勝者はいないのか

グーグルとマイクロソフト―クラウドの将来をめぐる戦い

2008/10/16

 向こう2年間のクラウド・コンピューティングインフラの拡大をめぐり、世界最大かつ最強のIT企業2社――グーグルとマイクロソフト――が、この種のコンピューティングのルック&フィールにおいて大きく異なるモデルを開発するために資金とリソースを投入している。

 グーグルとマイクロソフトが検索と広告以外の分野で衝突しようとしているのは驚くに当たらないが、フロリダ州オーランドで開催された「Gartner Symposium/ITxpo」カンファレンスでは、クラウドおよび各種のアプローチに対する両社の姿勢が話題になった。

 基本的に、クラウド・コンピューティングは、顧客のアプリケーションをサードパーティのベンダにサポートしてもらうことを可能にする。これらのアプリケーションは、インターネットを通じてユーザーに提供される。アマゾン、グーグル、マイクロソフトなどの企業では、それぞれの社内のアプリケーション専用のクラウド・コンピューティングインフラを開発することもできる。

 クラウドはまだ定義にあいまいな部分が残っている分野だが、グーグルやマイクロソフトが開発しているような技術は、企業やコンシューマがそれぞれのニーズに応じてクラウドを利用する方法を変える可能性がある。クラウドの将来をめぐるグーグルとマイクロソフトの衝突の背景には、両社が開発したビジネスモデルの違いがある。マイクロソフトは主として企業分野で事業を展開し、OSやOfficeスイートなどの製品で現在の評価を築いたのに対し、グーグルはコンシューマ分野にフォーカスし、広告収入によって検索技術の改良を進めてきた。

 ガートナーのフェロー、デビッド・スミス氏によると、マイクロソフトは社内クラウドと社外クラウドの両方の分野で有力な企業になることを目指しているという。社内クラウドは、企業が自社のアプリケーションとコンピューティングリソースをサポートするために構築するもので、社外クラウドは、 AT&Tなどのサードパーティのサービスプロバイダーが開発するものだ。

 「マイクロソフトの場合、両方のモデルを活用する一種のハイブリッド方式で社内クラウドと社外クラウドをサポートするのが目標だ」とスミス氏は話す。

 「つい最近まで、マイクロソフトのソフトウェア、特に企業向けソフトウェアのほとんどすべてが、クライアントベースかオンプレミス(社内保有)型ソフトウェアだった。しかし彼らは、その多くをクラウド製品に徐々に移行させている」(同氏)

 スミス氏によると、こういった戦略転換の証拠となるのが、マイクロソフトが市場に投入した(あるいは投入予定の)数々の新製品だという。例えば、Microsoft Dynamics CRM OnlineやLive Mesh、そして「Oslo」や「Titan」などのプラットフォームである。

 グーグルの場合はマイクロソフトと正反対だ。検索分野の巨人グーグルのアプリケーション製品は、ユーザー企業の外部のサーバに置かれている。その一方で、Webブラウザ内で開発・配備されるアプリケーションがますます増えており、これはグーグルが今年、「Chrome」ブラウザを発表した動機の1つであったと推察される。

 「Chromeを発表したのは、クラウド分野での開発を促進すること、JavaScriptの動作を高速化すること、オフラインのサポートを改善するためだ。そのほかに理解しにくい理由もいくつかあるが、彼らは広告をコントロールする必要があるのだ」とスミス氏は指摘する。

 ガートナーのフェローであるトム・オースティン氏によると、グーグルではクラウド用に独自のプラットフォームを開発しているという。その1つが、グーグルのWebサーバ上でアプリケーションの開発とホスティングを可能にする「Google App Engine」である。またグーグルは、特にクラウド内でこれらのアプリケーションの企業に対する魅力を高める技術の開発でIBMの協力を求めている。

 ガートナーによると、クラウドに向かって前進するグーグルとマイクロソフトをけん引しているのは5つの技術だという。SaaS(サービスとしてのソフトウェア)、オープンソース、Web 2.0、コンシューマ化、そしてコンピューティングサービスを提供する新たな手法とされる「グローバルクラス」である。

 一部の業界観測筋にとっては不満が残りそうだが、ガートナーによると、マイクロソフトとグーグルの戦いには明確な勝者がないかもしれない。グーグルとマイクロソフトはそれぞれの強みを生かして、この新分野を両社の間で分割支配するかもしれないという。その一方で、クラウドの開拓に向けて第3の企業がカギを握る可能性もある。スミス氏とオースティン氏はカンファレンスで、「今後の展開を判断するうえで、ヤフーが依然として大きな要因として残っている」と指摘した。スミス氏は、マイクロソフトがヤフーを買収する可能性もまだあると考えている。

 ITマネージャへのアドバイスとして、スミス氏とオースティン氏は、Webベースのアプリケーションがまだ開発中のいまの段階で、これらのアプリケーションの評価とテストを開始すべきだと述べた。

原文へのリンク

(eWEEK Scott Ferguson)

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