Webブラウザや俺YouTube番組表、3Dキューブも

Curlの無料投稿サイトでアプリをいろいろ試してみた

2008/09/10

 RIA/リッチクライアントベンダのカールは9月10日、リッチクライアント技術Curlを開発するプログラマ向けに、自作のアプリケーションを投稿できるWebサイト、「Curl Apps Gallery」をオープンした。

 Curlはプログラミング言語の1つで、リッチクライアント/RIA技術の1つでもある。言語はLispのような関数型言語で、Javaのようなオブジェクト指向とHTMLのような文章記述が特徴となっている。Curlの詳細は、@ITリッチクライアント&帳票フォーラムのカテゴリ「Curl」を参考にしていただきたい。

 Curlアプリケーションの実行には実行環境である「Curl RTE」が必要となるが、これを1度インストールしておけば、Webブラウザ上でもローカルデスクトップ上でも動作する。WindowsやLinux、Mac OS XなどOSを選ばないマルチプラットフォームを実現している。実行環境をインストールして使うということで、Flash/Adobe AIRやSilverlight/WPF、Javaアプレットなどと比較されることが多い。

 いままでは、どちらかというとエンタープライズ向けのRIA/リッチクライアント技術として認知されてきたが、今回の「Curl Apps Gallery」の開設で一気にコンシューマー向けにシフトした印象だ。

 「Curl Apps Gallery」の狙いはどこにあるのだろうか。「Curl Apps Gallery」に投稿されているアプリケーションをいくつか試してみたので、目に付いたものを紹介しよう。ちなみにアプリケーションのライセンスは、ほとんどがApache License V2.0となっていて、アプリケーション数は2008年9月10日現在で約90個だ。開設当初はカール側が用意したものが多いが、それだけに、このサイトを通じたCurlアプリケーションの開発促進にかける同社の意気込みがよく分かる。

curl01.jpg 「Curl Apps Gallery」に投稿されたアプリケーション一覧

Google Chromeと似ているCurl版Webブラウザ

 まず目に付いたのが、「Curlブラウザ」だ。画像を見てもらえば分かると思うが、サンプル版ということもあり、基本的にGoogle Chromeと似ている印象を受けるシンプルさだ。ウィンドウを左右に分割できるタブ機能を備えていて、タブは左右のウィンドウにボタン1つで行き来できる。Webブラウザ自体は半透明になっていて、どちらかというとデザインをカスタマイズできる機能が主要機能となっているようだ。

curl02.jpg CurlでできたサンプルWebブラウザ(左)とデザインをカスタマイズできる「STYLE DESIGNER」機能(右)。Webブラウザは左右のウィンドウに分割している

 サンプル版ということで、「お気に入り」機能などは動作がおかしい部分もあったが、HTMLのレンダリング自体は割と軽快で、FlashやJavaアプレット、さらにSilverlightも動作していた。Silverlightが普通に動作していたことから、Internet Explorerのコンポーネントを流用したアプリケーションなのかもしれない。

カスタマイズできるYouTubeのオンライン番組表

 続いて紹介するのは「YouTubeガイド 〜俺のTube〜」だ。YouTubeのサムネイル画像を、番組表のように自分好みにカスタマイズして表示するマッシュアップ・アプリケーションで、サムネイル画像にマウスオーバーすると、さらなるサムネイルがポップアップ表示される。サムネイル画像をクリックすると、小窓ウィンドウが立ち上がって動画の再生が始まる。こちらもなかなか軽快な動作でYouTube好きには便利なアプリケーションだろう。

curl03.jpg YouTubeガイド 〜俺のTube〜

Curlの特徴である3D機能を生かしたアプリも

 さらに、ルービックキューブを仮想的にシミュレートできる「ルービックキューブ」やDNAの螺旋(らせん)構造をドラッグ&ドロップで全方位的に見ることができる「分子構造」などCurlの特徴である3D機能を生かしたアプリケーションもいくつか見つけることができた。

curl04.jpg ルービックキューブ

 このほかにも、業務で使えるユーティリティ/Tipsから、ゲームなどのエンターテイメント系まで幅広いラインアップをそろえていて、カールの「Curl Apps Gallery」への意気込みがうかがえた。

curl05.jpg 分子構造

オープンソースや開発者との結び付きを強めた1年

 カールは一体どのような意図で今回の「Curl Apps Gallery」を発表したのだろうか。ここ1年のカールの動きを振り返ってみよう。

 まず、カールは2007年10月のオープンソース戦略の発表を皮切りに、開発者へのサービスを拡充し始めた。11月には、Ajax/JavaScriptとCurlのAPIを統合できるマッシュアップ機能や、Webブラウザで見られたようなスキンパッケージ機能などを実装したCurlのバージョン6.0やVisual Basicの画面やロジックをCurlに自動変換するツールを発表。12月にはCurl 6.0の日本語版RTE(実行環境)やIDE(統合開発環境)のダウンロード提供を始めた。

 2008年に入ってからは、3月にCurl 6.0用のオープンソースのWebサービス開発キット(WSDK)を提供開始した。4月にはEclipseファウンデーションへの参加とIDEの次期製品をEclipseベースで提供する戦略を発表し、8月にはEclipse対応のCurl開発用プラグインを正式発表するなどオープンソースへの結び付きも強めている(日本語版は「Curl Eclipseプラグイン」の名称で9月リリースを予定)。

 また2008年4月に、デスクトップRIA対応のCurl「Nitro」のベータ版をリリース。「Nitro」は次期バージョン7.0のコードネームと予想されるもので、既存のCurlの機能に加え、デスクトップRIAとして必要な機能である「デスクトップ向けコントロール」機能や、Adobe AIRやGearsでも採用しているSQLiteを使った「クライアントサイドDB」機能などを有している。7月には、オープンソースのCDK(Curl Data Kit)を一般公開し、CurlからSQLiteエンジンを利用したデータ抽出、書き込みが可能になった。CDKライブラリはCurlによるオフラインアプリの構築において重要な基盤になるという(「Nitro」の正式版は2008年の後半にリリースを予定)。

 さらに2008年4月には、Curlの技術者向け情報発信サイト「Curlデベロッパーセンター」をオープンし、ITエンジニア向けの技術支援の一環として情報提供に取り組んできた。今回新たに開設した投稿サイトにより、開発者がCurlの製品開発や運用の段階で必要となる技術情報を継続的に有効利用できるようにし、支援施策の充実と拡充を図るという。

コンシューマー向けにもシフトし始めたカールの狙いは?

 このような一連の動きを振り返ると、カールがいかにオープンソースや開発者を重視してきたかがよく分かる。

 ここ数年、サン・マイクロシステムズをはじめ、マイクロソフトやアドビ システムズもオープンソース・コミュニティへの結び付きを強めている。これらの企業が繰り広げるアプリケーション・プラットフォームのシェア争いにいかに食い込むかを考えると、オープンソースや開発者へのサポートは欠かせないのだろう。そう考えると、コンシューマーでも使えるアプリケーション投稿サイトというのは、開発者のアプリケーション開発意欲を促すのに当然の施策といえる。

 また、Curlアプリケーションはもともとデスクトップでも動作可能だが、オフラインやローカルDBへの対応はAdobe AIRやGearsを意識したものではないだろうか。今年後半リリース予定の「Nitro」のデスクトップ技術を駆使したアプリケーションが投稿サイトで見られるのもそう遠い日ではないであろう。デスクトップ対応に加え、今回試すことができたアプリケーションにも萌芽が見られたが、「Curl Apps Gallery」でCurlのキラーアプリケーションが登場すれば、Curlがプラットフォームのシェア争いで存在感を増す可能性もあるだろう。

(@IT 平田修)

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