各OSのマルチメディア機能も抽象化して利用可能に
WebKitと統合したQtをデモ、Trolltech
2008/05/15
Windows、Mac OS X、LinuxなどOSの違いを超えて利用できるGUIフレームワークとして知られている「Qt」(キュート)が、モバイルや組み込み、インターネット、マルチメディアとの親和性を急速に高めている。Qtを開発するTrolltechが5月6日に発表した最新版の「Qt 4.4」では、新たにWindows Embedded CEをサポートしたほか、Webブラウザ向けレンダリングエンジンのWebKitを統合している。同社は5月14日に東京ビッグサイトで開催した組込みシステム開発技術展でデモンストレーションを行った。
Qt 4.4を使ったデモンストレーション。Linux、Mac OS X、Windows Embedded CEなどで、単一ソースコードのアプリケーションが稼働している。スライドバーを使ったリッチなUIや、グラフィカルな表現などが可能だGoogle Mapsもローカルアプリにマッシュアップ
QtはもともとX Window System上のGUIツールキットとして誕生した。デスクトップ環境「KDE」が採用したことで広く知られるようになり、その後はWindowsやMac OS Xをサポートするフレームワークとして、Photoshop Elements、Opera、Skype、Google Earthなどのアプリケーションでも使われるに至っている。
新バージョンの目玉の1つはアップルのWebブラウザ「Safari」で使われていることで知られるオープンソースのレンダリングエンジン「WebKit」を統合したことだ。例えばダイアログボックスにGoogle Mapsを統合するなど、ネイティブアプリケーションとWebサービスのマッシュアップが容易に行える。QtはGPLと商用ライセンスのデュアルライセンスであるほか、WebKitはLGPLのライセンスでも配布されているため、組み込み用途にも使える。
マルチメディア関連APIも充実させた。QtとKDEメンバーが共同で開発した「Phonon」と呼ばれるマルチメディアフレームワークを搭載し、Windows上ではDirectShow、Mac OS X上ではQuickTime、Linux上ではGStreamerに対応した。サポートするコーデックの違いは残るが、OS固有のAPIを意識することなく、クロスプラットフォームのメディアプレーヤーの作成が簡単に行えるという。実際、音楽サイトのLast.fmはWindows、Mac、Linux向けの音楽プレーヤーをオープンソースで提供しているが、そのソースコードは単一という。
Qt 4.4を使った例。新たに統合されたWebKitを使うことで、ローカルアプリケーションにWebサービスをマッシュアップするといったことが簡単に行える。これはLinux上で動作しているが、まったく同じソースコードによるプログラムが、Mac OS XやWindowsでも動く
Qt 4.4で作成したメディアプレーヤーの例。Linux上で動いているが、同じソースコードでWindows版やMac版もビルドできるという組み込み向けでは、日本国内でもコピー機や医療機器、車載向けデバイスなどでQtの採用実績がある。5月に出た新バージョンでは新たにWindows Embedded CEへの対応によりスマートフォンや組み込み向けでの用途が広がることが予想される。
組み込みでの需要を見越して、SRAは日本語入力モジュールを開発中だ。変換エンジンにはオムロンソフトウェアのWnnを使い、ソフトウェアキーボードによるかな漢字交じり文の入力モジュールを実現した。XMLの設定ファイルにより画面サイズや各種設定をカスタマイズできる。対応製品は6月に出荷予定だ。例えば、すでにQtはカラオケの曲選択向け操作デバイスで採用されているが、日本語入力が可能となることで、こうしたデバイスでダイレクトに曲名の一部や歌手名での検索が可能になるという。
SRAはQt向けにWnnを使った日本語入力モジュールを開発中。6月に製品を出荷予定だケータイ端末でLinux+WebKit+Qtが普及する可能性
Linux(X Window System)向けのGUIツールキットとして登場し、徐々にクロスプラットフォーム化してきた「Qt」だが、今や最も注目すべきはケータイ端末向け市場だ。全世界の約4割のケータイ端末を作る巨人ノキアが、2008年1月にTrolltechを1億400万ユーロ(約167億円)で買収すると発表。Linux+WebKit+Qtというソフトウェアスタックが広まる可能性が一気に高まったからだ。
現在ノキアはケータイ端末向けOSの軸足をSymbian OSに置いているが、ライセンス料などの問題から、今後ノキアの一部門になるTrolltechのLinux+Qtに移行することも考えられる。TrolltechはLinuxベースの組み込み向けソフトウェアスタック「Qtopia」シリーズも持つが、ケータイ向けとして「Qtopia Phone Edition」の機能を拡充している。
グーグルらが推進するAndroidは、Linux+Java+WebKitと構成が似ている。今後、ノキアとグーグルが手を組む可能性もあり、そうなればQtは、アドビのAdobe AIRとも競合する強力なクロスプラットフォームのRIAフレームワークになるかもしれない。
開発中の「Qtopia 4.4」の実装例。マルチタスク、SQLデータベース、メディアプレーヤー、Bluetooth、RSS対応の“ウェブレット”などをサポートする
「Qtopia 4.4 Phone Edition」で動的な写真アルバムを実装した例関連リンク
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