新SDK付属エミュレータで分かった完成度

一足お先にAndroid体験をしてみた

2008/08/21

 既報の通り、現地時間の8月18日、米グーグルはスマートフォン向けのフルソフトウェアスタック「Android」の開発キットで初めてのベータ版となる「Android SDK 0.9」を公開した。SDKには開発に必要なライブラリやツールのほか、PC上で動くエミュレータの実行環境が含まれている。

 このエミュレータには、電話帳や電話アプリケーション、Webブラウザ、地図などのアプリケーションが付属していて、実際に触ってみることができる。物理的な端末とは異なるとはいえ、Android搭載端末がどのようなユーザーインターフェイスを提供するのかを知るには十分なものだ。

 グーグル関係者や端末メーカー、チップメーカーらは、これまで各地で行われるイベントでAndroidの試作機を披露している。そうした映像や、実際に記者自身が見た試作機の動作の様子からいえるのは、エミュレータ環境の動作速度は、実際の端末のものと、大きな差はなさそうだ、ということだ。つまり、エミュレータを使ってみれば、Android端末がどのような使い勝手を実現するものになるか、かなり分かるといえるだろう。

 そこで実際にエミュレータ環境でアプリケーションやユーザーインターフェイスを利用している様子を15分強の映像にしてみた。SDKのダウンロードは誰でもできるので、興味がある読者は是非自分でも試してみてほしい。エミュレータの起動は、アンドロイドの絵のアイコンをクリックするだけと非常に簡単だ。Eclipseを使ってJavaプログラムの開発をしている人なら簡単なアプリケーションはすぐに作れるだろう。

iPhoneそっくり!? 似て非なるAndroid

 デスクトップ画面ともいえる最初の画面にはウィジェットやアプリケーションのアイコン、コンタクト先のショートカットなどを置くことができる。このデスクトップ画面は合計3枚分あり、エミュレータ環境ではマウスでドラッグすることで(タッチスクリーンであれば指で弾くことで)、左右のデスクトップに切り替えられる。

 iPhoneのメニュー画面に似ているが、AndroidではよりPCに近いデスクトップを用意していて、ウィジェットを置ける点が異なる。1度にユーザーが起動しておけるアプリケーションの数が1つに限定されているiPhoneに対して、そうした制限がないこともAndroidの特徴だ。稼働中のアプリケーションは、画面上部のバーを引き出しのように画面下方へ引っ張り出す「Notifications」というリストで確認できる。Notificationsは、稼働中のアプリケーションの表示ばかりでなく、SMSの新規メッセージのように、ユーザーにリアルタイムで提示したい情報を表示する場所として、各アプリケーションが自由に使うことができる。

 アプリケーションを自由に作成して、自由に配布できる点も、iPhoneとAndroid端末の大きな違いだろう。Androidを構成するソフトウェアはApache License Version2のライセンスの下にオープンソースとして公開される予定のため、Android自体に手を入れて端末に組み込んで出荷するということもできる。Android上で開発者やユーザーは、Java言語を使って書かれたアプリケーションしか動かせないが、Adroid自体に手を入れればネイティブアプリケーションを動かすことや、Androidが提供するDalvik VM以外のVMを入れることもできる。この点について米グーグルのジェイソン・チェン氏は、わざわざ非互換にしてAndroid対応アプリケーションを使えなくする理由はないので、誰もそんなことはしないだろうし、しないことをグーグルとしては望んでいると答えている。

 iPhoneで利用するApp Storeのようにアプリケーションの登録・配布サイトが存在しないため、Android対応アプリケーションの配布は、自社サイトにバイナリへのリンクを置いて、ユーザーにダウンロード、インストールしてもらうという形になりそうだ。それではセキュリティ上が不安があるが、Android上のアプリケーションはすべて、初期状態では端末上のリソースにアクセスできない仕様となっている。インストール時には、そのアプリケーションがアクセスするリソースはユーザーに明示的に示され、ユーザー自身がその安全性や信頼性を確認することになるという。この辺りもケータイというよりも、ほとんどPC的なアプローチだ。

Webブラウザの使い勝手はiPhoneと互角

 Webブラウザや地図アプリケーションはiPhone同様に、従来のケータイとは一線を画す使いやすさだ。iPhoneもAndroidもWebKitをベースにしたWebブラウザを搭載していて、レンダリング速度や能力に大差はないようだ。

 AndroidのWebブラウザがiPhoneのそれと比べて異なるのは、ズームUIの完成度だろう。iPhoneでは「ここが見たい」という部分をダブルタップすると、だいたい正しい範囲が画面いっぱいに広がるという使いやすさがある。指による拡大・縮小や指で弾く操作性の良さと相まって、小さな画面でWebブラウジングしていることを忘れるほど使いやすい操作性を実現している(頻繁にクラッシュするという大きな問題があって、その魅力は半減しているが)。

 一方、Androidのほうはダブルタップで全体表示し、続いて拡大領域を移動して場所選択、それに続いて拡大表示という、やや面倒な流れになる。グラフィックアクセラレータや処理速度によって使い勝手は大きく変わってきそうだが、エミュレーション環境で使った感じでは、AndroidよりiPhoneのWebブラウザのほうがはるかに使いやすく感じる。

 しかし、iPhoneとは違う良さもある。例えばリンクを長押しクリックすると、メニューが表示され、「リンク先を別ウィンドウで開く」「リンクのURLをコピー」「リンク先をブックマーク」などが選択可能だ。iPhoneで同様の操作を行っても単にリンク先のURLがポップアップ表示されるだけで、この点はAndroidのほうが使いやすく感じる。

 機能や設定項目の多さでもAndroidのほうが上だ。ページ内検索やパスワードの自動入力機能、あるいはオフラインでWebアプリケーションを利用するためのツール「Gears」の搭載など、AndroidのWebブラウザのほうが機能が豊富だ。

ストリートビューも見られる地図アプリケーション

 地図アプリケーションの使い勝手はiPhoneとほとんど変わらない。表示の見た目や処理速度はまったく同じといってもいいほどだ。iPhoneでは2本の指を使った拡大・縮小が可能という点がアドバンテージだが、地図に限っていえば、これは大きな差ではない。ネットワーク帯域がボトルネックとなって地図の表示速度があまり速くないため、拡大・縮小アイコンをクリックするのも、マルチタップで拡大・縮小するのも体感的には似たようなものだ。

 逆にAndroidのアドバンテージとしては、先日日本でもサービスが開始されたグーグル・ストリートビューに対応している点が挙げられる。先日横浜で開催されたGoogle Developer Dayでは、加速度センサーとグーグル・ストリートビューを組み合わせ、立ち位置が変わるとそれに合わせて表示される視界も変わるというデモンストレーションを行っていた。

エミュレータを使って分かったこと

 Androidのエミュレータを使って分かったことは、ユーザーインターフェイスやAPIの作り込みに関して完成度は高く、iPhone並みに革新的なモバイル体験を約束しているように見えるということだ。iPhoneはその優れた端末デザイン、個々のアプリケーションの作り込みなどディテールで多くのユーザーを魅了し続けることになるだろう。しかし、それはちょうどPCの世界にMacにこだわる層がいるのと同じことで、いずれモバイルインターネットの世界にもPCに相当するものが登場するのかもしれない。Androidに、そうした世界で大きなシェアを取るだけのポテンシャルがあるかどうか――、2008年年後半の製品リリースが注目される。

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(@IT 西村賢)

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