“RAIDストレージよりクラスタNASの時代”、アイシロンNASでブロック・ストレージの浸食狙う

» 2008年07月28日 00時00分 公開
[三木泉,@IT]

 アイシロン・システムズは7月25日、東京都内でプライベート・カンファレンス「Isilon Breakthrough Summit」を開催、 米アイシロンCTOのポール・ラザフォード(Paul Ratherford)氏は、従来型のRAIDシステムに対する同社のNAS製品の優位性を強調した。

 アイシロンのストレージは、コントローラとディスクドライブで構成される「ノード」をニーズに合わせて追加していくことで、ストレージの稼働を続けたまま容量とパフォーマンスを同時に拡張できるのが大きな特徴。この製品ではあらゆるデータを256Mbytes単位で、利用可能なすべてのディスクドライブにストライプ書き込みするようになっている。データの冗長構成もこの単位で行うため、再構成は短時間で終了する。

 ラザフォード氏は、アプリケーションごとにLUN(論理ユニット)を構成していくこれまでのストレージでは管理が複雑で、ストレージの利用効率も低いと指摘。さらにファイルサービスのためにサーバ、SAN、ストレージなどを組み合わせていくことで、パフォーマンスが犠牲になり、管理におけるエラーも発生しやすくなると話した。

 一方アイシロンのNASは、ファイルサービスを1システムだけで実現でき、構成作業のほとんどを自動化しているために、管理コストを大幅に低減できるという。

 カプコンでは、アイシロンの「IQ6000i」9台で単一のボリュームを構成し、世界中のゲーム開発者約2000人がこれを利用しているという。同社ではそれまで多数のWindows ServerとSCSIドライブを並列的に用いてファイルサービスとしていたが、頻繁にいずれかのディスクドライブが壊れるなど、運用は困難を極めていたと、同社ソフトウェア技術部オンライン技術チーム長 弓手一良氏は話した。RAID構成であればドライブ交換でデータは回復できるが、RAIDの再構築に長い時間が掛かり、その間はパフォーマンスが低下するなどの問題が発生していた。

 アイシロンのNASに移行したことで、システム構成は大幅に簡素化され、価値のあるデータを安心してまかせられるようになったという。弓手氏は、ユーザー企業から見たアイシロン製品の利点として、大容量の単一ボリュームを構成できること、多数の同時アクセスに強いこと、ストレージ容量を効率的に使えるため、投資が無駄にならないことなどを挙げた。「とにかく壊れない」(弓手氏)といい、バックアップを取ることもしていないという。NASといえばファイルサービスが連想されるが、VMware ESXではNFSマウントでストレージを利用できるため、カプコンではアイシロンのストレージをVMware ESX用にも利用している。「NASだとオーバーヘッドが気になるが、VMwareではキャッシュが効果をもたらすため、まったく遅くは感じない」(弓手氏)。

 ラザフォード氏は、「NASでできることはどんどん増えてきている。以前はファイルサービスだけだったが、現在ではサーバ仮想化にも使えるようになってきた。ブロック・ストレージに比べてシンプルなところに根本的な違いがある」とし、今後もNAS専業ベンダとして事業を伸ばしていくと語った。

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