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エンタープライズでも採用が拡大

Ruby on Railsのスケーラビリティ強化製品、続々

2008/05/07

 その生産性に開発者から全幅の信頼を寄せられているRuby on Railsだが、人気の高いこのWebプラットフォームに対しては、高負荷に対応するスケーラビリティが低いという批判の声も多く出ている。そのような中で、単にRailsとも呼ばれるRuby on Railsの可用性を高めようと、一部の新興企業が事業を展開している。

 Ruby on Railsは、ベースになっているRuby言語と同じく、「Twitter」「Jobster」「Shopify」などのWeb 2.0アプリケーションで以前から利用されており、最近は多数のエンタープライズアプリケーションにも採用され始めた。だが、相応の成功を収めているにもかかわらず、Railsを使った開発プロジェクトはエンタープライズスケーラビリティの理想形を95%までは具現化できるのに、負荷の大きい環境でアプリケーションを使用するにはほかの言語の力を借りなければならないという苦言も、しばしば聞こえてくる。

 Medical Decision Logic(Mdlogix)の最高ソフトウェアーキテクト、スティーブン・ビーレス氏は、先進的な機能を備えつつ、見た目はシンプルなWebアプリケーションを開発するのに同社が使用しているツールの中で、Railsが最も生産的だと話す。もっともMdlogixは、エンタープライズ開発にもRailsを用いている。

 エンタープライズ組織が感じているRailsのスケーラビリティやパフォーマンスに関する不安を軽減する製品も、これから次々に登場する見込みだ。

 ベンチャーキャピタル企業Benchmark Capitalと同社のゼネラルパートナーであるピーター・フェントン氏が中心となり出資した、New Relicと呼ばれる新興企業は、Ruby on Railsアプリケーションのパフォーマンス管理問題を専門に扱っている。なおフェントン氏は、JBoss、Red Hat、MySQL、SpringSourceといった企業にも多額の投資をしてきた人物だ。

 New Relicは5月1日、最初の投資ラウンドでBenchmark Capitalから350万ドルを獲得したことを発表した。この資金は製品開発の活性化や販売およびマーケティングプログラムの拡大に費やされる予定で、フェントン氏も同社の取締役会に加わるという。

 New Relicがサブスクリプション形式で販売するRailsパフォーマンス管理ソリューション「RPM」は、開発者によるリアルタイムでのアプリケーションパフォーマンス問題検出、診断、修復を迅速に、かつ低コストで実現すると、New Relicは説明している。同SaaS(Software as a Service)は現在、限定的な顧客にプライベートベータ版として配布されているが、間もなくRuby on Railsコミュニティ全体に向けた一般提供が始まる見込みだ。

 New Relicの創設者であるルイス・サーニ氏は、Javaに対応した同種のソリューションを開発するWily Technologyを1998年に興している。同氏によれば、Javaがそうであったように、Railsも市場競争の流れを変えうる重要なテクノロジだという。Wilyはのちに、Computer Associatesに買収された。

 「批評家はしばしば、Railsはスケーラビリティに欠けており、ミッションクリティカルなアプリケーションの開発には不向きだと口にする。1990年代中ごろにJavaが受けていた評価と実によく似ている」(フェントン氏)

 問題を把握し、アプリケーションのスケーラビリティ向上を促すためには「ボトルネックを特定する必要があり」、New Relicの製品はまさにそのためのものだとフェントン氏は述べている。「New Relicが提供している洞察力に優れた監視機能は、負荷を増やさずに可視性を強化してくれる」(フェントン氏)

 Benchmarkのパートナーになってから最初に投資をした企業がサーニ氏のWily Technologyだというフェントン氏は、BenchmarkのRailsに対する注力の度合いは、1990年代のJavaに対するそれと比べても遜色はないと話した。「クラウドコンピューティングとRailsの組み合わせは、Java以上のスピードで浸透すると考えている」(フェントン氏)

 さらに同氏は、Railsが「開発者にもたらす変化の大きさ」はクラウドコンピューティングに比肩すると指摘している。

 一方サーニ氏は、「SaaSモデルを取り入れられたことをうれしく思う」と述べた。New Relicは、30〜60日以内に新製品をリリースするという。同社のプライベートベータプログラムには約50社の顧客が参加しており、各社は同製品を利用してRailsアプリケーションのスケーラビリティ向上に役立てている。同社はさらに、RPMの実働用バージョンを補完する開発者向けのソリューションを提供する予定だと、サーニ氏は付け加えた。

 サードパーティ企業も、Railsをよりスケーラブルなプラットフォームへ進化させる取り組みに力を入れている。

 Rails実装プラットフォームプロバイダのEngine Yardは4月29日、先日リリースされた、分散化バージョン管理システムの「GitHub」サービスと、人気の高いバグ追跡アプリケーション「Lighthouse」をサポートすることを明らかにした。Engine Yardのスケーラビリティの高いプラットフォーム上でGitHubおよびLighthouseをホスティングし、Rails開発者のソースコードとチケットトラッキングの両方を安全に使用できるようにすると、同社は述べている。また同社は、オープンソースコミュニティを支援し、オープンソースプロジェクトを育成する現行の取り組みの一環として、両プロジェクトにプライベートクラスタも寄付するという。

 Engine Yardの最高技術責任者を務めるトム・モーニニ氏は、eWEEKに対し次のように語っている。

 「Railsのスケーラビリティに根本的な問題はないと、われわれは考えている。それでもこの点を批判する人々は、効率性とスケーラビリティを混同しているのだろう。RubyとRailsは、ランタイムにおける効率性こそ従来のプラットフォームに劣るが、これはほかの新しい開発プラットフォームすべてに言えることだ。Javaも登場した当時はひどく遅く感じられたのを思い出してほしい。Rubiniusなどの新たなRubyランタイムは、ネイティブコード生成といった、Javaでも多用されているのと同じ最適化技術を採用しており、効率性の向上を実現してくれる。現在われわれは、一月あたり数百万人ものユニークビジターが使用するRailsアプリケーションを、わずか数台の最新サーバ上で運用しており、ビジター数が数千万人になっても、将来的に数億人になっても大丈夫だという自信を持っている」(モーニニ氏)

 Railsのスケーラビリティに対する非難について、Ruby on Railsの作者であるデビッド・ハインマイアー・ハンソン氏は、「言ってみれば、“揚げ足取り”のようなものだ。議論の的にできるものがなくなったので、苦し紛れに『スケーラビリティはどうなんだ?』というカードを切ったに過ぎない。いわゆるFUD(Fear, Uncertainty, Doubt:不安、不確実、不信)戦略の常套手段とも言える」と、eWEEKに話している。

 ハンソン氏によれば、Railsは2005年の時点ですでに十分なスケーラビリティを備えていたという。「それ以降も、経済的な要素がRailsの可用性を高めてきた。例えば、今日のハードウェアはかつてないほど安価になっており、2GBのRAMならスターバックスのコーヒー1杯分で購入できる。また、『Amazon Web Services(AWS)』などのオンデマンドプラットフォームの登場により、先行投資の問題も取るに足らないものとなった」(ハンソン氏)

 Railsに対する懸念はとうに払拭されていると、同氏は話す。「こうした説が繰り返される理由なら、よく分かっている。チェーンメールがいつまでも出回り、ナイジェリア詐欺に引っかかる人が後を絶たないのと同じからくりだ。ユーザーがブログなどで、Railsの利便性や管理性、生産性などを称賛すればするほど、社会はそのウィークポイントを探すようになる。弱点の1つもない完璧なものなど、信用ならないと思っているのだろう」(ハンソン氏)

(eWEEK Darryl K. Taft)

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