外に出ようとしない日本企業と日本の若者

日本は人材もガラパゴス化、NRI

2007/12/14

nri01.jpg 野村総合研究所 コンサルティング事業本部 情報通信・金融戦略担当部長 吉川尚宏氏

 「強い肉食動物がいないガラパゴス諸島では、種間の生存競争はいわば『ぬるま湯』状態。現在の日本はそんな状況に似ているのではないか」。そう問いかけるのは、野村総合研究所(NRI)コンサルティング事業本部 情報通信・金融戦略担当部長の吉川尚宏氏だ。

 極端なまでの内需依存で海外志向に乏しい日本の産業界に危機感を募らせる声が高まっている。日本企業は“ガラパゴス化現象”と呼ぶべき隘路に迷い込んでいるのではないか。

 国内でしか通用しない独自仕様の商品、保護されないと生きていけない国際競争力の欠如、国内市場縮小から一部の産業では絶滅のおそれ、とガラパゴス諸島の生物によく似ている。大陸から離れた孤絶した環境で独自の生態系を育んだガラパゴス諸島では、生物種も独自の進化と多様化を遂げた。現在、日本の携帯電話メーカーの国際シェアは全社合わせても9%程度にとどまり、ノキア(30.9%)、モトローラ(18.1%)、サムスン(11.8%)などグローバルに事業を展開するメーカーの後塵を拝している。上場企業の海外売上高比率は製造業では全業種平均20.2%だが、非製造業では10.6%に過ぎず、「非製造業のグローバル化の遅れは顕著」(吉川氏)だ。

 技術でもサービスでも最先端を行く日本の携帯電話市場は、世界の潮流から離れた地点で独自進化を遂げている。一方で、BRICsをはじめとするアフリカ、アジアなどの新興国市場では携帯電話ビジネスが急速に立ち上がっているが、そこに日本メーカーの影はない。日本の端末が、国際的に標準として使われるGMS方式を採用していないためだ。

 ガラパゴス諸島のリクイグアナを見て、かつてダーウィンは「……醜い動物で、下は黄色っぽいオレンジ、上は赤茶色、低い顔面角から異様に馬鹿面に見える」と『ビーグル号航海記』のなかに記した。海外から見れば、日本のケータイ市場は、まさにそう映っているのかもしれない。

 今後、1人当たりのGDPが3000ドルから5000ドルに層に入ってくる新興国市場では海外製品の購買者が増えていく。逆に日本ではすでに始まっている人口減少に加えて、いまのところ増加傾向にある世帯数も2015年に5048万世帯でピークアウトし減少に向かうなど「内需の限界がくる」(吉川氏)。こうしたことから、吉川氏は2015年までに日本企業は「脱ガラパゴス化現象」が必要だと説く。

 脱ガラパゴス化現象のカギは、デファクトスタンダード。「基準、標準、ルール作りにもっと関心を持つべき」(吉川氏)という。会計基準、工業規格、環境基準、農業規範など、足下のASEAN諸国でも欧州発のものが日本発のものより優先されるなど、日本の存在感は薄れている。

 こうした環境下、NRIが2007年8月に行ったアンケート調査は、さらにネガティブな材料を企業経営者に投げかける。自分または配偶者が海外勤務することに対して「抵抗がある」「どちらかといえば抵抗がある」と否定的な回答をした割合を年代別に見ると、「予想に反して右肩下がりのグラフになった。年齢が上がるほど抵抗感が少なかった」という。吉川氏は「海外渡航者数の推移を見ても20代だけ3年連続で減っている。人材についても日本人は草食動物化、ガラパゴス化しているのではないか」と話す。飲食業大手のロッテは、日韓ともに多くの人材を抱えているが、海外進出を担当するのは韓国人が大半という。

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 非製造業で内向き志向を変えていくという意識改革が急務であるのは間違いないが、吉川氏のもう1つの処方箋は人材登用のグローバル化だ。日本の若年層の保守化、海外勤務敬遠志向が強まっている以上、企業にとって外国人を含めたグローバルなリーダー育成が重要な課題だという。

(@IT 西村賢)

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