SAP、初のBPM製品「SAP NetWeaver BPM」を発表2009年から一般企業向けのSOA ByDesign技術を提供

» 2008年05月07日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 「SAP SAPPHIRE 2008」の2日目となる5月6日(米国時間)、1万5000人を超える来場者を前に、独SAP CEO へニング・カガーマン(Henning Kagermann)氏が基調講演を行った。講演では、同社初のBPM製品となる「SAP NetWeaver Business Process Management」などが発表された。

コラボレーティブネットワークが必須になってきている
〜カガーマンCEO

 カガーマン氏は冒頭、ネットワークコラボレーションの重要性を強調。「企業はどのようなネットワークが必要なのかを考えなければならない。いま必要なのは、人と人をつなぐコラボレーティブネットワークだ。コラボレーティブネットワークでは、システム間を連携するだけではダメだ。プロセスとプラクティス、イノベーションにアクセスでき、インダストリをつなぐことが必要となってくる」と説明した。

カガーマン氏写真 BPM製品を発表する独SAP CEO へニング・カガーマン氏

 実際SAPでは、製造業など24の業種においてベストプラクティスを提供し、シェア1位を獲得しているという。直近の製品別の売上状況では、大企業向けの「SAP Business Suite」では、ERP 6.0のユーザーが1万社を超えたほか、NetWeaverは3万8700社に達し、2800以上のサービスを提供。ミドルレンジ向けの「SAP All-in-One」では、前年比25%増の1万1700社となり、パートナーも同24%増の1064社となった。そして、中小企業向け「SAP Business One」では前年比23%増の1万8690社、パートナーは同11%増の1169社に増加したという。

 CRM分野では、2007年12月に新バージョンとなる「SAP CRM 2007」をリリース。ユーザーインターフェイスを中心に刷新を図った。SAP CRM 2007のユーザーインターフェイスでは、カスタマイズが可能になったほか、検索機能を強化し、情報入力を可能するなどの改善を図った。新機能では、コールセンター向け顧客対応最適化機能などを追加したという。また、年内には次世代バージョン「SAP CRM 7.0」をリリースするとした。

 会場で行われたデモでは、SAP CRMの画面において、カスタマイズ機能を用いて各種機能をドラッグ&ドロップで自在に動かしたり、画面のパーソナライズ化やBlackBerry(ブラックベリー)との連携強化をアピールした。

BOとの連携を強化し、BPMNに準拠したBPM製品をリリース

 また、カガーマン氏は「早い変化に対応するために、SAPも迅速な変化が要求される」ことから、2007年のBusiness Objects(以下、BO)買収につながり、同社の買収によってフレキシビリティと迅速性を手に入れたと強調。

 実際、NetWeaver上でBO製品との連携強化を進めている。BOのレポート製品である「Crystal Reports」や、ダッシュボード製品「Xcelsius」などとの連携を強化。SAP ERP上のデータをCrystal ReportsやXcelsiusを利用してグラフィカルに見ることができるようになった。

 この点についてカガーマン氏は、「情報を自由にコントロールできるようになった。従来であればシステム担当者に頼まなければならなかったような分析を、自分で行えるようになった点は大きい。システム担当者に頼んでいたら数カ月掛かっていただけに、かなりの時間を短縮できている。分析が容易に行えるようになったことで組織のフレキシビリティが増し、組織のプロセスをモニタリングできるようになった」と語った。

BPMデモ写真 基調講演で行われたBPM製品のデモ

 続いてカガーマン氏は、SAP初のBPM製品となる「SAP NetWeaver Business Process Management」(NetWeaver BPM)を発表した。NetWeaver BPMは、NetWeaver上でビジネスプロセスを設計・管理できる製品。業務の手順を分かりやすく図示し、可視化する表記ルールBPMN(Business Process Modeling Notation)に準拠しており、SAP製品だけでなく他社製品との連携も可能だ。

 例えば、一般的な新卒面接のフローの場合、一次面接を実施し、選抜→承認。二次面接を実施……と業務フローが流れていく。このような業務フローを、NetWeaver BPMを利用して業務フロー図を制作することで、その業務フロー図に沿った承認フローも自動的に構築される。従来は、この承認フローをプログラムコードを利用して構築しなければならなかった。

2009年から本格的に一般企業向けにSOA ByDesignの技術を提供開始

 次にカガーマン氏は、中小企業以外の一般企業向けに2009年から本格的にSOA ByDesign技術の提供を開始すると発表した。

 現在同社では、米国などで中小企業向けにSaaS形式のERP製品「Business ByDesign」を提供している。今回の発表は、この中小企業以外の規模の企業にも、SOA ByDesignで開発した製品を提供するというもの。

 具体的には、SaaS形式を含めた方法でERPやCRMの機能を提供する。「Side by Side」と呼ばれる構築手法により、既存のオンプレミス(自社運用型)なERP製品と並行してSaaS形式のCRMなどを利用することも可能だ。

デモ写真 SAPとBOのレポート製品「Crystal Reports」を連携させたデモ画面。分析結果をグラフィカルに見ることができる

 この点について、カガーマン氏は「内部のコラボレーションを実現できるようになる。社内コラボレーション管理を『Side by Side』で提供する。私はこれを勝機だと思っている。ネットワークを変貌する能力を持っている」と語った。

 そして、2008年以降の戦略について「TCOをできるだけ下げる」「ビジネス中心にしていく。会社が何かをしようかとするときに、サービス性があり、消費しやすい。そんな社内環境をできるようにしたい」とコメントし、講演を締めくくった。

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