2010年の枯渇時期が1つの節目

IPv4アドレス枯渇で突如脚光を浴びるIPv6

2007/12/11

 IPv6はこれまで、いつ普及期が来るのかと疑いの目を向けられがちだった。しかし急速な消費が進むIPv4アドレスの枯渇が今年に入り危急の問題として認識されるようになり、その解決策として改めて取り上げられようとしている。12月11日に東京都内で開幕した「Global IP Business Exchange/IPv6 Technical Summit 2007」(12日まで)では、迫りつつあるIPv4アドレスの枯渇への対応策が、さまざまな角度から議論された。

 IPv4アドレス枯渇問題については、JPNICが12月7日に公表した「IPv4アドレス在庫枯渇問題に関する検討報告書(第一次)」に詳しく述べられている。IPv4アドレスは日本の場合、世界のIPアドレスを最終的に管理するIANA(Internet Assigned Numbers Authority)からまずアジア太平洋地域のRIR(地域インターネットレジストリ)であるAPNICに対して少しずつ割り当てられ、この割り当て分のなかからさらに日本を管轄するJPNICに対して割り当てが行われ、大手ISPなどの「IPアドレス管理指定事業者」へ割り当てられ、そのユーザーへ貸し出される。

 独自の指標による予測では、IANAでIPv4アドレスの在庫がなくなるのが2010年、全RIRのアドレス在庫が枯渇するのが2011年とされている。IPv4予測で知られるAPNICチーフサイエンティスト、ジェフ・ヒューストン(Geoff Huston)氏はIANAレベルで2011年の枯渇を予測しているので、1年の違いということになる。「いずれにしろ現在、世界で毎年/8(約1600万個。クラスAに相当)のブロック10〜13個が消費されている。数年後に枯渇するのは間違いがない」(JPNIC理事などを務めるインテック・ネットコア 代表取締役社長 荒野高志氏)

ipv601.jpg 討論に参加した総務省 黒瀬泰平氏、NTTコミュニケーションズ 野村雅行氏、ソフトバンク 牧園啓市氏、インテック・ネットコア 荒野高志氏(左から)

 新規割り当てのためのIPv4アドレスがなくなっても、すでにIPv4アドレスの割り当てを受けている事業者やユーザー組織は即座に影響を受けるわけではない。しかし新規参入事業者がサービスを展開できない事態が発生し得る。既存事業者も顧客に対し、新アドレスの割り当てができなくなる。

 これに対し、「過去に大きなブロックの割り当てを受けていて、利用していない組織からアドレスを何らかの形で回収して再分配すべき」との議論がある。しかし、JPNIC IP事業部長の前村昌紀氏は、レジストリとしてこの選択肢を継続的に検討すべきとしながらも、現実的には問題が多いと話した。以前のIANAからの割り当ては、契約があいまいで回収の根拠も乏しいほか、「再分配でアドレスが細分化され、経路制御の負荷が増大する恐れがある。また、必要なときに必要な量を供給できる見通しが立たない」(前村氏)。/8が毎年13ブロックも新規に必要とされている状況で、仮に/8を10ブロック分回収・再分配できたとしても、アドレス枯渇を1年先延ばしにするに過ぎない、というのだ。

 別の対策として、ケーブルTVインターネット事業者の一部が行ってきたように、接続事業者はユーザーのプライベートIPv4アドレス化を推し進めることでグローバルアドレスの消費を抑えるということも考えられる。しかしNATの利用によってアプリケーション利用に制限が出る、拡張性に不安が残る、この場合でも新規事業者は少数のグローバルアドレスが必要、といった問題がある。

 結局、永続的な解決策として期待できるのはIPv6しかない、ということになる。NTTコミュニケーションズの代表取締役副社長 法人事業本部長 野村雅行氏はこうした状況を踏まえると、「IPv4のままだとコストがかかるようになる。IPv6対応はリスクヘッジとして重要」と話した。通信関連のソフトウェア開発でも、「減価償却期間内にアドレス枯渇時期が来る」ことから、IPv6への対応が重要になっていると述べた。

(@IT 三木泉)

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