クラウドで攻め通すグーグルの企業向け新戦略「Google Enterprise Day 2008 Tokyo」開催

» 2008年11月12日 00時00分 公開
[垣内郁栄,@IT]

 グーグルは11月12日、同社の企業向け戦略を説明するイベント「Google Enterprise Day 2008 Tokyo」を都内開催した。米グーグルのエンタープライズ部門担当社長 デイブ・ジロード(Dave Girouard)氏は企業向けサービスの「Google Apps」を中心に説明し、「次の10年はクラウド・コンピューティングが革新の場になる」と強調した。

 Google AppsはGmailやGoogleドキュメント、カレンダーなどを統合した企業向けのサービス。SaaS型で提供される。グーグルは今回、SaaSというキーワードは出さずに、Google Apps=クラウドで押し通した。ジロード氏によるとGoogle Appsは世界で100万社の利用があるという。当初は中小企業の利用が多かったが、最近は大企業にも広がってきたとアピールした。

米グーグルのエンタープライズ部門担当社長 デイブ・ジロード氏

 Google Appsをクラウドで提供するメリットはいくつかある。1つはコストの優位性だ。グーグルは検索サービスの開始時は主にデータセンターを借りてシステムを運用していたが、サービス拡大に追いつくことができず、2006年に米国オレゴンに自社のデータセンターを建設した。検索サービスだけでなく、Gmailや画像、動画を扱うサービスが増えて必要なストレージ容量が急増したからだ。ジロード氏によると、「Picasa Web Album」には世界で7億枚の画像がアップされていて、YouTubeは1分ごとに13時間分の動画がアップロードされるという。

グーグルのストレージ容量の伸びとデータセンター

 グーグルはオレゴンのデータセンターをはじめ、世界中にあるというデータセンターに自社で組み立てたサーバを大量に格納している。数十万のサーバを運用していると言われ、グーグルは実は世界で4番目に大きいサーバのベンダでもある。この大量のサーバをGFSをはじめとする分散ファイルシステムで効率的に運用することで、固定費の低減とスケールメリットの向上を図っている。

 ジロード氏によると、Gmailの運用ではユーザー1人当たりにかかるコストは年々下がっていて、代わりにユーザー1人当たりの収益は年々向上しているという。Gmailの運用でかかるコストはその多くがストレージ容量だろう。また収益はGmailのメッセージに表示される広告から上がっている。同氏が示したグラフによるとコストと収益のラインは2008年中に交差した。同氏は電子メールを社内で運用することと比べた、Gmailの効率の良さを強調し、「クラウドがこれを可能にしている」と話した。

Gmailにかかるコストと収益の推移

 Google Appsを提案した際に最も多く聞かれるのは信頼性とセキュリティに関する質問だという。信頼性についてはGmailがダウンすること(参考記事:Google AppsとGmail、一部ユーザーで15時間にわたる障害)があるなど、「確かに完璧ではない」としながらも、Gmailのダウンタイムが「Microsoft Exchange」や社内設置型の電子メールサーバの平均値と比べて短いこと(参考記事:GmailはExchangeサーバの10倍の信頼性、グーグル)を示し、「統計的に見るとGmailの方が常にオンだ」と話した。

 セキュリティについても「顧客のデータセンターにデータを置くよりも、グーグルのデータセンターに置く方がおそらく安全だ」と自信を見せた。1年のうちにノートPCの10台に1台は盗まれていることや、USBメモリを使っている人の66%が紛失を経験していることなどを挙げて、データをインターネット側に保存するクラウドの安全性を強調した。

 ジロード氏は「社内設置型の既存のソフトウェアは、なくならない」としながらも「これからはクラウドが中心となる時代に突入する」と訴えた。

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