「港に忍び寄る霧」のように浸透か
「グーグルはエンタープライズを理解しようとしない」、ガートナー指摘
2008/04/10
「港に忍び寄る霧」のように、Google AppsがマイクロソフトとIBMを犠牲にして、企業へと浸透する可能性は十分にある――ガートナーのアナリスト、トム・オースティン氏はそう予測する。しかしグーグルは、ライバル企業のようにエンタープライズ市場のニーズに合わせることによってその狙いを達成しようとしているのではないと指摘する。
オースティン氏は4月9日、ラスベガスで開催された「ガートナー Symposium ITxpo」で行ったプレゼンテーションで、ガートナーが調査した企業の20〜30%が、Microsoft Office、SharePointやIBM Lotusに加えて無償Google Appsも利用していることを明らかにした。
オースティン氏は、この数字はマイクロソフトやIBMにとって脅威ではないだろうとしながらも、80%の大企業の80%のユーザーがGoogle Appsを使い始めたらどうなるだろうか? と指摘する。Google Appsを利用するユーザーが増えてくれば、マイクロソフトやIBMはソフトウェアライセンスの更新によって収益を確保するのが難しくなるという。
「顧客からGAPE(Google Apps Premier Edition)に関する問い合わせが増えている。彼らはこれを、マイクロソフトやIBMに対してソフトウェアの値下げを迫る手段として利用しようとしている」とオースティン氏は話す。
業界もグーグルとマイクロソフトとの間でエスカレートする戦いを注視している。両社は検索、オンライン広告、アプリケーション、そして巨大なクラウドコンピューティングの分野で競争を繰り広げている。
「その日限り」のロードマップ
マイクロソフトの研究チームは、「Dryad」というコードネームで呼ばれるクラウドOSの開発を進めているという。ガートナー Symposiumで4月9日に行われたマイクロソフトのクレイグ・マンディー最高研究戦略責任者のキーノート後のインタビューでも、この話題が取り上げられた。
グーグルは企業のニーズを理解していないとするマイクロソフトのビル・ゲイツ会長の主張に共鳴するオースティン氏は、「グーグルはエンタープライズ市場を理解していない」と指摘する。理解できないのではなく、理解しようとしないのだという。
同氏によると、例えば、マイクロソフトとIBMは5年間のロードマップを守秘義務契約の下で顧客に示しているのに対して、グーグルのロードマップは「その日限り」だという。
さらに同氏は、グーグルがAppsポートフォリオで何をやろうとしているのかをユーザーが把握するのにベストな方法は、DocsやGmailなどのアプリケーションに関する多数のグーグルのブログ記事を読むことだと指摘する。これらはほぼ毎週更新されるが、グーグルの動向を把握したいのであれば、4〜5カ月ほど記事の展開を追い続ける必要があるという。
「これがエンタープライズソフトウェアの主要ベンダーであれば、ユーザーは拒否反応を示すだろう。グーグルをエンタープライズベンダと考えるのはやめた方がいい。何十億人ものユーザーを対象としたグローバルクラスのサービスプロバイダーだと考えるべきだ」とオースティン氏は話す。
マイクロソフトのやり方には従わない
オースティン氏によると、Windows 95までエンタープライズソフトウェア市場での基盤獲得に苦労したマイクロソフトとは異なり、グーグルはロードマップを用意しないことが弱みではなく強みであると考えており、同社が従来のやり方を変える可能性は低い。しかしSLA(Service Level Agreement)および販売サポートについては改善が期待されるという。
さらに同氏は、「グーグルはAppsの別バージョンとして個別業界・業種向けの製品を投入する可能性もある」と予測する。
Appsは無償なので、グーグルはこのビジネスでは赤字か収支トントンというところだろう。Gmailではプログラム内の広告をユーザーがクリックすることによってグーグルは収入を確保するかもしれない。いずれにせよ、マイクロソフトを狼狽させ、同社を広告ビジネスから撤退させる手段になるのであれば、グーグルはこのビジネスで赤字になるのもいとわないだろう。
グーグルの狙いは高望みのようにも思える。ガートナーのデビッド・ミッチェル・スミス氏は4月10日に、グーグルがエンタープライズソフトウェアで成功するよりも、マイクロソフトがオンライン広告ビジネスで成功する可能性の方が高いという主旨の講演を行う。マイクロソフトがYahoo!の買収を狙っている状況を見れば、スミス氏の言うことが正しいのかもしれない。
(eWEEK Clint Boulton)
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