ユーザーは仮想化を入れたいんじゃない、安く運用したいだけだ〜オラクルオラクル、無料の仮想化ソフトウェア最新版リリース

» 2008年10月28日 00時00分 公開
[大津心,@IT]

 日本オラクルは10月28日、高可用性機能「High Availability」とリソース管理機能「Resource Management」を強化したサーバ仮想化ソフトウェアの最新版「Oracle VM 2.1.2」を11月1日からサポート開始すると発表した。すでに同社Webサイトで公開されており、ダウンロードして無料で利用できる。

ユーザーからの要望が多かった高可用性機能やリソース管理機能を強化

 Oracle VMは、オープンソースのXenハイパーバイザーをベースに作成したハードウェア上で直接稼働するハイパーバイザー型の仮想化製品。今回発表した最新版の2.1.2では、「High Availability」「Resource Management」「Rapid Deployment」「Grid Computing」の4つの機能を強化したという。

林氏写真 日本オラクル システム事業統括本部 Linux&Vitualizationビジネス推進部 部長 林徹氏

 High Availability(HA)では、ユーザーから要望が多かった高可用性の機能を追加。障害時の仮想マシンの自動再起動機能や、サーバ停止時にほかの物理サーバへ移動するライブマイグレーション機能を搭載した。この点について、日本オラクル システム事業統括本部 Linux&Vitualizationビジネス推進部 部長 林徹氏は、「このHAはユーザーからかなり要望が強かった機能だ。『これで本番環境でも利用できるようなった』という声も聞いている。ライブマイグレーションでは、物理サーバのメモリ上に展開しているデータを丸ごとネットワーク上で移動するので、セキュリティを気にするユーザーがいる。そこで暗号化する機能も備えてある」と説明した。

 Resource Managementでは、仮想マシンごとにI/Oの帯域を設定管理できるようにしたほか、仮想ネットワークインターフェイスごとにトラフィック帯域を設定できるようになった。ストレージI/Oに関しても優先順位付けが可能だ。また、優先度が低いアプリケーションがクリティカルなアプリケーションを阻害しないような設定もできる。林氏によると「これらのリソース管理は、管理ソフトから簡単に操作できる。例えば、仮想サーバごとに物理サーバのCPUを1〜32ソケットまで指定したり、割り当てメモリ容量を指定することも可能だ。ただし、障害時には切り離しも可能であるため、『物理サーバに対して仮想サーバを作る』という古い概念はなくなった」と説明した。

 Rapid Deploymentの強化では、仮想環境へ簡単に移行するためのテンプレート「Oracle VM Templates」を提供する。「Oracle VM Templates」は、Oracle Database 11gやOracle Siebel CRM 8、Oracle Enterprise Linuxなど向けに仮想化環境向けのテンプレートを用意することで、容易に仮想化できるようにする。

 また、Windows対応も強化。米マイクロソフトの「Server Virtualization Validation Program」へ参加し、年内中にOracle VMが正式に認められる方向であるほか、Oracle VM上でWindowsを高速に動作させる「PV(Para Virtualized)ドライバー」も年内の完成に向けて開発中だとした。そのほか、Grid Computingでは、「Oracle Real Application Clusters on Oracle VM」に正式に対応した。

オラクル本社での事例ではCPU使用率が9%から55%に上昇し、電源使用量は40%削減

 導入事例では、米オラクル本社など3社の事例を紹介した。オラクル本社では、SaaS形式でCRMなどを提供している「Oracle On Demand」や「Oracle University」「Oracle Development」でOracle VMを採用。Oracle On Demandでは、ハードウェアが3分の1に、CPU使用率が9%から55%に上昇したほか、Oracle Universityでは設置スペースが50%削減できたほか、データセンターの電源使用量を40%削減したとした。

 また、エンプレックスの場合、従来は開発や顧客ごとにサーバを設置し、OSやデータベースなどをインストールしていた。それを各環境をテンプレート化することでOracle VM上で統一。1台の物理サーバにOSとDB環境を複数搭載可能となり、物理サーバを削減できたという。

 システムテクノロジーアイの場合は、研修用にサーバ仮想化を導入。4台のIAサーバ上に最大60台の仮想マシンを起動することで、システムの構築時間を大幅に短縮できたとした。林氏は「1台に15の仮想マシンを動かしているのに、20分でOracle 11gのインストールが終わったという。このことからも、Oracle VMのコストパフォーマンスの高さが分かるだろう」とコメントした。

 林氏は、「IBMやアシストなどが行った検証実験では、IBMの3〜4年前のマシンをいまのマシンに集約しようとすると、4台を1台のマシンに集約できるという結果が出ている。Oracle VMは『安い、速い、ワンストップ』を特徴にしており、このようなサーバ集約化にかなり役立つはずだ。ユーザーは仮想化ソリューションを導入したいのではなく、サーバ集約や運用コスト削減の道具として仮想化を用いたいだけだ。従って、そのソリューション自体は安い方がよりよいだろう」とコメントし、無償で提供しているOracle VMの競争力の高さをアピールした。

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