COBOL4万行をC#に変換、国際自動車が基幹システム刷新「ベンダに言われるがまま」を脱却

» 2008年09月04日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 「ベンダに言われるがままで、まったく管理ができていなかった」。大手コンサルティングファームから、2005年に旅客業大手の国際自動車に転職した下山慶太氏(現在、同社取締役、公認会計士)は、国際自動車の情報システムの状況に心底驚いた。特に営業管理、人事・給与の基幹システムは、外部のシステム会社に運用・保守を全面的に委託していたため、ブラックボックス化していた。「帳票を1枚新たに作るのに1人月、100万円を当たり前に請求されていた」。社内にIT部門がなかったために、システム会社の言いなりになっていたのだ。

国際自動車 取締役で公認会計士の下山慶太氏

 入社後、下山氏は国際自動車のITガバナンスを取り戻すことを決意した。ホストで動いていた基幹システムをオープン系で刷新することを決めた。情報システム部門も新設し、「自分のところで管理できるようにする」ことと、運用管理コストの削減を目指した。

 プロジェクトが始まったのは2005年7月。コンサルティング会社のプランシパルが協力した。時間の制約があり、1年でシステムを立ち上げる必要があった。そのため基本的には「いまのサービスレベルを維持しながらダウンサイジングをする」ことを優先した。将来的な業務アプリケーションの拡張を考え、アプリケーション基盤としての機能も持つようにした。

 プランシパルは同社が開発した.NET Frameworkベースのアプリケーション基盤を活用することを決めた。.NET Frameworkのフレームワークの上にワークフロー管理などを行う基盤を開発。その上で稼働する各業務アプリケーション同士がコーディングなしで連携できるようにした。新しい業務アプリケーションを追加する場合もXML定義ファイルを書くだけでシステム連携ができるという。

 ホストで動いていたレガシーな業務アプリケーションは「4万行のCOBOLステップをC#アプリケーションに移行し、できるだけマスターデータの整理や共有化も行った」(プランシパル)。人事・給与では開発時間を優先し、オービックの人事・給与パッケージを採用した。また、システムの運用管理には日立製作所の「JP1」を利用することを決めた。

 初期のシステム開発費用だけで2億8000万円かけた大規模なプロジェクトだったが、プランシパル側の人員は合計10人。「通常のプログラマ3人分の仕事を1人でこなすスタッフをそろえた」という。2006年4月には新システムが稼働。6カ月の並行稼働期間を経て、2006年10月に新システムを本格稼働させた。

 新システムによってこれまで年間2億円かかっていた運営委託費用が、年間8000万円(保守運用費用)に削減できた。同時にITの主導権を自社が握ることで、「新しいアプリケーション開発が社内ですぐにできるようになった」(下山氏)という。「ITが足かせにならず、新しいことへのハードルが低くなった」のが最大のメリットだ。今後は業務アプリケーションを横断して経営データを取得し、分析できるアプリケーションの開発などを検討している。タクシーの無線システムを刷新し、コスト削減を目指す計画もある。

【2008年9月19日修正】初出時、開発の協力会社として別の社名を記載しておりましたが、実際はプランシパルが協力していたため、修正しました。プランシパル出身で、現在は別会社にいる人物に取材を行ったため、記者が混合したのが原因です。読者、関係者の方々にお詫び申し上げます。(@IT編集部 垣内)

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