リアルタイムJavaが変える工場オートメーション

JavaOne会場のパチンコ玉ゲーム機の秘密

2008/05/10

 まるでピタゴラスイッチかインクレダブル・マシーン(あるいはルーブ・ゴールドバーグ・マシン)のような巨大なおもちゃの前に人だかりができていた。米サン・マイクロシステムズが主催する開発者向けイベント「2008 JavaOne」のパビリオン会場で見かけた「プロジェクト・シドニー」と名づけられたその手作り感いっぱいの機械は、単なるおもちゃではなく、背後に非常に興味深いストーリーが隠されていた。

rts01.jpg JavaOne会場で注目を集めていた謎のパチンコマシン

「あっ」という間に色を識別して羽を制御

 カタカタ、コトコトと小さな音を立てて動きつづけるその機械では、透明なパイプの中を小さな玉が走り回っている。玉は要所要所で止まり、それを検知した機械がフリッパーで次のパイプに向けて玉を飛ばす。

 玉は4色。赤、青、緑、黄色がある。上部にランダムに並んだ玉のストックから、1つずつ落ちてくる。細かなギミックはいろいろあるが、この機械のキモは中央部の「玉振り分け機構」にある。落ちてくる玉の色を検知する光学センサーと、その直下にあるステッピングモーターを使った経路制御の羽により、玉は4本に分岐したパイプに色別に並べられる。色を検知し、素早く羽を動かして玉の経路を変えるというデモンストレーションだ。

rts02.jpg 上部右の黒いパーツが光学センサーで落下する玉の色を識別する。それに基づいて下部の枝分かれ部の羽を制御して色別に玉をパイプに並べている

 玉が自由落下するのは数十センチ。測っていないが、もし30センチとすれば落下時間は250msほどだ。この限られた短い時間の間に羽の位置を動かして玉を目的の列に振り分ける。玉が落ちる瞬間にガベージコレクタが走ったとしても、遅延なしに確実に振り分けるようにできている。さらに、GUIの操作パネルを使って人間が何かをした結果としてデータベースアクセスが発生しても、遅延は発生しないよう設計されているという。

 「なるほどリアルタイムJava(Java RTS 2.0)のデモンストレーションか」と考えた記者は、それほど注意を払わなかったが、その背後にはアメリカの工場オートメーションの世界で起きつつある「遅れてきたイノベーション」という大きなストーリーがあったのだった。

工場オートメーションにもオープンシステムの波

 JavaOne最終日の基調講演に登壇したサンのグレッグ・ボレラ(Greg Bollella)氏は、前世紀的アーキテクチャによって稼働している工場オートメーションの世界について、会場に集まったJava開発者たち簡単に説明した。

 「この会場に来ている人の中で、たぶん1人も知ってる人はいないでしょうけど、Profibusというネットワークプロトコルがあるのです。これはみなさんがプロトコルと聞いて想像するものとは違い、非常に原始的なものですが、工場の制御用機器の世界では業界標準です」(ボレラ氏)

 ネットワークを流れるのはパケットと呼ぶよりも制御信号のようなもので、それをプロプライエタリなプログラミングツールを使い、リレースイッチを素子化しただけのような機械で制御する。プログラミングというのも、現代的な意味でいえばプログラミングと呼べないものだという。

 プロプライエタリな機器でコスト高に悩んでいた工場経営者から相談を受けたサンは、「ブルーワンダー」と呼ぶアーキテクチャのシステムを開発した。産業用にデザインしたx86ベースのファンレスマシンにSolaris 10、Java RTS 2.0を搭載、さらにProfibusバスやOS用ドライバを用意した。

 プロプライエタリシステムがどの程度高価だったか、サンのシステムによってどの程度にコストが抑えられるかなど正確な数字は不明だが、耐熱・耐塵設計で特殊なバスがある以外はふつうのPCと、デバイスドライバをのぞいて手を加えていないOSとJavaプラットフォームの組み合わせは、大きなコスト削減につながりそうだ。ブルーワンダーはまだ実稼働にいたっていないが、ボレラ氏によれば、すでに引き合いは多いという。

rts03.jpg ブルーワンダーのシステム本体。x86ベースのマシンでSolaris 10とJava RTS 2.0を搭載している
rts04.jpg ブルーワンダーのシステム構成図

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(@IT 西村賢)

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