ユーザーの懸念に回答

ストリートビューはオプト・アウトがベスト、グーグル

2008/09/29

 8月5日に米国に続いて日本向けでもスタートしたグーグルのストリートビュー(参考記事)が、ネット上で波紋を広げている。公道からのみ撮影したため法的に問題はない、とするグーグルに対して、私道から撮影されたと見られる写真が見つかったり、ネット上での写真公開を望まないユーザーの姿や家屋が映っていることについて違和感を覚えるユーザーがいるなど否定的な意見がある。ストリートビューは新たな利便性を提供する一方で、これまでにないプライバシー上の懸念を引き起こしているのも事実だ。

 グーグルは9月29日に都内の本社で開いた定例会見で、こうした懸念に対する同社の考え方と取り組みを説明。事実上の釈明会見を開いた。

google01.jpg 米グーグル 法務担当のジェネラル カウンシル、ケント・ウォーカー(Kent Walker)氏

 米グーグルで法務担当のジェネラル カウンシル、ケント・ウォーカー氏はストリートビューに限らず、YouTube、Gmail、グーグルマップなど同社のサービスがこれまでユーザーに新たな利便性を提供してきたことを改めて指摘。特にグーグルマップとストリートビューについては、「まったく新しい情報整理の仕方が出てきている」(ウォーカー氏)とした。例えば、友人の住所をうろ覚えのときに建物を見て直接確認できたり、不動産業者が物件の場所を顧客に見せたり、あるいは道路舗装の工事担当者が、あらかじめ仕事の見積もりを行うなど企業活動でも活用が始まっているという。

 その一方で米国では訴訟を起こされてもいる。私道に立ち入り私有の建物の写真を掲載したことで所有者が同社を提訴。現在も係争中だ。この件についてウォーカー氏は「すぐに掲載を取り下げたが、すでにネット上で売りに出していた建物だ。彼らは損害賠償請求をしているが、どんなダメージがあったのかは分からない」と説明している。

 ストリートビューでは、サービスの対象となる領域の写真をすべて掲載し、ユーザーから連絡があった場合にだけ取り下げ要求に応じる“オプト・アウト方式”を採用している。サービス開始間もない日本のサービスの問い合わせ件数は非公開だが、米国での掲載取り下げ要求はサービス開始後数カ月で数百件程度という。

 公道以外の場所に立ち入った撮影をしているのではないかとの批判については、こう話す。「ドライバーはグーグルのトレーニングを受けていて、公道以外は撮影しないことになっている。ただ、標識と地図を使い適切な判断を心がけてはいるが、標識は必ずしも分かりやすいものばかりではなく、ここから先が私道、ここまでが公道というのが分からない場合がある。ミスがあった件については対応している。グーグルとしてお願いしたいのは、私道の情報をオンラインで入力していただきたいということだ」(ウォーカー氏)

 既存サービスに類似するものがない新しいサービスには、訴訟やユーザーの反感を買うなどのリスクは存在するものだという。例としてウォーカー氏はYouTubeを挙げる。「YouTubeは既存の法規制にフィットしない面もあり、買収にはリスクもあった」。しかし、YouTubeというサービスは、ほとんどのユーザーにメリットがあり、役立っていることが理解されているために存続できている。

 法的解釈についても、新技術を使ったサービスの勃興期には混乱がつきものだという。ウォーカー氏が挙げるのは、約100年前の民間旅客機ビジネスの立ち上がり時期の例だ。住居の上を飛ぶことが“不法侵入”に当たるかという法的解釈の議論があったという。しかし「航空機が飛ぶルート上のすべての住人から許可を取るのは現実的ではない」(ウォーカー氏)、同様の理由で、ストリートビューについても「オプト・アウト方式がベストではないか。われわれは現実的で効率的な方法を模索している」(同氏)と話す。「ネットサービスのいいところは、やりながら調整できるということ。例えば、アメリカに続いて日本にストリートビューサービスを持ってきたときに、顔にぼかしを入れた。それを今度はアメリカ側のサービスにも適用した」(ウォーカー氏)といい、今後もできるところから改善していきたという。

(@IT 西村賢)

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