エリクソンとレノボが協業を発表

2011年にHSDPA搭載ノートPCの出荷台数は1億台、エリクソン

2008/02/05

 エリクソンとレノボは2月4日、第3.5世代携帯電話に相当するHSPA(High Speed Packet Access)通信モジュールをThinkPadの一部のシリーズに搭載していくことで合意したと発表した。HSPAは日本国内でHSDPAの名称で呼ばれているダウンリンクとアップリンクの速度が非対称の通信規格の総称。HSPAは下り最大14.4Mbps、上り最大2.0Mbpsまで規定されているが、今回、ThinkPadに搭載されるエリクソン製のHSPAモジュールは、当初上り最大7.2Mbps、下り最大2MbpsのHSPAをサポートする。またHSPAのほかGSM、GPRSO、EDGEにも対応する。

lenovo01.jpg エリクソンが発表したHSPA対応通信モジュール

 エリクソンは、2011年におけるノートPCの出荷予測である2億台のうち、半分の1億台程度がHSPAモジュールを組み込んだものになると見ているという。

 業界団体のGSA(The Global mobile Suppliers Association)のよれば、HSPAが利用可能なネットワークを利用しているユーザーの数は10億を超える(参考リンク)。

 現在75カ国、166の事業者がHSDPAのサービスを行っているが、これはHSPAの元となった第3世代携帯電話のWCDMAによるサービスを行う事業者のうち84%に相当するという。より高速な下り7.2MbpsのHSDPAサービスについてもHSDPAサービスのうち24カ国で35事業者が、すでにサービスを展開している。これはHSDPA事業者のうち約21%に当たる。日本国内ではイー・モバイルが2007年3月からHSDAPを使った高速モバイル通信サービスを開始。12月からは7.2Mbpsに対応している。

 日本国内では2007年にHSDPAモジュールを搭載したノートPCが2つ登場した。

 1つはレノボ・ジャパンが2007年7月に発表したThinkPad X61/X61sで、KDDIのWIN対応通信モジュール搭載モデルをリリースした(参考記事:レノボとKDDI、WIN対応通信モジュールを搭載したThinkPad X61/X61sを発表【ITmedia +D モバイル】)。もう1つはダイアローグ・ジャパンが2007年9月に発表した「Flybook」シリーズで、やはりKDDIのWIN対応通信モジュールを搭載している(参考記事:日本でもようやく本領発揮か――CDMA 1X WIN対応FlyBookが離陸【ITmedia +D モバイル】)。

 すでに各国の3GキャリアはWCDMA網に多額の投資を行っていて、ユーザー数も多い。また、本田雅一氏がPC Watchの連載で伝えるところによれば(参考記事:CDMA1x WIN内蔵のThinkPad X61sを試す【PC Watch】)、国内のPCメーカーはノートPCへのHSDPA搭載に積極的だという。一方、次世代高速無線通信規格の真打ちと見られるWiMAXは、まだほとんどの地域で準備段階に過ぎない。WiMAX対応サービスが始まるのは日本国内では早くても2009年。MVNO事業者を含めたキャリアやPCベンダの出方次第ではWiMAX搭載ノートPCよりも先に、第3.5世代のHSDPAモジュール搭載ノートPCが普及する可能性が出てきたと言えそうだ。

 HSDPAがWiMAXよりもビジネス面で先行することになれば、WiMAX陣営にとっては痛手となる。HSDPAの次に控えている第4世代携帯電話規格の「LTE(Long-Term Evolution)」はOFDM-MIMO採用していて技術的にはWiMAXとほぼ同等だが、Evolution(進化)という名称が示すとおり既存のインフラの自然な拡張となっているからだ。通信インフラ・ソリューションベンダはWiMAXとLTEは「相互に補完するもの」(参考記事:WiMAXとHSPAは補完関係になる【ITmedia +D モバイル】)と説明してキャリアに下駄を預けている形だが、サービスを提供する事業者から見れば競合技術だ。WiFiに続いてWiMAXへ移行する――それがインテルを中心としたPCベンダや一部のキャリアが描いたシナリオだったはずだが、今回のエリクソンとレノボの協業に追随してPCベンダが一斉にHSDPA搭載に走れば、次世代高速無線通信の勢力図に大きな影響が出るのは必至だ。

(@IT 西村賢)

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