Fedoraプロジェクトリーダーに聞く
「FedoraはOSS全体に貢献する」、プロジェクトリーダー
2008/06/21
2003年にスタートしたFedoraプロジェクトは「自由」と「速いイノベーション」というスローガンを掲げ、人気のLinuxディストリビューション「Fedora」(旧称Fedora Core)を提供している。6カ月おきに新バージョンをリリースしており、常に最新の技術を取り入れるというのがウリだ。
Fedoraプロジェクトは、レッドハットがエンタープライズ向け製品である「Red Hat Enterprise Linux」にフォーカスしたことを受けて開発が中止された、より一般向けのLinuxディストリビューション「Red Hat Linux」をコミュニティベースの開発に移行したものだ。ただ、現在もレッドハットが人的、経済的援助をしながら運営しているほか、Fedoraで取り入れられた新機能は、その後にRed Hat Enterprise Linuxにも反映されるという意味では、Fedoraはレッドハットの最新開発版ともいえる存在だ。
6月18日から3日間に渡って米国ボストンで開催されたRed Hat Summit 2008の会場では、同時にFedoraプロジェクトのユーザーや開発者が集まる1年に1度の会合「FUDCon」が開催されていた。
5月に最新版の「Fedora9」をリリースしたばかりのFedoraプロジェクトのリーダー、ポール・フリーズ氏に話を聞いた。
――フリーズさんの現在のポジションを教えてください。
4年半ほどFedoraコミュニティのメンバーでしたが、2008年2月からはレッドハットのフルタイムの社員となって、Fedoraプロジェクトのリーダーを務めています。Fedoraプロジェクトには9人のボードメンバーがいます。そのうち5人はコミュニティの投票で選ばれた人々、残り4人はレッドハットが指名した人です。この4人は必ずしもレッドハットの社員とは限りません。
Fedoraプロジェクトのリーダー、ポール・フリーズ(Paul Frieds)氏私は9人からなるボードメンバーの議長という立場で、ボードの決定に対して拒否権を持っています。しかし幸い拒否権を行使する事態はこれまでありませんでしたし、これからもないといいなと思います(笑) メンバー間で議論があっても、たいていは最終的に合意に達します。
――どういう経緯でFedoraに関わるようになったのですか?
以前、犯罪科学捜査の仕事に携わっていたのですが、あるとき、仕事で使っているプロプライエタリなツールに代わるフリーソフトウェアがあることを知りました。犯罪科学捜査に使うソフトウェアは、単にディスクのコピーをするだけでも高価なMS-DOS用のソフトウェア製品だったりしたのですが、それはddコマンドで代用できるものだったのです。それで徐々にLinuxを使うようになり、やがて自分で犯罪科学捜査用のソフトウェアを書いたりもしました。
ただ、私はコンピュータサイエンスの教育を受けたわけではないので、コードを書く人間ではありません。Fedoraでは、いくつかのパッケージのメンテナンスとドキュメントを書く仕事をしています。
――レッドハットはどのぐらいFedoraプロジェクトを支援しているのですか?
ネットワーク帯域を使っているなど具体的な金額は出しづらいですね。私のほかにも14人ほどのFedora開発者がレッドハットのフルタイムの社員です。
――パッケージの数やメンテナは人数は?
パッケージのメンテナは600人から700人ぐらいです。Fedoraが提供しているパッケージの数は1万程度だと思います。
Fedoraプロジェクトに貢献するために、必ずしもプログラマである必要はありません。絵を描く才能がある人、文才がある人、Webサイトの管理ができる人、翻訳ができる人、イベント開催の協力やサポートを行うなどコミュニケーション能力の高い人などさまざまな人材に参加を呼びかけています。
――Fedoraのユーザー数は?
ダウンロードされた数から推定すると全世界で225万人程度ですが、これは控えめな数字で、おそらく800万から1000万人規模だと思います。Fedora9はリリースから1カ月で50万ダウンロードを達成しています。
――Fedoraがターゲットとするユーザー層は? レッドハットはデスクトップLinux提供の計画を中止したという話も聞こえてきますが。
それは誇張された噂に過ぎません(笑) Fedoraの主なユーザーは開発者やコンピュータ好きの人、それからFedoraを元に何かを作りたいという人たちです。Fedora7から入った「spin」という派生ディストリビューションを制作する機能があります。このspinを使ってアーティストたちが壁紙やデスクトップのデザインを変えて、アート系ツールを集めたものを配布したり、電気技師が自分たちに必要なツールをインストールしたバージョンを作ったりしています。
――最近はUbuntuが話題ですが、Ubuntuとの違いは?
それは必ず聞かれる質問です(笑) まず大きな違いはFedoraは100%オープンソースベースだということです。コミュニティの運営にWikiベースのツールを使っていますが、そうしたものもすべてオープンソースです(編注:Ubuntuは非オープンソースのソフトウェアでもサポート対象外という制限付きで配布している)。
もう1つの違いは「アップストリーム・ポリシー」です。Fedoraでは自分たちのディストリビューションのためだけに何かをするということはなく、常にオープンソースコミュニティ全体のためになることをするという規範で開発をしています。
カーネル、gcc、GNOMEデスクトップのツールの数々まで、それらを開発・メンテナンスしているアップストリーム(上流)のコミュニティと緊密に連携して、自分たちのコードや翻訳を反映させるようにしています。Ubuntuでは、自分たちのディストリビューションで適用したパッチをアップストリームコミュニティに送ってこないという苦情を聞いています。アップストリームにパッチを送らないと、ディストリビューション間で非互換の部分が出てメンテナンスが難しくなります。アップストリームに変更が取り込まれれば、ほかのLinuxディストリビューションや、すべてのOSSにとってメリットとなります。
――Fedora9の新機能について教えてください。
例えばUSBドライブでブートできる環境が強化されました。USBドライブからブートして、何かドキュメントを作成してデスクトップに保存すれば、別のマシンを使ってそのUSBドライブで起動しても、まったくそのままの環境が再現されます。
パッケージ管理システム「PackageKit」も新機能としてFedora9に入っています。まだすべての機能は完成はしていませんが、これはdeb、rpmなど異なるパッケージを統一的に扱うパッケージ管理システムです。また、カーネル2.6以降でサポートしているudevに対応していて、デバイスが接続されたら、それに必要なパッケージのインストールを促すといった機能も備えています。例えばプリンタを接続すると、必要なドライバパッケージのダウンロードを促すとか、スキャナであれば、SANEドライバのインストールを促すといった感じです。OpenOfficeが入っていない環境でOpenOfficeのドキュメントを開こうとしたら、OpenOfficeのパッケージインストールを促すといったこともできます。
「PolicyKit」も新機能です。これは、どのユーザーに対してどういう操作を許可するかを設定するツールです。例えば、タイムゾーンの変更をどのユーザーに許可するのか、アプリケーションの追加は誰ができるのか、といったことを設定します。PolicyKitを使うと、アドミニストレーター権限が必要な操作をするたびにパスワードを求められるという煩雑さがなくなります。
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