージソフトウェアの折衷型ともいえるモデルだ。

 Zimbraのコアは「Zimbra Collaboration Suite」と呼ばれるサーバサイドのアプリケーション。コアとなるサーバはJavaで書かれており、Apache Tomcat、Postfix、MySQL、OpenLDAPなどオープンソースのソフトウェア環境で動く。Zimbra自体もオープンソースベースで開発されている。

 クライアントとしてはWebブラウザのほか、ファイルのドラッグ&ドロップが可能な専用クライアント、Outlook、Appleデスクトップ、汎用メールソフト、iPhoneやPalm、Symbian、Windows Mobileを含む携帯端末に対応する。2007年12月には最新版となるZimbra 5.0のリリースが予定されており、各種インスタントメッセージが統合されたほか、オフライン作業が可能になるという。

zimbra01.png ZimbraのWebメール
zimbra02.png Zimbraのカレンダー
zimbra03.png Zimletの例。日付を示す文字列を認識して予定表からデータを取り出して表示している
zimbra04.png 画像やスプレッドシートを埋め込んだドキュメントを扱うこともできるという

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(@IT 西村賢)

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