「印刷著作物の価値に革命」

無線ICタグで印刷著作物の違法コピーを管理、日立などが実験

2008/02/15

 日立製作所、日立システム九州、リコー、ゼンリンの4社は2月15日、無線ICタグを付けた書籍などの印刷著作物と、無線ICタグのリーダを搭載したデジタル複合機を組み合わせて、企業による複写利用を管理するシステムを開発、その実証実験に成功したと発表した。複合機のリーダが著作物の無線ICタグを読み取り、コピーのログを記録。著作物の種類やコピー枚数に応じて課金するシステム。ゼンリンの経営企画室 浦川英明氏は「このシステムは印刷著作物の価値に革命を起こす」と話し、複合機メーカーや出版社、著作権管理団体とこのシステムを利用するコンソーシアムを設立する考えを示した。

 書籍や雑誌、新聞、地図などの印刷著作物をコピーして商業利用するには著作者の許諾が必要。しかし、許諾のプロセスは著作権者によってバラバラで、現状は無断でコピーして使われることが多い。

 4社が開発したシステムは無線ICタグを使って印刷著作物の複写を管理する仕組み。具体的には著作物に日立製作所の0.4ミリ角の無線ICタグ「ミューチップ」とアンテナを貼付する。リコーの複合機につなげたリーダに無線ICタグをかざして情報を読み取らせた後に、必要な枚数をコピーする。著作物の種類やコピー日時、枚数などが複合機にログとして保存される。後日にログを取り出して集計し、著作権者に対価を支払う。出力した用紙に電子透かしを入れて、複写物からの2次、3次コピーでも元の著作物が補足できる技術も開発した。浦川氏によるとこのシステムは「3年くらい前に検討を始めた」という。

 実証実験は2007年11月20日から2008年1月21日まで、西日本シティ銀行 北九州営業部と三井住友銀行 北九州支店に、システムに対応した複合機を設置。ゼンリンの住宅地図の背表紙に無線ICタグを貼付し、コピー枚数を管理できるようにした。実証実験では、システムが正常に動作し、ログを取得し集計できることを確認。しかし、無線ICタグを複合機のリーダに読み取らせ、「コピー」ボタンを押してから、実際に出力されるまでの時間は20〜30秒と時間がかかり、今後の課題となった。

rfid01.jpg 無線ICタグを使った複写利用管理システムのデモンストレーション。無線ICタグを背表紙に内蔵した住宅地図をリーダにかざし、情報を読み取らせる。その後パネルで操作してコピーする
rfid02.jpg 複合機につなげた無線ICタグのリーダ

 リコーの既存の複合機に無線ICタグのリーダを取り付け、専用アプリケーションを導入するには10万円前後が必要となるが、現状ではリーダに無線ICタグを読み取らせなくてもコピー可能。そのため、このシステムを実運用するにはリーダを複合機に内蔵して、印刷著作物をコピーする場合は必ずリーダで情報を読み取れるようにするなどの対策が必要がある。

 ゼンリンなどの地図情報出版社は、ポータルサイトに一般地図を公開し、エンドユーザーに無料で見せているが、高付加価値な住宅地図は無償公開していない。ゼンリンの住宅地図は地区別で、1冊当たり1万〜2万円。ゼンリンはコンビニエンスストアの複合機で住宅地図を1枚300円で出力できるサービスも行っているが、「媒体としてはいまは圧倒的に紙の地図の利用が多い」(浦川氏)といい、著作権を保護するために「スピーディな著作権を守れる態勢を作るのがベストだ」と説明した。

 4社はほかの複合機メーカーや出版社、ITベンダ、著作権管理団体に声をかけてこのシステムを推進するためのコンソーシアムを設立する方針。造本段階で書籍に無線ICタグを付けることを検討している日本出版インフラセンターとも連携するとしている。

(@IT 垣内郁栄)

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