派遣エンジニアの経験値を測るツール「テクすき」登場「適正な人材を適正な個所に。主従のミスマッチを減らしたい」

» 2008年08月04日 00時00分 公開
[荒井亜子,@IT]

 エンジニアや事務職に特化した派遣会社ジェー・オー・ビーは8月1日、ITエンジニアの業務遂行能力を判定するスキル診断ツール「テクすき」の販売を開始した。

Java、C、C++の3つのプログラム言語に対応

 「テクすき」は、プログラマやシステムエンジニア(SE)の経験値や問題解決能力など実践的なスキルを測る診断ツール。USBで提供する。PCにUSBを差し込むと自動で起動し、開発業務に関する問題をPC上で出題。正答率などを基にユーザーの実力を5段階で判定する。

ジスクソフト システムソリューション部 白川正也氏

 テクすきの開発全般を行ったのは、ソフトウェア開発会社のジスクソフト。ジスクソフト システムソリューション部 白川正也氏は開発までの経緯を次のように述べる。「派遣会社はこれまで『面談や職務経歴書だけでは本当の実力が分からない』という悩みを抱えてきた。実際、職務経歴書が非常に立派な人であっても、現場へ出て企業から突き返されてしまうケースは多々あると聞く。企業と派遣エンジニアのミスマッチは、お互いにとって相当苦しい。『適正な人材を適正な個所に』。双方のミスマッチを少しでも減らしたいという思いで開発を行った」。

 テクすきは、知識がどれくらいあるかと、その知識を実践でどれくらい活用できているかの測定を目的としている。出題する問題はジスクソフトの開発事例を基にしており、現場で起こりがちな問題、よく依頼される仕事内容を中心に実務を意識した作りとなっている。

サンプル問題。各言語、問題数は現在約180問。

 ソフトウェア開発において、1970年の創業から40年近い歴史があるジスクソフト。開発ではこれまでにさまざまな苦労や経験を積んでいる。「『依頼された開発のプログラムはあるけど仕様書がない』『簡単そうだと受けた開発の基のプログラムを見たらスパゲッティコードで、どこから手を付けていいか分からない』『32bitマシンの古いプログラムを64bitマシンへの移植』などさまざまなケースを経験してきた」(白川氏)。テクすきはこうしたノウハウを商品化したものだといえる。ただ、「あまり業務内容に偏り過ぎると知識が測れなくなることには配慮し、業務と知識を適度に混ぜた」と白川氏は述べる。

 言語ごとに製品を出したのは、現場でプログラムを作る開発者向けの診断ツールだから。仮に言語レベルでなく、上流工程レベルの問題を出した場合、難易度の高い問題だと1問を解くのに20分以上かかってしまう。テクすきは派遣会社での面談時に使用することを想定しているため、1問を解くのに20分もかかってしまうと「面談時間が1問で終わってしまう」(白川氏)。また、言語は派遣エンジニアの募集案件でも条件の指標になっているとおり、プログラマやSEのスキルを測る尺度としては一般的だ。Java、C、C++は、ジスクソフトが開発案件で得意とする言語であるが、ジェー・オー・ビーが考える企業から需要がある言語とも一致した。

 業務ごとに製品化することも考えたというが、「システム開発は業務の範囲が広い。業務アプリ、組み込み、オープン系……。種別を表す言葉を挙げればきりがない。業務ごとに全範囲を網羅することはできないと思った」と話す(白川氏)。

プログラマ 後藤智彦氏。プログラミングは基本的に1人で行った

 結果はスコアシートで出力する。採点は5段階評価(S、A、B、C、D)で行い、上級レベルがS、初級レベルがDとなる。テクすきのプログラミングを担当した後藤智彦氏は「レベルB以上であれば(プログラマやSEなら)大抵の現場で通用する。また、Sには見積もりやスケジューリングなど上流工程の問題も含まれるため、開発経験だけでは到達できない」と説明する。

 各問題の難易度はレベル1〜4まである。ジスクソフトの開発者の正答率が高い問題がレベル1、正答率の低かった問題がレベル4とした。試験時間は標準で20分。10分刻みの最短10分、最長60分で、ユーザーの都合で決められる。現場での経験値や実践的スキルを測定することが目的のため、分からない問題、経験がない問題は「スキップ機能」で飛ばすことが可能だ。回答結果によって次の問題が変わるため、問題に正解すれば次の問題の難易度が上がり、間違えれば難易度が下がる。スキップの場合は難易度は変わらない。白川氏はスキップ機能について「IT業界の業務範囲はあまりにも広い。仕事のセンスがいい人ほど1カ所で働き続ける傾向があり、知識が偏る。よって、解けない問題は当然出てくる。例えば携帯の基盤業務をやっていた人は同じ携帯のアプリの問題を解けないと思う。スキップしてもレベルは落ちないので分からない問題は素直にスキップしてもらいたい」

 レーダーチャートは、ユーザーのスキルがどこに偏っているかを見るものだ。正解・不正解・スキップの結果を踏まえ、得意不得意がレーダーチャートに現れる。

 後藤氏は「説明書を読まなくても使えるユーザーインターフェイスにこだわった。問題画面は、1つの画面を問題文、ソースコード、資料、解答欄で4分割をすると画面が見づらくなるため、それぞれをタブで切り替えられるようにした」とこだわりを語った。価格は1本9万5000円(税抜き)。発売から2カ月で3000本の売り上げを目指す。

スコアシート。「ベンダ資格や情報処理技術者試験の資格では測れないことをレーダーチャートで分類できる」(白川氏)。
タブで切り替える問題画面
PCにUSBを差し込むと自動で起動。記憶領域はUSBのみを使用し、PCの記憶媒体は使わない

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