世界最速DBが国内出荷へ、メモリ・グリッド技術を採用日立システムが独社製「EXASolution」販売開始

» 2008年05月13日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 日立システムアンドサービスは5月13日、ベンチマーク「TPC-H」で世界最速を記録したインメモリ型のDBMS「EXASolution」の日本語版の出荷を9月1日に開始すると発表した。リアルタイムで複雑な分析が求められるデータウェアハウス(DWH)、ビジネス・インテリジェンス(BI)向けのデータベースとして流通や通信、製薬企業に売り込む。

 日立システムはEXASolutionを開発したドイツのEXASOL AGと販売代理店契約を締結した。TPC-Hの4月の結果によると、EXASolutionはデータストレージが100GB、300GB、1TBのカテゴリでOracleなどを退けて1位を獲得した

EXASolutionのアーキテクチャ概要

 EXASOLのCEO ゲルハルト・ランプフ(Gerhard Rumpff)氏、日立システムの第三事業グループ プラットフォームソリューション本部長の西條洋氏によると、EXASolutionの速さの秘密は「メモリ・グリッド」。 EXASolutionはほかのデータベースと同様に複数のIAサーバでクラスタを構成し、パフォーマンスを高めることができるが、特に「複数のサーバのメモリ空間をあたかも1つのメモリ空間のように扱える」(西條氏)というメモリ・グリッドを実現し、サーバのメモリを最大限活用している。

EXASOLのCEO ゲルハルト・ランプフ氏

 データ圧縮技術も利用して検索インデックスのデータ量も削減し、パフォーマンスを向上させている。OSにはRed Hat Linuxをベースに並列処理に最適化した「EXACluster OS」を用いる。EXACluster OSにはデータを自動で分散してサーバ障害時にデータを保護するクラスタリカバリ機能を持つ。2000年創業のEXASOLは当初からメモリ・グリッドを念頭にデータベースを開発してきたという。オラクルは「メモリ・データグリッド」として「Oracle Coherence」を販売しているが、ランプト氏は「アーキテクチャで競合と大きな違いがある」と説明する。

 EXASolutionの高速性を生かせるのは高度な検索パフォーマンスが要求されるOLAP。BIツールなどの分析アプリケーションからEXASolutionへのアクセスは標準的なSQL2003で可能といい、企業は既存のOLAPデータベースをEXASolutionにリプレースできるという。UNIXサーバではなく、安価なIAサーバを複数台使ってシステムを組めるのもEXASolutionの特徴で、日立システムは「単に速いだけでなく安い」ことをアピールする。

 価格はメモリ使用量が100GBまでの場合で、ライセンスが2500万円。年間保守費用が500万円。ハードウェア含めた場合の総額は5000万円程度になるという。使用メモリの目安としては16GBのメモリを積んだサーバ10台(合計メモリ160GB)で、1TB程度のデータを高速に分析できるという。日立システムによると、全国で数百店を展開する小売チェーンが1年間で蓄積する売上データの容量が1TB程度。EXASolutionはクラスタを構成するサーバを増やせば、ほぼリニアにパフォーマンスが向上するので、320GBにメモリを増やせば、2年間の売上データを基に前年同期と比較しながら分析できるようになる。

 ただ、日立システムはEXASolutionのターゲットして500GB程度のDWHを蓄積した中堅規模の企業を中心に考えている。今後3年間で約30億円の販売を目指す。

 

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